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リリ
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俺達はシャインアップルを採取し自宅へと戻った。
そして家族全員で夕食を食べた後、さっそく今日取ったシャインアップルが食卓に並ぶ。
「ノノ、今日初めてまものを倒したんだよ!」
シャインアップルを食べながらノノちゃんは興奮気味に話をしている。
「ノノちゃんすごいわね」
「すごいのはお兄ちゃんだよ。ノノのためにあっという間に武器を作っちゃうんだもん」
「そうだね、これはノノちゃん専用の武器だから。実はこの魔法銃はもう1つ秘密があるんだ。ノノちゃん、魔法銃を貸して貰えないかな」
「はい、どうぞ」
ノノちゃんは手に持った魔法銃を俺の手の上に置く。そして念のためにクラス2烈火創聖魔法を自分にかける。
みんな何故俺が魔法を唱えたのか疑問に思っているようだ。
「母さん、ちょっとこの魔法銃を持って貰える?」
「ん? どういうこと?」
母さんは特に気にすることなく魔法銃に手を伸ばす⋯⋯が魔法銃が持ち上がることはなかった。
「えっ? お、重い。ノノちゃんってすごく力持ちなのね」
「そんなことないよ。お母さん持ち上げられないの?」
母さんが魔法銃から手を離すと俺の腕にかかっていた負担がなくなる。そして今度はノノちゃんが魔法銃を手を伸ばすが、片手で軽々と持ち上げてみせる。
「ノノちゃんすごいわ」
「ん? どういうことなの?」
そして俺は頭にはてなを浮かべているノノちゃんから魔法銃を受け取る。
「なんじゃメリスは情けないのう。どれ、わしが代わりに持ち上げてみせよう」
「本当に重いのよ。お父さんも絶対に持ち上げられないから」
「わしのパワーを舐めるなよ」
おじいちゃんが意気揚々と魔法銃に手を伸ばし触れた瞬間、一気に俺の腕に重力がのし掛かる。
「ぜえ⋯⋯ぜえ⋯⋯。なん⋯⋯じゃと⋯⋯」
おじいちゃんは力を入れすぎたの呼吸が荒くなり、目の前の現実を信じられないといった表情で見ている。
「ほら、私の言ったとおりじゃない」
「ノノちゃんが力持ちじゃったなんて。もし肩たたきを本気でやられたらわしの骨は簡単に砕けていたということか」
「ノ、ノノはそんなに力持ちじゃないよぉ」
そういえばおじいちゃんはよくノノちゃんに肩たたきをしてもらっていたな。確かにおじいちゃんが触れた状態の魔法銃を軽々と持ち上げれたらそういう結果になってもおかしくない。
「これって⋯⋯何か魔法がかかっている?」
リリナディアが魔法銃を見てポツリと言葉を漏らす。
さすが魔王の卵だけあって魔法銃にかけられている魔力を感じ取ったようだ。
「そうだね。持ち主以外が触れると重くなる魔法がかけてあって、普通に使うことが出来るのは俺とノノちゃんの2人だけだ」
「そ、そんな魔法聞いたことない」
創聖魔法で作った魔法だからリリナディアが驚くのも無理もない。もしこの銃の存在が広まれば必ず盗もうとする奴がいるからその対策としてクラス5認識創聖魔法を作製し、魔法をかけさせてもらった。ちなみにさっき母さん達が魔法銃に触れた時、たぶん200キロ程の重さになっていたので普通の人なら持ち上げることすら出来ないだろう。
「私とお兄ちゃんだけ⋯⋯素敵な響きだね」
ノノちゃんがどこか遠くを見つめ恍惚な表情を浮かべている。
だけどその気持ちはわかる。RPG系のゲームをやったことがあるなら特定の人しか装備することができない勇者専用の武器とかに1度は憧れを持ったことがあるはずだ。きっとノノちゃんも今は専用の武器に浮かれているに違いない。
「リ、リックさん⋯⋯あなたは勇者なの?」
リリナディアは珍しく真っ直ぐと俺の目を見て問いかけてくるが、その瞳にはどこか恐れを感じているように見えた。
勇者とは過去に魔王を滅ぼした者⋯⋯卵とはいえ魔王のリリナディアに取っては見過ごせるものではないのだろう。
「俺は⋯⋯俺は勇者じゃないよ」
「でも⋯⋯その力でいずれ私を⋯⋯」
「正確には勇者パーティーにいたけどそれは魔王を倒すためじゃない。それにたとえ俺が勇者になったとしても君のことは必ず護る。だからリリナディアはここで安心して暮らして行けばいい」
過去の魔王の件とザガト王国のせいでリリナディアの人族に対する信頼度は地に落ちている。しかもそのような中で人族の街で暮らせと言われても無理な話だと思う。
だけど数日ズーリエで暮らしてみてリリナディアはどう思っているのか聞いてみたい。その結果街を出るという選択肢になったら俺はリリナディアを護るためについていくだけだ。
俺の問いかけに5秒、10秒と時間が過ぎていくがリリナディアは俯いてしまい返事はない。
「⋯⋯⋯⋯リリ」
そして20秒程経った頃、リリナディアは顔を上げて小さな声で何かを呟く。
「親しい人は私のことリリって呼ぶから」
リリナディアは恥ずかしかったのか顔を赤くして再び俯いてしまう。今の言葉からするとリリナディアはこれからもここで暮らしてくれるで俺は安堵する。
「リリ⋯⋯これからもよろしく」
「ノノもよろしくね。リリお姉ちゃん」
「リリちゃんよろしくね」
そして家族みんながリリにかけより声をかけ、抱きしめたりしている。
こうしてリリとは少し打ち解けることができたが、シャインアップルを食べて元気になったかのように見えたノノちゃんは翌日以降から日に日に体調が悪くなっていくのであった。
