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一章 人狼の傭兵
4 水棲小魔獣 ウォーター・リーパー
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沼地に続く道は墓地と同じく、人々が住んでいる場所からは少し外れた場所にある。鬱蒼と生え茂った森の中にあり、木を切り開き整備された道は人が踏み締め、根が枯れてしまったのか、剥き出しの地面と短い草が生えているだけだ。
「人が結構来るのか?」
地面の抉れ方は車輪が何度も通った後のようだった。そんな道を見て、一斬が尋ねると「まぁな」と先を歩いているスコットは少し自慢げに答えた。
「ここら辺に生える薬草やキノコはちょっとだけ珍しいんだぜ」
「色んな薬の材料になるんですよ」
「へぇ……知らなかったな」
「まぁ、あの沼は観光には向かないけどな。迷い易いし、俺ら番人とミーシャとラングレーさん以外は運び屋ばっかりで後は全然入らな……」
説明をしながら道を確認していたスコットが、不意に足を止めた。
「スコット君……?」
様子がおかしい。ミーシャが何があったのか訊こうとして前に出ると――スコットの視線の先に何があるのか気が付き、息を呑んだ。
――道の真ん中に、大柄な男が一人倒れている。
「親父!!」
震えていたスコットが弾けるように男性へと駆け出して行った。全員駆け寄ると、足音に気が付いてか男は微かに身じろいで上半身を僅かに起こす。それでも震えは止まらず、顔色も悪い。スコットがなんとか支えながら男の体を起こした。
「何があったんだ親父!」
「ま、魔物が……」
「魔物って……嘘だろ!? こんな町の近くにまで……?」
男の言葉に、子供達の表情が皆不安げな物に変わっていく。お互いに肩を寄せて、涙ぐむ子供もいた。
そんな中、一斬が何かに気が付くとすぐに回り込み、血の滲んでいた男の服の袖を捲くる。スコットが驚いた顔をしていてもお構いなしだ。
「お前、何を……」
「傷を見るだけだ」
剥き出しになった男の腕には、横に広く付いた歯形が腕に残っている。傷は深くないようで、血は少し止血すれば自然と治まりそうな傷だった。だが一斬は歯形を見た瞬間に眉を寄せる。
「ウォーター・リーパーだな」
一斬が呟くようにそう言った。スコットが眉を寄せ、子供達は「ウォーター・リーパー?」と聞き慣れない名前を繰り返すように言った。
「なんだそいつ……?」
「野犬みたく群れで狩りをする蛙の魔物だ。沼地を好むし、細かい牙が生えていて麻痺毒を持ってる」
「そんな奴らがどうして急に……」
「こいつらは餌を食べ尽くすと雨の日に一斉に移動するのさ。連日雨だったからな、そん時に移動したんだろ。とにかく、噛まれたのが一回だけなら人が死ぬほどの毒じゃない、今から村に運んで――」
「ま、待てっ……! ら……っ! ごほっ、ごほっ!」
「おい親父、無理すんなよ。今から村に――」
息子の制止に首を横に振って、男は話を続けようと荒い息を交えながら一斬に向かって口を開いた。
「ら、ラングレーさんが、まだ、奥に……!!」
男が絞り出すようにそう言った。全員が目を見開き、特にミーシャの顔色が一瞬で変わり――気が付けば沼へ真っ先に走り出していた。昨日の雨でぬかるんだ地面に足が取られても、奥へ、奥へと進もうとして――誰かが彼女の腕を掴んでいた。振り向くと睨むようにミーシャを見ている一斬が居た。
「離してっ、一斬さん! お父さんが……!」
ミーシャがもがいて腕を振り払おうとするが、一斬が手を離すと肩を掴む。
「落ち着け!」
「でも……っ!」
「――俺も行く」
その一斬の言葉にミーシャは驚き、咄嗟に言葉が出てこないようだった。
「ミーシャ!」
慌てた様子でスコットが二人の方へと駆け寄って来た。しかし一斬は駆け寄って来るや否や「おい」とスコットに声を掛ける。
「お前は子供達と親父さん連れて村に戻れ、俺はミーシャと一緒にラングレーさんを連れて帰る」
「なっ……!」
スコットがミーシャの方を一瞬見て、目を吊り上げると一斬の胸ぐらへと掴み掛かった。
「ミーシャが行くなら俺が行く!」
「お前じゃないと親父さんに肩貸してやれないだろ」
「な、なら村まで戻った後に……!」
