黒豹拾いました

おーか

文字の大きさ
上 下
7 / 130

7

しおりを挟む
残酷な表現あり。苦手な方は注意して下さい。ページ下部です。一応分かるようにスペース開けておきます。読まなくても問題は無いかなと思います。




朝ご飯を終えて、ギルドに向かうことにした。今まではコクヨウを抱っこしていたが、今日は俺の肩に器用にバランスを取って乗っている。尻尾を絡めているので落ちる心配はないだろう。

ギルドに入ると顔見知りの冒険者達と軽く挨拶をして、器用に俺の肩に乗っているコクヨウを紹介しておいた。迷子にならせるつもりはないが、危険は多いからな。冒険者に覚えられているというのは安全上重要だからな。

冒険者に撫でられかけて、またコクヨウは嫌がっていた。まあ確かにな、冒険者達の撫で方乱雑そうだもんなぁ。コクヨウに嫌なことをさせるつもりもないし、撫でようとする冒険者達を躱して、受付へ向かう。

「タカミ様、お待ちしておりました。こちらへ」

「ああ」

直ぐに対応してくれて、前に通されたのと同じ部屋に入る。座る時に重心が移動するので、コクヨウがバランスを崩しかけたのを支えてやる。

「コクヨウ大丈夫か?」

「み!」

「そうか、落ちないようにな。」

「みー」

「少しお待ちください。直ぐに対応する者が来ますので」

「ああ」

「みー」

受付の人が出ていった。その後、直ぐにお茶を持ってきてくれた。うん、美味い。コクヨウにも冷たい水が飲みやすい平皿で提供された。

コンコン

「どうぞ」

「お待たせいたしましたタカミ様。今回は足を運んで頂きありがとうございます。」

「はい、それで森の調査が終わったんですか?」

「ええ、終了致しております。確かにタカミ様の報告後直ぐに森に入った冒険者は森の異変を感じたようです。報告通り血痕も発見致しました。しかし…3日目には森の様子は普段通りになった事が確認されました。様子見を長めに取ったのですが…やはり今の所問題は確認されません。これ以上森の立ち入りを制限するのは冒険者の収入や仕事減少にもなり、難しいため森に立ち入る冒険者には注意勧告をした上で、立ち入りを許可することになりました。」

「なるほど…何も見つからなかったか…コクヨウ、お前の側にいた獣の亡骸を一時的に提供してもいいか?傷口などが参考になるかもしれない。」

「あの血痕の、ですか?」

「ああ、コクヨウ嫌か?」

「…み!」

少し悩んだ末に決断してくれた。ギルド職員にもあくまでも見るだけで、手を加えないように頼んだ。きちんと弔ってやりたいからな。出来ればコクヨウが行きやすい場所に墓を建てようと思っている。俺と森の家に住むのならその近くに、と考えている。

流石にコクヨウに亡骸を見せるのは酷だろうと、部屋に居てもらうことにした。

「コクヨウ、少しだけここで待っててくれ。すぐ戻る。」

「………」

「本当にすぐ戻る。大丈夫だから、な?」

「…み…」

「ん、ありがとな。」



















部屋を出て、普段は魔物の解体なんかに使われる場所に向かう。解体屋は魔物つける傷にも詳しいから、亡骸についた傷からどんな相手だったのか推察が立てられるだろう。俺はそういった事には詳しくないから分からなかったが…。

そして浮かび上がった現実は…思っていたのとは違うものだった。亡骸に付けられた傷…それは刀傷なのだそうだ。つまり刃物などの道具を扱える存在…例えば…そう、人間だ。

一番大きな傷、それが人間によってつけられ、そしてその後森に入って血の匂いに寄ってきた獣たちにさらに傷付けられた。そうしてゆっくりと衰弱していったというのが得られた見解だった。

正直驚いた…まさか人間が関わっているとは思ってもみなかったからな。そしてそれ以上に衝撃的だったのは、獣の姿をしているが…この亡骸の正体は獣人だということだった。

獣人は人の姿よりも、獣型の姿の方が筋力、俊敏性なんかもあるからな…襲われたときに対応するためにこの姿になったのだろう。そして必死にコクヨウを守った。

「…コクヨウは俺が大切に育てる。きっと…きっと幸せにする。だから安らかに…」

そう願うことしか出来なかった。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】別れ……ますよね?

325号室の住人
BL
☆全3話、完結済 僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。 ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。

すべてを奪われた英雄は、

さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。 隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。 それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。 すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。

【完結】「奥さまは旦那さまに恋をしました」〜紫瞠柳(♂)。学生と奥さまやってます

天白
BL
誰もが想像できるような典型的な日本庭園。 広大なそれを見渡せるどこか古めかしいお座敷内で、僕は誰もが想像できないような命令を、ある日突然下された。 「は?」 「嫁に行って来い」 そうして嫁いだ先は高級マンションの最上階だった。 現役高校生の僕と旦那さまとの、ちょっぴり不思議で、ちょっぴり甘く、時々はちゃめちゃな新婚生活が今始まる! ……って、言ったら大袈裟かな? ※他サイト(フジョッシーさん、ムーンライトノベルズさん他)にて公開中。

小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~

朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」 普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。 史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。 その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。 外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。 いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。 領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。 彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。 やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。 無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。 (この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)

秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~

めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆ ―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。― モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。 だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。 そう、あの「秘密」が表に出るまでは。

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

侯爵様の愛人ですが、その息子にも愛されてます

muku
BL
魔術師フィアリスは、地底の迷宮から湧き続ける魔物を倒す使命を担っているリトスロード侯爵家に雇われている。 仕事は魔物の駆除と、侯爵家三男エヴァンの家庭教師。 成人したエヴァンから突然恋心を告げられたフィアリスは、大いに戸惑うことになる。 何故ならフィアリスは、エヴァンの父とただならぬ関係にあったのだった。 汚れた自分には愛される価値がないと思いこむ美しい魔術師の青年と、そんな師を一心に愛し続ける弟子の物語。

繋がれた絆はどこまでも

mahiro
BL
生存率の低いベイリー家。 そんな家に生まれたライトは、次期当主はお前であるのだと父親である国王は言った。 ただし、それは公表せず表では双子の弟であるメイソンが次期当主であるのだと公表するのだという。 当主交代となるそのとき、正式にライトが当主であるのだと公表するのだとか。 それまでは国を離れ、当主となるべく教育を受けてくるようにと指示をされ、国を出ることになったライト。 次期当主が発表される数週間前、ライトはお忍びで国を訪れ、屋敷を訪れた。 そこは昔と大きく異なり、明るく温かな空気が流れていた。 その事に疑問を抱きつつも中へ中へと突き進めば、メイソンと従者であるイザヤが突然抱き合ったのだ。 それを見たライトは、ある決意をし……?

処理中です...