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【第二章】セレイム王国へ
暗闇の森からセレイム王国へ
しおりを挟むセレイム王国へ向かうことが決まってすぐに、準備を始めたレイたち。
今はリリィに乗り、空の上にいる。カインはレイを後ろから支えるように乗って、レイはそんな彼の腕の中で納まっていた。
ちなみにフェンとコハクは、レイの召喚陣の中だ。
【召還陣】契約者となった者が創り出す空間魔法。一般的に契約獣は、戦闘や移動で活躍するなど以外は、召還陣の中で過ごしていることが多い。
体の小さい精霊や魔物の場合は、召還陣から出している契約者もいる。
原則、契約者の呼び出しが無いと出ることはできない。
「本当にありがとう」
「まだ、何もしてないわ。怪我人を治療出来てから言って」
感謝されることに慣れていないレイは何度もありがとう、と言うカインに少し冷たく指摘した。
「ああ。そうだな」
カインは彼女に指摘され、苦笑いをこぼした。
「リリィ。ごめんなさい。貴女の好きなリンゴのデザート、結局出せなかったわね」
昼食を食べてすぐに暗闇の森を発ったため、デザートはお預けになったのだ。
「気になさらないでください。クリームシチュー、とても美味しかったです」
「ありがとう。口に合って良かった。今度必ず、デザート用意するわ」
「ふふ。それはとても楽しみです。でしたらデザートのためにも、急いで王都に向かわないといけませんね」
「ええ。よろしく」
「お任せください」
レイとリリィは、仲良く会話をする。
「やっぱり、言葉が分かるというのは羨ましいな。……リリィはあまり感情を表に出さないから、心配になるんだ。我慢をさせているんじゃないかって」
二人のやり取りを見ていたカインは、彼女のことに対する不安の声をこぼした。
「……それは大丈夫だと思うけれど」
「そうか?」
「貴方のことだから、この子のことをちゃんと見ているでしょう?この子の見せる少しの変化に気づけているはずよ。例えば、何かの時に目が変わるとか、何だかいつもより嬉しそうとか、悲しそうに見えるとか。そういうの今までになかった?」
レイは生き物のことになると、饒舌になる。
「その感覚はあったな。リリィは他の聖竜たちに訓練の指導を任されているんだ。その訓練中は厳しい目つきなんだが、訓練が終わると竜たちを見る目が優しくなる」
カインは嬉しそうに竜騎士団でのリリィの話をした。
「見られてましたか。お恥ずかしい」
「……その感覚は間違っていないみたいよ」
リリィの言葉を拾ったレイは、カインに大丈夫だと言葉を返した。
「そうか。君にそう言ってもらえると、自信がつく。ありがとう」
「いえ。(今日は何回この人に感謝されるのかしら)」
普段人から感謝される機会がほとんどない彼女にとって、彼のまっすぐな言葉は胸をくすぐられる感覚になる。
「ところでリリィは、どういう風に話しているんだ?」
「とても丁寧に話してくれるわよ。今の彼女の話でいうと、―見られてましたか。お恥ずかしい。―って話してたわ」
「ハハッ。そうか、リリィらしい話し方だな」
カインの声は、とても楽しそうだ。
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