「それじゃあ間に合わない。あの麻痺毒は一回じゃ死なないがな、何度も噛まれると心臓を止めかねない猛毒に変わる」
低く告げられた言葉と一斬の表情は脅しのようでもあり、スコットの背筋を凍らせるには十分だった。
「頼む――行ってくれ」
言葉を失ったスコットの腕を気付けるように叩いた一斬は短く、まっすぐ青年を見上げた。迷ったようにスコットはミーシャと一斬を交互に視線を向ける。決断を迫られていることが分かり、少しして頭を苛立たし気に搔いて「あーもう!」と言ってスコットは背を向けた。
「絶対戻ってこいよ! 帰って来なかったら承知しないからな!」
その声が僅かに震えているのを、ミーシャはしっかりと感じ取っていた。
「うん、分かってるよ」
だからこそ、ミーシャは力強くそう答えた。それ聞いてから背を向けたまま頷き、父親の元へと走って行くスコットを見送り、一斬は再びミーシャの方へと振り向いた。
「ラングレーさんが行きそうな場所、分かるか?」
「はい、こっちです!」
ミーシャが今度こそ止まらずに走り出す。雨粒が鼻先を掠めても、今はそんな事などこの場に居る誰も気に留めはしない。スコット達の姿が茂みに隠れ見えなくなってから、一斬はミーシャと並んで話始めた。
「このままじゃ、おそらく間に合わない」
突然そんな言葉を告げる一斬に、驚きながらも足を止めない。一斬は少女の方を見ずに前を見続けては走っている。一体何を考えているのか、ミーシャには分からなかった。
「お前は、覚悟があるか」
確かめるように一斬がそう訊いて来た。
「覚悟、って……?」
「ラングレーさんを助けるには、覚悟が要る。俺もお前もな。危険に身を晒す覚悟はあるか?」
いきなりだった。だがそんな質問を投げた一斬もどこか、後一歩が踏み出せないような――そんな面持ちのようにも見えた。泥で靴を汚しながらもミーシャは少し悩み、昨日の父親の顔を思い出した。
――心配するようにこちらを見て、そして励まし、抱き締めた父の手もまた震えていた事を思い出していた。
「私、まだお父さんに謝りたいことがあるんです」
ミーシャも前を向いて走った。沼地の整備された道でも気を抜けば滑り、転んでしまいそうだった。ますます雨が降り続いている。今は小さな雨粒でも、このままだときっと視界すら塞いでしまうような激しい雨が降っていく予感がした。父親がその中で魔物に襲われる光景が自然とミーシャの頭の頭を過る。
何度も来るそんな考えを振り払い、張り裂けそうな小さな胸を抑え、涙を抑え、必死に走っていた。
「またお父さんに会いたい。私、謝らなきゃいけないんです。だから……覚悟、します」
泣き出しそうな声だった。だがその言葉に込められた想いはすぐに伝わった。
「そうか」
静かにそう返し、一斬は不意に足を止めた。振り向いたミーシャの目の前で突然、一斬は手を地面に付ける。手が泥で濡れてもお構いなしだった。
「一斬さん……?」
様子がおかしい――そう思い、駆け寄ろうとしたミーシャは微かに聞こえた呻き声――獣のような声に思わず身を固め、その場から動けなくなった。
「う、グッ……!」
体の節々から骨が折れるような、そんな音が聞こえる。目の前の青年の姿が変わっていく。体が膨張し、肌を晒していた部分からは黒い毛並みが生え揃い、顔は人のそれから鼻先が伸びて、大きく裂けた口からは鋭利な牙が見えていた。目まぐるしい速度で変わって行く姿に、ミーシャは呆然とするしかなかった。
――羊飼いの村に伝わる伝承がある。
それはただの言い伝えのはずだった。人は嘘を吐いて羊を盗む事がある、山を下りては羊を食い殺す狼と変わらない。狼のような人間は、普段は人に混じって人らしく笑い、人らしく過ごす。夜になると羊を盗みに来る。理性のない化け物になるのだと。確かそんな話だった。
しかし、目の前の存在は伝承そのままの姿になっている。羊飼いの誰かが持っている本に絵が描かれていたのをミーシャは思い出した。
――その絵の通り、人の骨格を残した巨大な狼がそこに居た。
曇り空もあって辺りが暗く成り始めているというのに、少女を見つめる狼の目は暗がりの中でも爛々と、金色に光っていた。蹲っていた体を起こし、四つん這いのまま歩いてくる存在を前にしてミーシャは動けなかった。それは本能的な恐怖であり、思考は追いつかない。
