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戦いでは相手の出鼻を挫くことが大切だ

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 魔物の大群⋯⋯いや、魔物の波がズーリエの街に押し寄せてくる。

「ど、どうすりゃいいんだ」
「このままじゃ魔物に殺される⋯⋯に、逃げるしか⋯⋯」
「家族が街にいるんだ! 逃げるわけにはいかねえだろ!」

 冒険者や憲兵達は膨大な数の魔物を見て恐れをなし、士気ががた落ちしていた。このまま戦えば実力を出せずに死ぬことが目に見えている。

「テッドさん⋯⋯少しここをお願いします」

 俺はそう言葉を残して門の上から街の外側へと飛び降りる。

「お、おい! ちょっと待て! どこに行くんだ!」
「少し掃除をしてきます」
「掃除? お前こんな時に何を言って⋯⋯」

 どうやらテッドに掃除の意味が伝わっていなかったようだ。それなら実際に見せることにしよう。

「クラス2旋風フウァールウインド創聖魔法ジェネシスとクラス2烈火レイジングファイア創聖魔法ジェネシス

 空中で落下しながら創聖魔法をかけて、地面に着地すると一気に魔物達の方へと駆け走る。

「は、はええ⋯⋯」
「お兄ちゃん、がんばって」

 俺はテッドやノノちゃんの言葉を背に魔物の大群へと突撃をかける。

 なるべく目立ちたくはないけどもうこの状況ではそんなことを言ってられない。本気を出さずに誰かが死んだら俺は一生後悔するだろう。
 そして俺は魔物の大群まで数百メートルとなった所で止まり、異空間からカセナギの剣を取り出す。

「いやはや、どこかで船が7分、海が3分という言葉を聞いたことがあるけどまさに目の前の光景がそれだ。魔物が7分、陸が3分だな」

 だが確かに数えられない程魔物の数は多いが近くに来てわかったこともある。
 大型の魔物はほとんどいないため、数に押されなければC~Dランクの冒険者でも対抗出来そうだ。だがそれはあくまで前線にいる魔物であり、後方にいる魔物が同じとは限らない。とにかく今は目前まで迫っている魔物を倒すことが先決だな。

 そして俺は剣を持っていない左手に魔力を込める。
 皇帝陛下には簡単に破られてしまったけどこの程度の魔物なら通用するはずだ。

「クラス5炎嵐ファイアストーム創聖魔法ジェネシス!」

 俺の手から放たれた青い炎の嵐が魔物の波に激突する。
 炎の嵐に巻き込まれた魔物達は容易く燃え尽きて行くが数が多いため、嵐は次第に弱まってしまう。
 だが俺の攻撃はこれで終わりじゃない。

 俺は右手に持ったカゼナギの剣に魔力を込め、青い炎の嵐に向かってなぎ払い叫ぶ。

「放て烈風!」

 すると剣から風の衝撃波が発生し魔物を吹き飛ばすと同時に収まりかけた青い炎の嵐が酸素を取り込み、さらに強大な炎へと生まれ変わる。

 そして炎の嵐を食らった魔物達は声にならない断末魔を上げ、灰となって消えていった。

「さあ、次はどいつだ!」

 魔物達は俺を明確に敵と認めたのかそれとも仲間の敵討ちだと考えているのか一斉にこちらへと向かってくる。

「クラス5炎嵐ファイアストーム創聖魔法ジェネシス! そして放て烈風!」

 だが青い炎の嵐が立ち塞がり、魔物達はこちらに近づくことが出来ない。

 ようやく俺が編み出した技が日の目をみることができた。皇帝陛下にはあっさり攻略されてしまったからな。
 正直な話皇帝陛下と戦った後、炎の嵐とカセナギの剣による衝撃波の組み合わせはそんなに強くないんじゃないかと疑ってしまったけどやはりそれは皇帝陛下がチートなだけだったようだ。

 そして俺はこの後3度程同じ様に炎嵐ファイアストーム創聖魔法ジェネシス!とカセナギの剣による衝撃波で魔物を倒すと前線にいた魔物達はほぼ壊滅状態となった。
 100匹弱ほど俺の攻撃からすり抜けて街の方に行ってしまったが、それはテッドや冒険者、憲兵達に任せて問題ないだろう。

 俺はひとまず安堵のため息をつくがこの時異変が起こった。
 後方にいる魔物達は何故か歩みを止め、静止していたのだ。

「どういうことだ? 魔物の本能として仲間が殺られれば怒り狂って突進してくるか恐れをなして逃げるはずだ。それかもしくは⋯⋯」

 この不可解な魔物達の行動から1つの仮説が立てられる。

「これは誰かが魔物達に指示を出しているな」

 普通なら強力なボスのような存在がいて命令していると言いたい所だがリリを取り戻すことが目的ならザガト王国の奴らが何らかの方法で魔物を操っている可能性も考えられる。

 とにかく向こうが攻めてこないなら1度みんなの所へ戻るか。MPはまだまだ余裕があるとはいえ、この後何が起こるかわからないから少しでも休んで回復させよう。

 こうして俺は魔物の第一陣とも言える部隊を蹴散らすことに成功し、南門へと戻るのであった。
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