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大混乱? 動揺?

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 ドキドキばくばくがおさえることが出来ない。心臓は、いまにも止まってしまいそう。

 本殿の大広間へと急いでいる。庭園をふたたび横切るわたしに、月光がやさしく降り注いでいる。

 朝の庭園は、鋭く冷たい。昼間の庭園は、やさしくて暖かい。そして、夜の庭園はシンと静まり返って厳粛な雰囲気を醸し出している。

 王宮の庭園は、どの季節のどのようなときに来ても落ち着く。

 わたしの心と体を癒してくれる。

 しかし、いまは違う。

 ドキドキばくばくな状態、というよりか完全に大混乱してしまっている。つまり、パニック状態に陥っている。

(いったいどういうこと? わたしに触れてくるなんて、パトリックはなにを考えているの?)
 
 大パニックだ。

 アレックスに触れられるときがある。だけど、それはあくまでも偶然の賜物である。たとえば、ティーカップやポットを取ろうとしたタイミングが同じで手が触れてしまう。それから、たまたま同じクッキーやマドレーヌに手を伸ばしてしまう。さらには、扉を開けるとか側を通りかかったときに手や方が触れる。あるいは、机上のものを整理するとか必要なものを取るときに手と手が重なってしまう。まだある。アレックスに呼び止められたり、ちょっとしたタイミングでとかで手など体の一部が接触してしまう。

 よくよく考えたら、触れる必要のないときや接触するわけのないタイミングでも触れられたり接触している気がするけれど。

 そうそう。バラ園でのことは、あれは仕方がなかった。

 あれは、わたしがこの二度目の人生に死に戻った翌朝だった。バラ園でわたしが驚いてつまずきそうになり、アレックスが受け止めてくれた。彼は、わたしがケガをしていないかどうかを確認する為、この世の全レディが憧れる「アレ」をしてくれた。

「アレ」というのは、「お姫様抱っこ」であることはいうまでもない。

 そのことを思い出すと、恥ずかしすぎて顔が真っ赤になる。

「お姫様抱っこ」だなんて、アレックスにとんでもないことをされてしまった。

 とにかく、先程のパトリックに手首をつかまれるというのは衝撃的すぎた。

(そうよね。ディーマー帝国とカニンガム王国では、食文化が違う。男性がレディに触れるというのも、きっとディーマー帝国では一般的で自然な動作なのよ。それを大げさに騒いだり、ましてやショックを受けるなんて……。わたしってば自意識過剰すぎるわ)

 自分自身を納得させるとともに、諫めずにはいられない。

 あれこれ考えている間に、本殿に戻ってきていた。
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