「あ……」
口を衝いて出たのは驚きと恐怖が混ざった震える声だった。つい先ほどまで普通に話していて、一緒に走っていた人物がいきなり獣に変わったのだから無理もない。動けない少女を前にして、目の前まで歩いて来た狼は口を開いた。
「大丈夫だ」
聞いた事のある、まるでこちらを落ち着けるような声色に、いつの間に体の震えが止まった。涙が目に膜を張ったのか、黒い体は揺らいで見えた。しかしそんなミーシャを前にしても、狼は続けた。
「いいか、お前の親父さんは絶対に俺が助ける。お前も守る。だから――今だけは信じてくれ」
その言葉に、大きく深呼吸をしたミーシャは覚悟を決めて目を一度閉じた。頬を涙が伝う。そしてもう一度目を開いた。そこに居るのが誰なのか、確かめるように。目の前にはやはり巨大な狼が、今度は立ち上がっていた。少女より二回りも大きな体だった。
――しかし理性の色を残している金色の瞳を前にして、今度こそ頷いて見せた。
「いきましょう」
――その声には確かな覚悟が籠められていた。
*
――私は死ぬのだろうか。
そんな考えが頭を過り「何を弱気な」と己を叱咤した。まだ死ぬ訳にはいかない、まだ死ぬ訳には……しかし、村に移り住んだ時から天候が変わりやすい事は分かっていたのに出かけてしまったことを、後悔せずにはいられない。
「ケェコ」
「クェッコ、ケコッ」
何体居るのか数えてはいないが、数体になる蛙の群れは執拗にラングレーを追い駆け回していた。自分が囮となり、スコットの父親は逃がす事が出来た。
しかし、足を噛み付かれてしまい、そこから痺れが回り始めているのは嫌でも気が付く。既に視界は激しい雨のせいか霞み始めていた。雷鳴も轟き、何度か雷が落ちているのが分かった。しかし自分が今どこを走っているのか、もう分からない。だがとにかく逃げなければならない――それだけは明確だった。
姿は見えないが頭上の葉っぱからは何かが移動し、枝が揺れ葉っぱ同士が擦れ合い音を立てている。
「ハァッ、ハァッ――!」
何度も何度も浅い呼吸を繰り返して、逃げ続ける。泥が傷に染みて痛んでいたというのに、疲労のせいか、それとも麻痺毒のせいか。走っていた足は引きずるようになり、徐々に足が動かなくなっていき……遂に――沼の端まで来てしまったようだ。
「はぁっ、はぁ……!」
巨大な沼が目の前に広がっている――しまった、とラングレーは血の気が引いた。
「ゲココッ」
水面に水泡と波紋が広がり、次々と白い蛙が顔を出し始める。びしゃり、と水音を立てて岸に上がって行く。木の上からも何匹もの白い蛙が飛び降りてきた。
犬ほど大きさかつ真っ白な体、姿は蛙だが後ろ足はなく、長く鋭い尾と前足の代わりに羽がある。羽には蝙蝠のようで、手はないが関節の部分を杖のように使って這いずって移動しているようだった。ラングレーを見て何かを確かめるように口を動かすと、薄っすらと細かく生え揃った牙を覗かせる。
水棲小魔獣――ウォーター・リーパー。彼らは犬のように群れで狩りをする。
そう思い出した瞬間、誘導されていたのだと気が付き――ラングレーの体からついに力が抜け落ちた。膝がぬかるんだ地面に突く。悔しさのあまり、痺れていく手は泥を掴んだ
「ミィ、シャ……!」
これから起こる恐怖の中、ラングレーは思わず最愛の娘の名を呟いた。まだまだ伝えたいことがあった。だが周りの魔物たちはようやく力尽きた獲物を皆で分け合う瞬間が来たと――最初に、ウォーター・リーパーの一匹がラングレーへと牙を向けた。
――もう駄目だと、ラングレーはキツく目を閉じた。
「ギィィッ!?」
しかし獲物に飛び掛かるはずの体は、ラングレーの予想に反して目の前で大きな氷柱へと刺し貫かれた。地面に一度叩きつけられ、跳ねた体はそのまま地面へと倒れてピクピクと何度か痙攣した後、動かなくなった。
――まさか、そんな。
信じられない気持ちでラングレーは力を振り絞り、顔を上げる。すると黒く巨大な何かに乗っている――最愛の娘の姿が、ぼやける視界の中でも見えていた。ウォーター・リーパーたちが向かってくる何かに、喉を鳴らして威嚇音を発するが何かは止まる気配がない。
そして、そのまま、何かは白い蛙たちの群れへと突っ込んで来た。
