その狂犬戦士はお義兄様ですが、何か?

行枝ローザ

文字の大きさ
83 / 437
第一章 アーウェン幼少期

少女は義兄を悪夢から救う ①

しおりを挟む
そこからはただのお茶会ではなく、『アーウェンを復活させ、ログナス・ディーファン・ルッツ・ルアンの気持を持ち直させる作戦』と化した。
エレノアが母と共に訪れ花を摘んだ場所は、ジェナリーが直接管理している植物園であり、しかも薬草なども試験的に作って王都の魔法研究所に収めている。
「ですから、一刻も早い回復を望むのであれば、薬湯なども併用されると良いのではと……」
「ええ!本当に!ターランドと言えど、薬草など簡単には手に入りませんもの。それをいただけるなど……」
「おかあしゃま!のあもいっしょに!のあがおにいしゃまにおはなつみましゅ!」
「ええ。もちろん!むしろエレノアがいなくてはいけないのよ?お義兄様を元気にしてあげられるのは、カラとエレノアが一番上手なのですから」
「ターランド夫人?その『カラ』というのが従者ですの?」
「ええ。どうか私のことは『ヴィーシャム』とお呼びになって。貴族籍を持たぬ平民の子ですが、驚いたことに我がターランド伯爵警護兵の中でも高位魔力保持者に勝るとも劣らない魔力の持ち主ですの。しかもアーウェンに合う魔力を食事に練り込ませるという、思ってもみなかった方法でアーウェンを救ってくれましたの」
「まあ!そんなことがあるのですね……市井の者にもそのような……であれば、我々の中で通説となっている『魔力保持者は貴族以上』というのは間違っているかもしれませんのね……ああ、どうぞ私のこともジェナリーとお呼びください」
フフフ…とふたりの女性は顔を見合わせて改めて友情を誓い合うと、侍女に植物図鑑を持ってくるようにとジェナリーは言い付ける。
「植物図鑑?」
「ええ。元々、私は王都が好きではありません。幼少期からこの地で育ち、王都貴族学院では中・高等部だけ所属して、ログラスを見初めた後からはほとんどこちらで薬草や花の効能を研究しているんです」
「まあ!ラウドからは学園ではとても勇ましい女性だったと聞いていましたの。まさか薬草学にお詳しいなんて……」
「ふふ……ええ。学園内での呼び方をお許しいただけるなら、ラウド様はやはり魔術に絶対的価値を置いていらっしゃる方ですから、なかなか意見が合わなくて。いつの間にか見解の違いを正そうとお互い言い合うより、剣を交えての交流が多くなっていったのは事実ですの。王都からほど近いとはいえ、やはり警備などはなかなか手が足りませんし、女性を保護する意味でも、女性衛生兵部隊を作り上げるのが、学園での学びの目的でありましたし」
「なんてお志の高い……私はターランドの血縁者の中でも魔力が高いということで嫁ぎましたが、ジェナリー様のような崇高な目的を持って生きるということを考えもしませんでしたわ……お恥ずかしい」
そう言って手に持った扇を広げて顔を隠すヴィーシャムに向かって、ジェナリーは慌てて手を振る。
「いえいえ!ターランド伯爵ご夫妻が魔術後方支援部隊を取り纏めるからこそ、王都だけでなく、この国全体も安泰なのですから。それに、おふたりとも孤児や救貧院などの慰問や新たな雇用を作るなど、いろいろお噂は聞いております」
「いえ、夫はともかく……私ができることなど、本当に限られていて。養子となったアーウェンの身体を不安なく丈夫にしてあげる方法もまだ見つかりませんの……」
そう言って目を伏せるヴィーシャムの手を取り、ジェナリーは力強く言い聞かせるように話した。
「ええ!ですから我が植物園で、ぜひ義息子様のお身体に良いものを見つけましょう!きっと見つかりますとも」
「おかあしゃまー?おばしゃまー?」
そうしてふたりの夫人が手を取り合っていると、エレノアが侍女に開いてもらった図鑑を覗き込みながら呼びかけ、目に留まったそのページに注意を引く。
「これは……」
小さな指が止まっているのは、『アフェニミアス』と称される可憐な花の絵で、そこに書いてある文章を見て、ヴィーシャムとジェナリーは顔を見合わせた。

しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

転生無双なんて大層なこと、できるわけないでしょう! 公爵令息が家族、友達、精霊と送る仲良しスローライフ

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
アルファポリス様より書籍化! 転生したラインハルトはその際に超説明が適当な女神から、訳も分からず、チートスキルをもらう。 どこに転生するか、どんなスキルを貰ったのか、どんな身分に転生したのか全てを分からず転生したラインハルトが平和な?日常生活を送る話。 - カクヨム様にて、週間総合ランキングにランクインしました! - アルファポリス様にて、人気ランキング、HOTランキングにランクインしました! - この話はフィクションです。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@2025/11月新刊発売予定!
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。 《作者からのお知らせ!》 ※2025/11月中旬、  辺境領主の3巻が刊行となります。 今回は3巻はほぼ全編を書き下ろしとなっています。 【貧乏貴族の領地の話や魔導車オーディションなど、】連載にはないストーリーが盛りだくさん! ※また加筆によって新しい展開になったことに伴い、今まで投稿サイトに連載していた続話は、全て取り下げさせていただきます。何卒よろしくお願いいたします。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

悪役令嬢の身代わりで追放された侍女、北の地で才能を開花させ「氷の公爵」を溶かす

黒崎隼人
ファンタジー
「お前の罪は、万死に値する!」 公爵令嬢アリアンヌの罪をすべて被せられ、侍女リリアは婚約破棄の茶番劇のスケープゴートにされた。 忠誠を尽くした主人に裏切られ、誰にも信じてもらえず王都を追放される彼女に手を差し伸べたのは、彼女を最も蔑んでいたはずの「氷の公爵」クロードだった。 「君が犯人でないことは、最初から分かっていた」 冷徹な仮面の裏に隠された真実と、予想外の庇護。 彼の領地で、リリアは内に秘めた驚くべき才能を開花させていく。 一方、有能な「影」を失った王太子と悪役令嬢は、自滅の道を転がり落ちていく。 これは、地味な侍女が全てを覆し、世界一の愛を手に入れる、痛快な逆転シンデレラストーリー。

処理中です...