そして家族全員で夕食を食べた後、さっそく今日取ったシャインアップルが食卓に並ぶ。
「ノノ、今日初めてまものを倒したんだよ!」
シャインアップルを食べながらノノちゃんは興奮気味に話をしている。
「ノノちゃんすごいわね」
「すごいのはお兄ちゃんだよ。ノノのためにあっという間に武器を作っちゃうんだもん」
「そうだね、これはノノちゃん専用の武器だから。実はこの魔法銃はもう1つ秘密があるんだ。ノノちゃん、魔法銃を貸して貰えないかな」
「はい、どうぞ」
ノノちゃんは手に持った魔法銃を俺の手の上に置く。そして念のためにクラス2烈火創聖魔法を自分にかける。
みんな何故俺が魔法を唱えたのか疑問に思っているようだ。
「母さん、ちょっとこの魔法銃を持って貰える?」
「ん? どういうこと?」
母さんは特に気にすることなく魔法銃に手を伸ばす⋯⋯が魔法銃が持ち上がることはなかった。
「えっ? お、重い。ノノちゃんってすごく力持ちなのね」
「そんなことないよ。お母さん持ち上げられないの?」
母さんが魔法銃から手を離すと俺の腕にかかっていた負担がなくなる。そして今度はノノちゃんが魔法銃を手を伸ばすが、片手で軽々と持ち上げてみせる。
「ノノちゃんすごいわ」
「ん? どういうことなの?」
そして俺は頭にはてなを浮かべているノノちゃんから魔法銃を受け取る。
「なんじゃメリスは情けないのう。どれ、わしが代わりに持ち上げてみせよう」
「本当に重いのよ。お父さんも絶対に持ち上げられないから」
「わしのパワーを舐めるなよ」
おじいちゃんが意気揚々と魔法銃に手を伸ばし触れた瞬間、一気に俺の腕に重力がのし掛かる。
「ぜえ⋯⋯ぜえ⋯⋯。なん⋯⋯じゃと⋯⋯」
おじいちゃんは力を入れすぎたの呼吸が荒くなり、目の前の現実を信じられないといった表情で見ている。
「ほら、私の言ったとおりじゃない」
「ノノちゃんが力持ちじゃったなんて。もし肩たたきを本気でやられたらわしの骨は簡単に砕けていたということか」
「ノ、ノノはそんなに力持ちじゃないよぉ」
そういえばおじいちゃんはよくノノちゃんに肩たたきをしてもらっていたな。確かにおじいちゃんが触れた状態の魔法銃を軽々と持ち上げれたらそういう結果になってもおかしくない。
「これって⋯⋯何か魔法がかかっている?」
リリナディアが魔法銃を見てポツリと言葉を漏らす。
さすが魔王の卵だけあって魔法銃にかけられている魔力を感じ取ったようだ。
「そうだね。持ち主以外が触れると重くなる魔法がかけてあって、普通に使うことが出来るのは俺とノノちゃんの2人だけだ」
「そ、そんな魔法聞いたことない」
創聖魔法で作った魔法だからリリナディアが驚くのも無理もない。もしこの銃の存在が広まれば必ず盗もうとする奴がいるからその対策としてクラス5認識創聖魔法を作製し、魔法をかけさせてもらった。ちなみにさっき母さん達が魔法銃に触れた時、たぶん200キロ程の重さになっていたので普通の人なら持ち上げることすら出来ないだろう。
「私とお兄ちゃんだけ⋯⋯素敵な響きだね」
ノノちゃんがどこか遠くを見つめ恍惚な表情を浮かべている。
だけどその気持ちはわかる。RPG系のゲームをやったことがあるなら特定の人しか装備することができない勇者専用の武器とかに1度は憧れを持ったことがあるはずだ。きっとノノちゃんも今は専用の武器に浮かれているに違いない。
「リ、リックさん⋯⋯あなたは勇者なの?」
リリナディアは珍しく真っ直ぐと俺の目を見て問いかけてくるが、その瞳にはどこか恐れを感じているように見えた。
勇者とは過去に魔王を滅ぼした者⋯⋯卵とはいえ魔王のリリナディアに取っては見過ごせるものではないのだろう。
「俺は⋯⋯俺は勇者じゃないよ」
「でも⋯⋯その力でいずれ私を⋯⋯」
「正確には勇者パーティーにいたけどそれは魔王を倒すためじゃない。それにたとえ俺が勇者になったとしても君のことは必ず護る。だからリリナディアはここで安心して暮らして行けばいい」
過去の魔王の件とザガト王国のせいでリリナディアの人族に対する信頼度は地に落ちている。しかもそのような中で人族の街で暮らせと言われても無理な話だと思う。
だけど数日ズーリエで暮らしてみてリリナディアはどう思っているのか聞いてみたい。その結果街を出るという選択肢になったら俺はリリナディアを護るためについていくだけだ。
俺の問いかけに5秒、10秒と時間が過ぎていくがリリナディアは俯いてしまい返事はない。
「⋯⋯⋯⋯リリ」
そして20秒程経った頃、リリナディアは顔を上げて小さな声で何かを呟く。
「親しい人は私のことリリって呼ぶから」
リリナディアは恥ずかしかったのか顔を赤くして再び俯いてしまう。今の言葉からするとリリナディアはこれからもここで暮らしてくれるで俺は安堵する。
「リリ⋯⋯これからもよろしく」
「ノノもよろしくね。リリお姉ちゃん」
「リリちゃんよろしくね」
そして家族みんながリリにかけより声をかけ、抱きしめたりしている。
こうしてリリとは少し打ち解けることができたが、シャインアップルを食べて元気になったかのように見えたノノちゃんは翌日以降から日に日に体調が悪くなっていくのであった。
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