巨大な体が白い体を跳ね飛ばし、何匹かの喉を正確に裂いた。言語は違えど、蛙たちの口から次々に悲鳴が上がり始めているのが分かった。やられていく仲間を見て慌てて距離を離していく。
ラングレーの目の前に立ち塞がっているのは、巨大で、人の骨格を残した黒い狼だった。そして、その背には――
「お父さん!」
「ミ、ミーシャ……」
力尽きかけたラングレーは狼の背から下り、抱き締めてきた娘を震える手で抱き締め返した。冷たい雨に打たれていても、その温かさは今が現実のものだと教えてくれる。しかしミーシャは、父親との再会を喜ぶのも束の間、彼の耳に何かを填める。
「ミーシャ……?」
「お父さん、じっとしてて、もう大丈夫だから」
父親を落ち着けるような声に驚きながらも、ラングレーは背を向けている黒い狼へ視線を向ける。唸り声を上げ、姿勢を低くしながら蛙達に威嚇している姿――というより服装には見覚えがあった。腰には、特徴的な剣もぶら下がっている。
「まさか――」
何か言い掛けたラングレーの疑問は蛙達の金切り声で掻き消された。咄嗟にミーシャが父親の耳を押さえる。狼は一瞬だけその声に怯んだが、すぐ息を大きく吸うと――
「ウオォオオォォゥ――!!」
まるで地を揺らすように狼が吼える。金切り声を上げていた蛙達はその声に驚き、体を恐ろしさから跳ねさせ、一瞬怯んだ。
――その隙に狼が弾かれるように飛び出し、一番近い蛙達の群れへと突っ込むとその喉元へと牙を立てた。
「ゲコォッ!?」
蛙の口から発せられた驚いたような声を無視して、喉を食い破り、狼はそのままもう一匹へと食らい掛かる。群れを襲い始めた狼に対して、獲物を横取りされると踏んだのか、蛙達は矛先を襲撃者へと向けた。連携し長い舌を勢いよく飛ばし、狼の足や体へと粘着質な舌を巻き付け、動きを止めようとする。
しかし逆に舌を掴んだ狼が力を込めて引っ張ると、白い体はあっという間に浮き上がり――逆に狼の牙の餌食になった。
何匹かは力強く噛み付き離れようとはしない。だが蛙の頭を大きな手で掴んだ狼は自分の肉が千切れても構わず無理やり引き剥がすと、頭を握り潰した。さらに傷口は血が泡立つように噴き出したかと思えば、すぐに塞がる。
激しい雨に打たれながら黒い毛並みが濡れても、狼はまるでバネのように手足を動かし、次々に蛙達を牙や爪の餌食にしていった。主に蛙から飛び散った血は水と一緒に地面へと吸い込まれていく。
雨が少しずつ止んでいく。視界が晴れていくと、地面に転がるように横たわった蛙達の屍にミーシャは息を飲んだ。その凄惨とも取れる光景をただ見守るしかない。
そして数が指で数えられるほどに蛙の数が減った頃、二人の背後にある沼から大きく何かが飛び出す水音が上がった。
――現れたのは巨大な白い蛙だった。体の大きさは狼を遥かに上回る。
その体に見合った重さなのか、地面に音を立てて着地した巨大な蛙は辺りの様子――同胞達が屍となっている様子を見て――飛び出しそうな目を恨めしそうに狼へと向けた。白い蛙が一斉に巨大な蛙の方へと逃げて行く。狼はゆっくりと立ち上がった。そして、血だらけの口元を長い舌で舐めた。牙を剥くと再び唸り声を上げ、腰に差していた細身の剣――刀に手を伸ばす。
まるで飛び掛かる前のように姿勢を低くした狼に対し、蛙は大きく飛び跳ねる。
巨体にも関わらず、その体は上空へと舞い上がった。そして羽を広げてまるで攪乱させるかのように何度も旋回しながら飛び回り――そして翼を畳むと勢いよく降下してきた。
そのタイミングを見計らってか、狼も地面を蹴る。柄から、僅かに刀身が覗いた。
――大きく雷鳴が鳴り響く。雷から放たれた閃光が辺りを包み、狼の手に握られているそれが眩い光を発した。
「グ、ゲッ――」
それは一瞬だった。
巨大な蛙から小さく声が漏れた瞬間、体には斜めの赤い線が浮かび――そこから一気に鮮血が噴き出した。狼の手には血を付けた刀が握られている。
血を吹き上がらせた巨体は落下し、再び沼へと水飛沫を大きく立てて沈んでいく。今度は二度と浮かび上がらないだろう事は、段々と落ちた個所から広がって行く赤い水から分かった。蛙達が再び悲鳴を上げて一目散に逃げて行く。
地面に着地すると逃げていく蛙達、静寂が戻った沼を見回し、刀の血を服で拭い……狼が長く息を吐いた。柄に刀身を仕舞い、ゆっくりとミーシャとラングレーに振り向く。泥を跳ねさせながら歩いていくる狼を呆然としながらも見上げる二人に、目線を合わせるように屈んだ。
