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パーティーの翌朝
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結局、パーティー後アレックスに会うことは出来なかった。
みんなとパーティーの後片付けした後、簡単に「お疲れ会」をやった。とはいえ、パーティーの残り物の葡萄酒やおつまみをいただいたのだけれど。それですっかり遅くなってしまった。というわけで、アレックスとすれ違いまくった。とはいえ、アレックスはアレックスで忙しくしていたに違いない。というより、彼の方がわたしよりよほどバタバタしていたことはいうまでもない。
みんなと別れた後、この夜はたまたまご近所に住む伯爵が馬車に乗せてくれ、屋敷まで送ってくれた。正直、めちゃくちゃうれしかった。心身ともに疲れきっていたのでどれだけ助かったことか。あのまま王宮から屋敷へ徒歩で帰っていたら、体の疲れはもちろんのこと、精神の半端ない「燃え尽き」によって途中で倒れていたかもしれない。
とにかく、なんとか屋敷に帰り着くことが出来たのはよかった。
二階にある自分の部屋に直行し、かたくてボロボロの寝台に倒れこんでしまった。ボロボロでみすぼらしい私服はそのままで、脱ぎ散らかす気力さえなかった。当然のことながら、顔や体の汚れを落とすことなど出来るわけはない。汗や汚れにまみれたままだった。
とにかく、意識を失うレベルで疲れきっていた。それから、張り詰めていた精神は緩みまくっていた。
パーティーと食事会が終ったことで、心身のなにもかもがプツリと途絶えてしまった。途切れてしまったのだ。
寝台に倒れこんでそのまま落ちた。というか、完璧なまでに意識を失った。
早朝、いつもの時間に目を覚ましたのは自分でも驚きだった。
それどころか、神の奇蹟だった。
いつもの時間に目を覚ますことが出来たのである。
もっとも、ただたんに空腹のあまり目が覚めたのだけれど。
目を覚ました途端、激しい空腹に襲われてしまった。
身づくろいをすませ、度が合っていない上にまったく似合っていないメガネのレンズに息を吹きかけ丁寧に拭き、王宮へ出勤する準備を整えた。
一階に降り、耳をすませて居間の様子をうかがうも、お父様の気配はない。
実際に居間の中をそっと覗き込んでみたけれど、荒れ果てた居間は無人だった。
(きっと街の酒場で寝込んでいるのか、路上で倒れているのか……)
いずれにせよ飲んだくれてどこかで夜を明かしたか、博打場で拘束されているか、とにかく落ちぶれまくって他人に恥ずかしくて言えない理由で屋敷に帰ってきていない。
いずれにせよ、どうでもいいことだけれど。
というわけで、さっさと屋敷を出た。
「お腹が空いた」と自己主張しまくっているお腹の虫をなだめすかし、足早に王宮へと向かった。
(王宮の厨房でなにか恵んでくれますように)
そう願わずにはいられない。
ほんとうは、ダメなことである。それでも、淡い期待を抱いてしまう。
(昨夜がんばったから、このくらい望んでもいいわよね?)
