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後ろ向きミーさん

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掃除のできる狼

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主が寝室に籠って2日め、狼の聴覚をもってしても、部屋の中の音が何一つ聞き取れない、不自然すぎる。
防音の魔法が掛けれているかも、ふと思いいたる。
主の音のしない屋敷、一人っきりなのは初めてだ。

―知らない事が多すぎるー

二人きりで暮らしてきたが、まだ底が見えない。
知っている事と言えば・・。

吸精鬼であり永く生きて居る事、魔法が使える事、普通の食事でも効率は悪いがオドが摂取できる事、紅茶が好きな事、思ったより天然で目が離せない事、甘い香りがして無邪気に微笑む姿が美しい事・・。

いやちょっと待て、最後のは無しだ。

「掃除の続きをしよう・・。」

・・犬は言いつけを守らねば。
自嘲気味な笑いをこぼしながら、トボトボと掃除に向かう。

翠の扉の部屋。
主の寝室と扉で行きき出来る部屋だ。
構造を考えれば、本来なら奥方の部屋にあたる場所なのだろう。

この屋敷の使う部屋は限られている。
何せ主とふたりきり。
手入れが行き届いているの、哀れな贄を招く部屋ぐらいだ。
贄達はここで一時の甘い夢を見、最後を迎える事となる。
贅沢で豪奢な作りなのは、主の最後の情けなのかもしれない。

大概は、風通しで窓を開ける時ぐらいにしか出入りしない部屋ばかり。
そこにも、何かしらの調度品や家具が備え付けられ、痛まない様に布を掛けられている。
まるで白い波の中にいる様だ。
この屋敷にも大勢の人が出入りしていた事もあるのだろうか?

主の音がしないだけで、こんなにも人恋しくなるとは。
まだたった2日だぞ、我ながら驚く。

翠の部屋を掃除して、初日に感じた違和感の理由にやっと気が付いた。

―家具が小さい?―

成人した女が使うにしては、家具や寝台が小さくないか?
そう思って部屋を眺めれば、家具のデザインも少々可愛い気が・・。
奥方の部屋というより、子供部屋と言われた方がしっくりくる。

子ども部屋?

あの主の?

「・・・・。」・・動悸が激しいんだが。

無心だ無心。


今日の掃除予定はクローゼット周りだ。
要らぬ思考を断ち切る勢いで思いっきり開いた。
が、空と思っていたクローゼットの中には、数着のドレスと靴が存在感を放ちまくり、鎮座してあった。
デザインの流行り廃りはわからないが、古典的か?物は良い、新品でなく使用感があり、きちんと手入れされているのが見て取れる。
サイズからして、15歳前後。

・・・待ってくれ。

俄然、主に説明を求めたい・・。
しかし、謎のお籠期間があけるのはまだ先だ。
今、自分の耳がぺしょりとへたりこんでいる自覚があるぞ、狼の教示とやらは一体何処へいった。

ドレスを洗う事は出来ないだろうから、日陰で風を通す事にした。
主が出た来たら、洗浄魔法をかけてもらえばいいだろう。

部屋の掃除は3日たらずで終了。
後は、あれこれ要らぬ考えを巡らせながら『待て』の日々を鬱々と過ごす羽目になった。


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