「――大丈夫か?」
血の滲んだ毛並みと服装……その姿に対して、声や瞳、仕草は二人を気遣うものだった。
「人が結構来るのか?」
地面の抉れ方は車輪が何度も通った後のようだった。そんな道を見て、一斬が尋ねると「まぁな」と先を歩いているスコットは少し自慢げに答えた。
「ここら辺に生える薬草やキノコはちょっとだけ珍しいんだぜ」
「色んな薬の材料になるんですよ」
「へぇ……知らなかったな」
「まぁ、あの沼は観光には向かないけどな。迷い易いし、俺ら番人とミーシャとラングレーさん以外は運び屋ばっかりで後は全然入らな……」
説明をしながら道を確認していたスコットが、不意に足を止めた。
「スコット君……?」
様子がおかしい。ミーシャが何があったのか訊こうとして前に出ると――スコットの視線の先に何があるのか気が付き、息を呑んだ。
――道の真ん中に、大柄な男が一人倒れている。
「親父!!」
震えていたスコットが弾けるように男性へと駆け出して行った。全員駆け寄ると、足音に気が付いてか男は微かに身じろいで上半身を僅かに起こす。それでも震えは止まらず、顔色も悪い。スコットがなんとか支えながら男の体を起こした。
「何があったんだ親父!」
「ま、魔物が……」
「魔物って……嘘だろ!? こんな町の近くにまで……?」
男の言葉に、子供達の表情が皆不安げな物に変わっていく。お互いに肩を寄せて、涙ぐむ子供もいた。
そんな中、一斬が何かに気が付くとすぐに回り込み、血の滲んでいた男の服の袖を捲くる。スコットが驚いた顔をしていてもお構いなしだ。
「お前、何を……」
「傷を見るだけだ」
剥き出しになった男の腕には、横に広く付いた歯形が腕に残っている。傷は深くないようで、血は少し止血すれば自然と治まりそうな傷だった。だが一斬は歯形を見た瞬間に眉を寄せる。
「ウォーター・リーパーだな」
一斬が呟くようにそう言った。スコットが眉を寄せ、子供達は「ウォーター・リーパー?」と聞き慣れない名前を繰り返すように言った。
「なんだそいつ……?」
「野犬みたく群れで狩りをする蛙の魔物だ。沼地を好むし、細かい牙が生えていて麻痺毒を持ってる」
「そんな奴らがどうして急に……」
「こいつらは餌を食べ尽くすと雨の日に一斉に移動するのさ。連日雨だったからな、そん時に移動したんだろ。とにかく、噛まれたのが一回だけなら人が死ぬほどの毒じゃない、今から村に運んで――」
「ま、待てっ……! ら……っ! ごほっ、ごほっ!」
「おい親父、無理すんなよ。今から村に――」
息子の制止に首を横に振って、男は話を続けようと荒い息を交えながら一斬に向かって口を開いた。
「ら、ラングレーさんが、まだ、奥に……!!」
男が絞り出すようにそう言った。全員が目を見開き、特にミーシャの顔色が一瞬で変わり――気が付けば沼へ真っ先に走り出していた。昨日の雨でぬかるんだ地面に足が取られても、奥へ、奥へと進もうとして――誰かが彼女の腕を掴んでいた。振り向くと睨むようにミーシャを見ている一斬が居た。
「離してっ、一斬さん! お父さんが……!」
ミーシャがもがいて腕を振り払おうとするが、一斬が手を離すと肩を掴む。
「落ち着け!」
「でも……っ!」
「――俺も行く」
その一斬の言葉にミーシャは驚き、咄嗟に言葉が出てこないようだった。
「ミーシャ!」
慌てた様子でスコットが二人の方へと駆け寄って来た。しかし一斬は駆け寄って来るや否や「おい」とスコットに声を掛ける。
「お前は子供達と親父さん連れて村に戻れ、俺はミーシャと一緒にラングレーさんを連れて帰る」
「なっ……!」
スコットがミーシャの方を一瞬見て、目を吊り上げると一斬の胸ぐらへと掴み掛かった。
「ミーシャが行くなら俺が行く!」
「お前じゃないと親父さんに肩貸してやれないだろ」
「な、なら村まで戻った後に……!」
「それじゃあ間に合わない。あの麻痺毒は一回じゃ死なないがな、何度も噛まれると心臓を止めかねない猛毒に変わる」
低く告げられた言葉と一斬の表情は脅しのようでもあり、スコットの背筋を凍らせるには十分だった。
「頼む――行ってくれ」
