返事はいらない

後ろ向きミーさん

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狼は愛をささやく

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「ん-?うーん?」

一臣と他愛無い会話を楽しみながら午後のお茶を楽しんでいた時、背筋に悪寒が走った。
思わず腕をさする。
その動きに見覚えのある一臣が反応した。

「主、変異の時期ですか?」

「そう・・みたいだね。籠ってくるよ・・独りにさせてしまうけど用意を頼むね・・。」

・・ついにこの時期がきてしまった。

心の片隅にいつも潜んでいた不安の種子。
男に戻ってしまった私でも・・一臣は番でいてくれるのだろうか?
私は、その考えから逃げる様に寝台に籠った。

閉じ切った寝台の中、吸精鬼の私が見るはずの無い長い長い夢をみた。
覚えていないが、漠然とした不安ばかりを煽る夢だった気がする。
お陰で起き抜けの体調は最悪、私はそのまま寝台の人となった。

「主、最低限の物はご用意できています。体調が整いましたら、また街へ出かけましょう。主と一緒の買い物を楽しみにしています。」

私の手を包み込み気遣ってくれる、優しく美しく時に雄々しい私の狼。

自分の指先を見ては心が沈む。
いくら私が細身とは言えどう見ても男の作り、前の嫋やかな指とは雲泥の差だ。
この不調は心根の表れか・・。

一臣の献身もあり私は何とか日常に支障をきたさない程には回復した。
体調を慮ってか、優しい抱擁と額に落とされるだけの口づけの日々。

芽吹いた不安の種子はますます育ち、私の心を雁字搦めにしていく。
ボンヤリとする事が多くなった。


私達は今水牢にいる。
一臣は私がここに来る事を嫌がるのだが、様子のおかしい私に目が離せないのか、どこにでも連れまわす様になった。

「私は贄を食む一臣を見るのが好きなんだよ。
こう・・綺麗なオドがヒラヒラ舞ってね、とても美しいんだ。」

そこに居るのに掴めない夢をみている心地で、一臣が贄を食む姿を見ながら独白を続ける。

「・・そうでしたか・・。」

「うん。一臣みたいに力強く輝いて・・美味しそうで、だからずっと欲しいって・・。」

贄を噛み砕く一臣の動きが、びたりと止まる

「結ばれた時は本当に幸せだった・・。」

そっと胎を撫でた。

「・・グルルッ・・。」

食べかけの足を投げ捨てると、びちゃりと水を含む鈍い音がした。

膨れ上がった黒狼がのしりと私の前に立ち 影を落とす。
ふわふわする心持で見上げれば、美しいオドがはらはらと降ってくる。
手を翳せば、雪の様に静かに舞い落ち、手の中で儚く消えていく。

「一臣?・・オドが雪みたいだ。」

・・悲しいの・・かな?
金の瞳が水面の月の様に揺らめいている。
溶けてしまいそう。

「主、何故そんな終わった事の様におっしゃるのか。」

「・・こんな私は嫌だろう?嫋やかさの欠片も無い・・無骨な体だ。」

「私はあなただからいいんだ。」

「だが、私は・・。」

不安が喉を締めつけ、ざらついた不穏な音しか聞こえない。
木霊の様に低く暗く鳴り響く。
もう聞きたくない。
深い蔦の奥底で眠りたい。
知らずに体が後ずさりし目をそらした。

両腕を掴み上げられ、強い視線が私を貫く。


!私の愛を疑うな!≫


言霊を乗せ、狼が吠えた。
伴侶にのみに明かされる秘する名前。
私の命を縛る唯一の真名マナ

私は動けない。
不安の種子と心に絡みつく蔦達が、狼の顎で微塵も残さず引き裂かれるのがわかる。
曇った視界が薙ぎ払われた。

「あ・・あぁ・・。」

軽々と姫抱きに抱えると、血だらけの寝台に運ばれる。
服を引き裂かれながら倒された。
血だらけの顎が顔面に迫り、ざらつく長い舌が差し込まれ咥内を蹂躙する。

舌が体を這う。
鎖骨から胸の尖、腹、腰骨、足、指先。
足首を掴まれ広げられる。
既に兆していた私は、見られている事に興奮と羞恥を覚えた。体は色づいているだろう。

大きな顎で、股座を甘噛みの様に食まれる。
薄い胎と臀部に牙が沈む感触を感じる。

このまま戯れに顎を閉じ、食い千切られたら私でも助からない、その事に恍惚となった。
先走りを舐る様にからめとられ、快楽に身もだえする度に、ぷつりと牙が肌に沈む。

胸の頂きを爪で弾かれる、転がされ、蕾も爪で前立腺を執拗に攻められ続けた。
一臣の金のオドが踊り狂う。

「あぁ・・も・・やぁ・・。」

対面で抱きしめられ、尻を鷲掴みされ男根の上に落とされた。
自重で胎に飲み込んでいく。
収まり切れないの男根は、最奥の扉をこじ開ける様に捻じ込まれていく。

成すすべもなく揺さぶられ、私は首に縋りつくしかない。

「ああぁ・・ふ・・深いぃ・・ああぁ!」


≪エドナ私の月 私の光≫ ぐちゅん。

≪エドナ私の花 私の蜜≫ ぐちっ。

≪エドナ私の唯一 私の番≫ ぐちゅん。

≪エドナ私の最愛 私の命≫ ぐちっ。


一突き毎に言霊を耳元で囁かれる。
真名が心を犯す。

ぐぼんと一気に突き上げられ、下生えを肌に感じた。
一臣の男根が全て収まり、結腸を超えた。


≪  ≫ 


「ひぐっ・・あああああっ!ひぃ。」

信じられない快楽が体を駆け回る、痙攣が止まらない。涙が溢れ、狼の腹に白濁を放つ。
舞い踊るオドが、シャラシャラと音を立て、福音を奏でる。

熱い子種が満たされるのを感じた。


≪エドナ この命尽きるその時までお側に≫ 

≪貴方を愛しています≫


私は遠ざかる意識の中で、狼の愛の囁きを聞いた。


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