黒豹拾いました

おーか

文字の大きさ
上 下
9 / 130

9

しおりを挟む






コクヨウと墓に水だけでも供えて手を合わせる。そして冒険者としては大切な剣の手入れを行って、飯も風呂も終えてコクヨウと眠りにつく。

翌朝すっきり起きて、コクヨウも起こす。寝起きは良い方なようで、声を掛ければすぐに起きてくれた。

「コクヨウ、今日から昼間は留守番しててくれるか?」

「…みー?」

「そんな嫌そうにするなよ…仕事なんだ。仕方ないだろ?俺は冒険者だし、お前のこと連れて行くわけには行かねぇ。危ないからな。」

「みゃう!」

「駄目だっての。こればっかりはお前がなんと言おうが駄目だぜ。俺はコクヨウを大事に育てるって決めてんだからな。」

「……」

「わかったな?飯とかはちゃんと準備してくからよ」

「………」

凄く不満そうだ。飯もそこそこにふて寝を始めてしまった。また長時間一人にするのは胸が痛いが、それでもここは心を鬼にしてでも置いていかないとな。

「コクヨウ、行ってくるな?」

「…きゅぅ…」

涙目で弱々しい返事だ。物凄く寂しそうにしている…扉を閉めたのだが、何故ここに居る?コクヨウ。俺が扉を閉めるのを少し躊躇った隙に出てきてしまったらしい。

家の中に戻そうとしても走って逃げる。純粋な速さだけなら、俺のほうが上だが、近付いて屈んで抱き上げるとなれば難しい。器用に俺の手をすり抜けるのだ。10分以上追いかけっ子しているが全く捕まえられない。

「はぁ…はぁ…分かった…コクヨウ、一緒に連れて行くからおいで」

「みー?」

「本当だ。嘘なんか付かねぇよ。けどな、森は危ねぇんだ。ちゃんと俺の言う事を聞けよ。そうじゃなきゃ連れてけねぇぞ」

「みー!」

これだけ逃げ回れるなら、多少の危険は避けられるだろう。コクヨウに簡単なルールを教える。魔物なんかが突然出てくる可能性もあるから俺から離れない事、また戦っているときは周囲に警戒しつつ、後ろに下がっている事等を伝えた。

好奇心を抑えられず、周りをきょろきょろしているがそれでもきちんと俺の隣を歩いている。家に帰ったら褒めてやろう。確かに森はいつも通りだな。薬草を採取したり、しながら散策していく。

今日の飯として、兎を仕留めたり、魔物のゴブリンなんかを狩って家に帰る。復帰初日だし、コクヨウを連れているからな。森の奥までは入らなかった。

ちなみにゴブリンを狩ったときは、悪臭が凄いのでコクヨウは器用に鼻を抑え涙目になっていた。魔物の死体は魔石を取り出してまとめて燃やしておく。回収した魔石は10程だ。

「ただいま。コクヨウ、おかえり」

「みー!」

「コクヨウ、森ではちゃんと言う事聞けて偉かったな!」

わしわしと撫でてやると、気持ちいいようで腹を見せる。そのまま暫く撫で続けた。帰ってから空いた時間にはコクヨウに森の植物なんかを教えてやった。また文字指差しながら読み上げてみた。動物にこんな事を教えている俺はおかしいのかもしれない…。が、コクヨウはやけに頭がいいからな。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】白い塔の、小さな世界。〜監禁から自由になったら、溺愛されるなんて聞いてません〜

N2O
BL
溺愛が止まらない騎士団長(虎獣人)×浄化ができる黒髪少年(人間) ハーレム要素あります。 苦手な方はご注意ください。 ※タイトルの ◎ は視点が変わります ※ヒト→獣人、人→人間、で表記してます ※ご都合主義です、あしからず

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

無能の騎士~退職させられたいので典型的な無能で最低最悪な騎士を演じます~

紫鶴
BL
早く退職させられたい!! 俺は労働が嫌いだ。玉の輿で稼ぎの良い婚約者をゲットできたのに、家族に俺には勿体なさ過ぎる!というので騎士団に入団させられて働いている。くそう、ヴィがいるから楽できると思ったのになんでだよ!!でも家族の圧力が怖いから自主退職できない! はっ!そうだ!退職させた方が良いと思わせればいいんだ!! なので俺は無能で最悪最低な悪徳貴族(騎士)を演じることにした。 「ベルちゃん、大好き」 「まっ!準備してないから!!ちょっとヴィ!服脱がせないでよ!!」 でろでろに主人公を溺愛している婚約者と早く退職させられたい主人公のらぶあまな話。 ーーー ムーンライトノベルズでも連載中。

俺の伴侶はどこにいる〜ゼロから始める領地改革 家臣なしとか意味分からん〜

琴音
BL
俺はなんでも適当にこなせる器用貧乏なために、逆に何にも打ち込めず二十歳になった。成人後五年、その間に番も見つけられずとうとう父上静かにぶちギレ。ならばと城にいても楽しくないし?番はほっとくと適当にの未来しかない。そんな時に勝手に見合いをぶち込まれ、逃げた。が、間抜けな俺は騎獣から落ちたようで自分から城に帰還状態。 ならば兄弟は優秀、俺次男!未開の地と化した領地を復活させてみようじゃないか!やる気になったはいいが……… ゆるゆる〜の未来の大陸南の猫族の小国のお話です。全く別の話でエリオスが領地開発に奮闘します。世界も先に進み状況の変化も。番も探しつつ…… 世界はドナシアン王国建国より百年以上過ぎ、大陸はイアサント王国がまったりと支配する世界になっている。どの国もこの大陸の気質に合った獣人らしい生き方が出来る優しい世界で北から南の行き来も楽に出来る。農民すら才覚さえあれば商人にもなれるのだ。 気候は温暖で最南以外は砂漠もなく、過ごしやすく農家には適している。そして、この百年で獣人でも魅力を持つようになる。エリオス世代は魔力があるのが当たり前に過ごしている。 そんな世界に住むエリオスはどうやって領地を自分好みに開拓出来るのか。 ※この物語だけで楽しめるようになっています。よろしくお願いします。

光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。

みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。 生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。 何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。

【完結】守護霊さん、それは余計なお世話です。

N2O
BL
番のことが好きすぎる第二王子(熊の獣人/実は割と可愛い) × 期間限定で心の声が聞こえるようになった黒髪青年(人間/番/実は割と逞しい) Special thanks illustration by 白鯨堂こち ※ご都合主義です。 ※素人作品です。温かな目で見ていただけると助かります。

そばかす糸目はのんびりしたい

楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。 母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。 ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。 ユージンは、のんびりするのが好きだった。 いつでも、のんびりしたいと思っている。 でも何故か忙しい。 ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。 いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。 果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。 懐かれ体質が好きな方向けです。今のところ主人公は、のんびり重視の恋愛未満です。 全17話、約6万文字。

【完結】お嬢様の身代わりで冷酷公爵閣下とのお見合いに参加した僕だけど、公爵閣下は僕を離しません

八神紫音
BL
 やりたい放題のわがままお嬢様。そんなお嬢様の付き人……いや、下僕をしている僕は、毎日お嬢様に虐げられる日々。  そんなお嬢様のために、旦那様は王族である公爵閣下との縁談を持ってくるが、それは初めから叶わない縁談。それに気付いたプライドの高いお嬢様は、振られるくらいなら、と僕に女装をしてお嬢様の代わりを果たすよう命令を下す。

処理中です...