言葉を失ったスコットの腕を気付けるように叩いた一斬は短く、まっすぐ青年を見上げた。迷ったようにスコットはミーシャと一斬を交互に視線を向ける。決断を迫られていることが分かり、少しして頭を苛立たし気に搔いて「あーもう!」と言ってスコットは背を向けた。
「絶対戻ってこいよ! 帰って来なかったら承知しないからな!」
その声が僅かに震えているのを、ミーシャはしっかりと感じ取っていた。
「うん、分かってるよ」
だからこそ、ミーシャは力強くそう答えた。それ聞いてから背を向けたまま頷き、父親の元へと走って行くスコットを見送り、一斬は再びミーシャの方へと振り向いた。
「ラングレーさんが行きそうな場所、分かるか?」
「はい、こっちです!」
ミーシャが今度こそ止まらずに走り出す。雨粒が鼻先を掠めても、今はそんな事などこの場に居る誰も気に留めはしない。スコット達の姿が茂みに隠れ見えなくなってから、一斬はミーシャと並んで話始めた。
「このままじゃ、おそらく間に合わない」
突然そんな言葉を告げる一斬に、驚きながらも足を止めない。一斬は少女の方を見ずに前を見続けては走っている。一体何を考えているのか、ミーシャには分からなかった。
「お前は、覚悟があるか」
確かめるように一斬がそう訊いて来た。
「覚悟、って……?」
「ラングレーさんを助けるには、覚悟が要る。俺もお前もな。危険に身を晒す覚悟はあるか?」
いきなりだった。だがそんな質問を投げた一斬もどこか、後一歩が踏み出せないような――そんな面持ちのようにも見えた。泥で靴を汚しながらもミーシャは少し悩み、昨日の父親の顔を思い出した。
――心配するようにこちらを見て、そして励まし、抱き締めた父の手もまた震えていた事を思い出していた。
「私、まだお父さんに謝りたいことがあるんです」
ミーシャも前を向いて走った。沼地の整備された道でも気を抜けば滑り、転んでしまいそうだった。ますます雨が降り続いている。今は小さな雨粒でも、このままだときっと視界すら塞いでしまうような激しい雨が降っていく予感がした。父親がその中で魔物に襲われる光景が自然とミーシャの頭の頭を過る。
何度も来るそんな考えを振り払い、張り裂けそうな小さな胸を抑え、涙を抑え、必死に走っていた。
「またお父さんに会いたい。私、謝らなきゃいけないんです。だから……覚悟、します」
泣き出しそうな声だった。だがその言葉に込められた想いはすぐに伝わった。
「そうか」
静かにそう返し、一斬は不意に足を止めた。振り向いたミーシャの目の前で突然、一斬は手を地面に付ける。手が泥で濡れてもお構いなしだった。
「一斬さん……?」
様子がおかしい――そう思い、駆け寄ろうとしたミーシャは微かに聞こえた呻き声――獣のような声に思わず身を固め、その場から動けなくなった。
「う、グッ……!」
体の節々から骨が折れるような、そんな音が聞こえる。目の前の青年の姿が変わっていく。体が膨張し、肌を晒していた部分からは黒い毛並みが生え揃い、顔は人のそれから鼻先が伸びて、大きく裂けた口からは鋭利な牙が見えていた。目まぐるしい速度で変わって行く姿に、ミーシャは呆然とするしかなかった。
――羊飼いの村に伝わる伝承がある。
それはただの言い伝えのはずだった。人は嘘を吐いて羊を盗む事がある、山を下りては羊を食い殺す狼と変わらない。狼のような人間は、普段は人に混じって人らしく笑い、人らしく過ごす。夜になると羊を盗みに来る。理性のない化け物になるのだと。確かそんな話だった。
しかし、目の前の存在は伝承そのままの姿になっている。羊飼いの誰かが持っている本に絵が描かれていたのをミーシャは思い出した。
――その絵の通り、人の骨格を残した巨大な狼がそこに居た。
曇り空もあって辺りが暗く成り始めているというのに、少女を見つめる狼の目は暗がりの中でも爛々と、金色に光っていた。蹲っていた体を起こし、四つん這いのまま歩いてくる存在を前にしてミーシャは動けなかった。それは本能的な恐怖であり、思考は追いつかない。
「あ……」
口を衝いて出たのは驚きと恐怖が混ざった震える声だった。つい先ほどまで普通に話していて、一緒に走っていた人物がいきなり獣に変わったのだから無理もない。動けない少女を前にして、目の前まで歩いて来た狼は口を開いた。
「大丈夫だ」