自分でもど厚かましいと思う。
いつものように王宮の門番たちに挨拶をし、いつものコースをたどる。
当然、近道であるバラ園へと向かった。
飛んだり跳ねたりしつつ、立ち入り禁止のバラ園へと入った。
そうすると、朝もやの中いつものベンチにだれかが座っているのがうかがえた。
(アレックス、もう来ているのね)
笑ってしまった。
彼もまた昨夜のことで疲れきっているはずなのに、生真面目だからきちんと習慣を守っている。
ほんとうにアレックスらしい、と心から思った。
同時に、彼が国王に即位したことを思い出した。
習慣のことより、そのことの方がよほど重要である。
頭の中で祝辞を考えてみた。が、心は複雑である。
中途半端な気持ちのまま、ベンチへ近づいた。
「殿下」
元気よく声をかけた。
アレックスは、いまはまだ王子。
当然のことだけれど、彼が国王に即位するのはいますぐというわけではない。
みんなとパーティーの後片付けした後、簡単に「お疲れ会」をやった。とはいえ、パーティーの残り物の葡萄酒やおつまみをいただいたのだけれど。それですっかり遅くなってしまった。というわけで、アレックスとすれ違いまくった。とはいえ、アレックスはアレックスで忙しくしていたに違いない。というより、彼の方がわたしよりよほどバタバタしていたことはいうまでもない。
みんなと別れた後、この夜はたまたまご近所に住む伯爵が馬車に乗せてくれ、屋敷まで送ってくれた。正直、めちゃくちゃうれしかった。心身ともに疲れきっていたのでどれだけ助かったことか。あのまま王宮から屋敷へ徒歩で帰っていたら、体の疲れはもちろんのこと、精神の半端ない「燃え尽き」によって途中で倒れていたかもしれない。
とにかく、なんとか屋敷に帰り着くことが出来たのはよかった。
二階にある自分の部屋に直行し、かたくてボロボロの寝台に倒れこんでしまった。ボロボロでみすぼらしい私服はそのままで、脱ぎ散らかす気力さえなかった。当然のことながら、顔や体の汚れを落とすことなど出来るわけはない。汗や汚れにまみれたままだった。
とにかく、意識を失うレベルで疲れきっていた。それから、張り詰めていた精神は緩みまくっていた。
パーティーと食事会が終ったことで、心身のなにもかもがプツリと途絶えてしまった。途切れてしまったのだ。
寝台に倒れこんでそのまま落ちた。というか、完璧なまでに意識を失った。
早朝、いつもの時間に目を覚ましたのは自分でも驚きだった。
それどころか、神の奇蹟だった。
いつもの時間に目を覚ますことが出来たのである。
もっとも、ただたんに空腹のあまり目が覚めたのだけれど。
目を覚ました途端、激しい空腹に襲われてしまった。
身づくろいをすませ、度が合っていない上にまったく似合っていないメガネのレンズに息を吹きかけ丁寧に拭き、王宮へ出勤する準備を整えた。
一階に降り、耳をすませて居間の様子をうかがうも、お父様の気配はない。
実際に居間の中をそっと覗き込んでみたけれど、荒れ果てた居間は無人だった。
(きっと街の酒場で寝込んでいるのか、路上で倒れているのか……)
いずれにせよ飲んだくれてどこかで夜を明かしたか、博打場で拘束されているか、とにかく落ちぶれまくって他人に恥ずかしくて言えない理由で屋敷に帰ってきていない。
いずれにせよ、どうでもいいことだけれど。
というわけで、さっさと屋敷を出た。
「お腹が空いた」と自己主張しまくっているお腹の虫をなだめすかし、足早に王宮へと向かった。
(王宮の厨房でなにか恵んでくれますように)
そう願わずにはいられない。
ほんとうは、ダメなことである。それでも、淡い期待を抱いてしまう。
(昨夜がんばったから、このくらい望んでもいいわよね?)
自分でもど厚かましいと思う。
いつものように王宮の門番たちに挨拶をし、いつものコースをたどる。
当然、近道であるバラ園へと向かった。
飛んだり跳ねたりしつつ、立ち入り禁止のバラ園へと入った。
そうすると、朝もやの中いつものベンチにだれかが座っているのがうかがえた。
(アレックス、もう来ているのね)
笑ってしまった。
彼もまた昨夜のことで疲れきっているはずなのに、生真面目だからきちんと習慣を守っている。
ほんとうにアレックスらしい、と心から思った。
同時に、彼が国王に即位したことを思い出した。
習慣のことより、そのことの方がよほど重要である。
頭の中で祝辞を考えてみた。が、心は複雑である。
中途半端な気持ちのまま、ベンチへ近づいた。
「殿下」
元気よく声をかけた。
アレックスは、いまはまだ王子。
当然のことだけれど、彼が国王に即位するのはいますぐというわけではない。
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