聞いた事のある、まるでこちらを落ち着けるような声色に、いつの間に体の震えが止まった。涙が目に膜を張ったのか、黒い体は揺らいで見えた。しかしそんなミーシャを前にしても、狼は続けた。
「いいか、お前の親父さんは絶対に俺が助ける。お前も守る。だから――今だけは信じてくれ」
その言葉に、大きく深呼吸をしたミーシャは覚悟を決めて目を一度閉じた。頬を涙が伝う。そしてもう一度目を開いた。そこに居るのが誰なのか、確かめるように。目の前にはやはり巨大な狼が、今度は立ち上がっていた。少女より二回りも大きな体だった。
――しかし理性の色を残している金色の瞳を前にして、今度こそ頷いて見せた。
「いきましょう」
――その声には確かな覚悟が籠められていた。
*
――私は死ぬのだろうか。
そんな考えが頭を過り「何を弱気な」と己を叱咤した。まだ死ぬ訳にはいかない、まだ死ぬ訳には……しかし、村に移り住んだ時から天候が変わりやすい事は分かっていたのに出かけてしまったことを、後悔せずにはいられない。
「ケェコ」
「クェッコ、ケコッ」
何体居るのか数えてはいないが、数体になる蛙の群れは執拗にラングレーを追い駆け回していた。自分が囮となり、スコットの父親は逃がす事が出来た。
しかし、足を噛み付かれてしまい、そこから痺れが回り始めているのは嫌でも気が付く。既に視界は激しい雨のせいか霞み始めていた。雷鳴も轟き、何度か雷が落ちているのが分かった。しかし自分が今どこを走っているのか、もう分からない。だがとにかく逃げなければならない――それだけは明確だった。
姿は見えないが頭上の葉っぱからは何かが移動し、枝が揺れ葉っぱ同士が擦れ合い音を立てている。
「ハァッ、ハァッ――!」
何度も何度も浅い呼吸を繰り返して、逃げ続ける。泥が傷に染みて痛んでいたというのに、疲労のせいか、それとも麻痺毒のせいか。走っていた足は引きずるようになり、徐々に足が動かなくなっていき……遂に――沼の端まで来てしまったようだ。
「はぁっ、はぁ……!」
巨大な沼が目の前に広がっている――しまった、とラングレーは血の気が引いた。
「ゲココッ」
水面に水泡と波紋が広がり、次々と白い蛙が顔を出し始める。びしゃり、と水音を立てて岸に上がって行く。木の上からも何匹もの白い蛙が飛び降りてきた。
犬ほど大きさかつ真っ白な体、姿は蛙だが後ろ足はなく、長く鋭い尾と前足の代わりに羽がある。羽には蝙蝠のようで、手はないが関節の部分を杖のように使って這いずって移動しているようだった。ラングレーを見て何かを確かめるように口を動かすと、薄っすらと細かく生え揃った牙を覗かせる。
水棲小魔獣――ウォーター・リーパー。彼らは犬のように群れで狩りをする。
そう思い出した瞬間、誘導されていたのだと気が付き――ラングレーの体からついに力が抜け落ちた。膝がぬかるんだ地面に突く。悔しさのあまり、痺れていく手は泥を掴んだ
「ミィ、シャ……!」
これから起こる恐怖の中、ラングレーは思わず最愛の娘の名を呟いた。まだまだ伝えたいことがあった。だが周りの魔物たちはようやく力尽きた獲物を皆で分け合う瞬間が来たと――最初に、ウォーター・リーパーの一匹がラングレーへと牙を向けた。
――もう駄目だと、ラングレーはキツく目を閉じた。
「ギィィッ!?」
しかし獲物に飛び掛かるはずの体は、ラングレーの予想に反して目の前で大きな氷柱へと刺し貫かれた。地面に一度叩きつけられ、跳ねた体はそのまま地面へと倒れてピクピクと何度か痙攣した後、動かなくなった。
――まさか、そんな。
信じられない気持ちでラングレーは力を振り絞り、顔を上げる。すると黒く巨大な何かに乗っている――最愛の娘の姿が、ぼやける視界の中でも見えていた。ウォーター・リーパーたちが向かってくる何かに、喉を鳴らして威嚇音を発するが何かは止まる気配がない。
そして、そのまま、何かは白い蛙たちの群れへと突っ込んで来た。
巨大な体が白い体を跳ね飛ばし、何匹かの喉を正確に裂いた。言語は違えど、蛙たちの口から次々に悲鳴が上がり始めているのが分かった。やられていく仲間を見て慌てて距離を離していく。
ラングレーの目の前に立ち塞がっているのは、巨大で、人の骨格を残した黒い狼だった。そして、その背には――
「お父さん!」
「ミ、ミーシャ……」
力尽きかけたラングレーは狼の背から下り、抱き締めてきた娘を震える手で抱き締め返した。冷たい雨に打たれていても、その温かさは今が現実のものだと教えてくれる。しかしミーシャは、父親との再会を喜ぶのも束の間、彼の耳に何かを填める。
「ミーシャ……?」
「お父さん、じっとしてて、もう大丈夫だから」
父親を落ち着けるような声に驚きながらも、ラングレーは背を向けている黒い狼へ視線を向ける。唸り声を上げ、姿勢を低くしながら蛙達に威嚇している姿――というより服装には見覚えがあった。腰には、特徴的な剣もぶら下がっている。
「まさか――」
何か言い掛けたラングレーの疑問は蛙達の金切り声で掻き消された。咄嗟にミーシャが父親の耳を押さえる。狼は一瞬だけその声に怯んだが、すぐ息を大きく吸うと――
「ウオォオオォォゥ――!!」
まるで地を揺らすように狼が吼える。金切り声を上げていた蛙達はその声に驚き、体を恐ろしさから跳ねさせ、一瞬怯んだ。
――その隙に狼が弾かれるように飛び出し、一番近い蛙達の群れへと突っ込むとその喉元へと牙を立てた。
「ゲコォッ!?」
蛙の口から発せられた驚いたような声を無視して、喉を食い破り、狼はそのままもう一匹へと食らい掛かる。群れを襲い始めた狼に対して、獲物を横取りされると踏んだのか、蛙達は矛先を襲撃者へと向けた。連携し長い舌を勢いよく飛ばし、狼の足や体へと粘着質な舌を巻き付け、動きを止めようとする。
しかし逆に舌を掴んだ狼が力を込めて引っ張ると、白い体はあっという間に浮き上がり――逆に狼の牙の餌食になった。
何匹かは力強く噛み付き離れようとはしない。だが蛙の頭を大きな手で掴んだ狼は自分の肉が千切れても構わず無理やり引き剥がすと、頭を握り潰した。さらに傷口は血が泡立つように噴き出したかと思えば、すぐに塞がる。
激しい雨に打たれながら黒い毛並みが濡れても、狼はまるでバネのように手足を動かし、次々に蛙達を牙や爪の餌食にしていった。主に蛙から飛び散った血は水と一緒に地面へと吸い込まれていく。
雨が少しずつ止んでいく。視界が晴れていくと、地面に転がるように横たわった蛙達の屍にミーシャは息を飲んだ。その凄惨とも取れる光景をただ見守るしかない。
そして数が指で数えられるほどに蛙の数が減った頃、二人の背後にある沼から大きく何かが飛び出す水音が上がった。
――現れたのは巨大な白い蛙だった。体の大きさは狼を遥かに上回る。
その体に見合った重さなのか、地面に音を立てて着地した巨大な蛙は辺りの様子――同胞達が屍となっている様子を見て――飛び出しそうな目を恨めしそうに狼へと向けた。白い蛙が一斉に巨大な蛙の方へと逃げて行く。狼はゆっくりと立ち上がった。そして、血だらけの口元を長い舌で舐めた。牙を剥くと再び唸り声を上げ、腰に差していた細身の剣――刀に手を伸ばす。
まるで飛び掛かる前のように姿勢を低くした狼に対し、蛙は大きく飛び跳ねる。
巨体にも関わらず、その体は上空へと舞い上がった。そして羽を広げてまるで攪乱させるかのように何度も旋回しながら飛び回り――そして翼を畳むと勢いよく降下してきた。
そのタイミングを見計らってか、狼も地面を蹴る。柄から、僅かに刀身が覗いた。
――大きく雷鳴が鳴り響く。雷から放たれた閃光が辺りを包み、狼の手に握られているそれが眩い光を発した。
「グ、ゲッ――」
それは一瞬だった。
巨大な蛙から小さく声が漏れた瞬間、体には斜めの赤い線が浮かび――そこから一気に鮮血が噴き出した。狼の手には血を付けた刀が握られている。
血を吹き上がらせた巨体は落下し、再び沼へと水飛沫を大きく立てて沈んでいく。今度は二度と浮かび上がらないだろう事は、段々と落ちた個所から広がって行く赤い水から分かった。蛙達が再び悲鳴を上げて一目散に逃げて行く。
地面に着地すると逃げていく蛙達、静寂が戻った沼を見回し、刀の血を服で拭い……狼が長く息を吐いた。柄に刀身を仕舞い、ゆっくりとミーシャとラングレーに振り向く。泥を跳ねさせながら歩いていくる狼を呆然としながらも見上げる二人に、目線を合わせるように屈んだ。
「――大丈夫か?」
血の滲んだ毛並みと服装……その姿に対して、声や瞳、仕草は二人を気遣うものだった。
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