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動乱時の皇帝
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そして時は戻りパーティー会場にて
要注意人物の二人はここにはいない。
後は無事にパーティーの終わりを待つだけだ。
それにしてもリリシアは人気者だな。
王国からの客が珍しいのか、ルドルフが去った後、あっという間に貴族達に囲まれていた。
いや、あの容姿だ。王国からとか関係なさそうだな。
とりあえず危険はなさそうだ。
まあ多少の危険があったとしても、リリシアなら一人で対処するだろう。
俺はここでの役目はないので、メイドから酒をもらう。
「旨いな。どこの地方の酒かわからないけど、グラフト産の酒に負けていない美味しさだ」
「それはベルン産の酒だぜ」
独り言を呟くが、背後からその問いに対する答えが返ってきた。
「よっ! 昨日ぶりだな」
アルドリックが気さくに手を上げて話しかけてきた。
「これはアルドリック様。昨日はお酒をご馳走していただきありがとうございます」
ここは公の場なので、俺は敬語を使って話すことにする。
「おっと⋯⋯昨日のことは口外しないでくれ。もし見つかったら親父に何を言われるか⋯⋯」
「承知しました」
皇子が街中で飲んでると知られたら、皇帝陛下に怒られるのは間違いないだろう。ここはアルドリックの言うとおりにする。
「それにしてもさっきの見せ物は痛快だったな」
アルドリックは周囲に聞こえないようにするためか、口を手で隠し呟いてきた。
「ルドルフ様の件ですか?」
俺もアルドリックに習って、口元を手で隠し喋る。
「それ以外ないだろう。兄貴もバカなことをしたものだ」
「リリシア王女の背中に火傷があるなど、偽りの情報を公の場で言うことではなかったですね」
「それなんだが、いったいどういうことだ?」
「どういうこととは?」
「信頼できる筋からの情報だと、確かにリリシア王女の背中には火傷の痕があったはずだ」
なるほど。わざわざ俺の所に来たのは、火傷の件を聞きたかったのか。
「火傷? 何のことか俺にはわかりませんね」
「本当か? ユートなら知っていると、俺の勘が告げているんだが」
おそらく根拠はないだろう。だけど相変わらず勘の鋭い奴だな。
「俺はリリシア王女と知り合って、まだ二週間も経っていませんから」
「まあそういうことにしておいてやるか。だが俺の勘の通り、ユートがただ者ではないことがわかった」
「どういうことですか?」
俺はアルドリックの指摘に驚きを隠せないが、平静を装って答える。
「兵士でもない、冒険者でもない奴が、知り合って二週間で一国の王女の護衛になれる訳がない。お前いったい何者だ?」
「リリシア王女が俺のことを気に入ってくれただけですよ」
「到底信じられないな」
余計な情報を与えすぎたか。どうやらアルドリックはこれまでの言動で、俺がどういう人物なのか興味を持ったようだ。
「まあ今は詮索するつもりはない⋯⋯今はな」
意味深な言い方をするなあ。
だけどさすがに公の場で真実を話す訳にはいかない。
アルドリックには然るべき時が来たら、全てを話す予定だ。
何故ならアルドリックは前の時間軸では俺の仲間であり、滅びた帝国を一つにまとめた人物だからだ。
平時の際ではただの酒好きの遊び人だが、非常時には調べ上げた情報から最適解を導きだし、勘が鋭く決断力もあるリーダーだった。もし世界が滅びていなかったら、間違いなくエンド・アースの王となっていただろう。
「俺はそこまで特別な人物ではありませんよ」
「そういうことにしておくか」
それにその然るべき時は、おそらく明日だと俺は思っている。だから今は余計な詮索はしないでくれると助かる。
「ルドルフ兄貴は失態を犯してしまったな。これで後継者争いから脱落だ」
「そうなんですか」
「リリシア王女も怒らせてしまったしな」
それは喜ばしいことだ。だけどさすがにハッキリ言うと不敬に取られかねないので、濁しておく。
そうなると平時のままなら、第二皇子のデレックかアルドリックのどちらかが次の皇帝か。このパーティーにはいないようだが、一応継承権はアルドリックの妹の皇女にもあるらしい。だけど女性なので帝国のトップになることはないだろう。
そういえば、アルドリックは皇帝になりたいのだろうか? 前の時間軸だと皇族はアルドリック以外全て亡くなっていたので、選択肢はなかったように見えたが。
「アルドリック様は皇帝の座に興味があるのですか?」
俺は不意に気になって問いかけてみる。
「俺は三男だからな。ルドルフ兄貴じゃないが、もし皇帝になることを目指すなら、リリシア王女との婚姻が一番手っ取り早いだろう。だが俺はその器じゃない。小国の王くらいがお似合いじゃないのか」
「そうですか」
世界の王に手をかけた者とは思えない台詞だな。
だけど表情が茶化しているように見られなかった。
何故だかわからないけど、俺には今の言葉がアルドリックの本音のように思えた。
「アルドリック、父上が呼んでいるぞ」
突然背後から声をかけられる。
振り向くとそこにはデレック皇子がいた。
「ああ、わかった。じゃあなユート」
俺はアルドリックとデレックに頭を下げると、二人はこの場を立ち去る。
第二皇子デレックか⋯⋯
デレックは責任感が強く、安定した統治を好むらしい。動乱の時代でなければ、最も皇帝に向いていそうだな。
前の時間軸では接点がほとんどなかったため、接触するのは少し慎重になってしまう。下手に親密になって俺が知っている未来を変えられると困るからな。
とにかく後はパーティーがぶじに終わるのを願うだけだ。俺は会場の端の方で、時間が過ぎるのを待つのであった。
要注意人物の二人はここにはいない。
後は無事にパーティーの終わりを待つだけだ。
それにしてもリリシアは人気者だな。
王国からの客が珍しいのか、ルドルフが去った後、あっという間に貴族達に囲まれていた。
いや、あの容姿だ。王国からとか関係なさそうだな。
とりあえず危険はなさそうだ。
まあ多少の危険があったとしても、リリシアなら一人で対処するだろう。
俺はここでの役目はないので、メイドから酒をもらう。
「旨いな。どこの地方の酒かわからないけど、グラフト産の酒に負けていない美味しさだ」
「それはベルン産の酒だぜ」
独り言を呟くが、背後からその問いに対する答えが返ってきた。
「よっ! 昨日ぶりだな」
アルドリックが気さくに手を上げて話しかけてきた。
「これはアルドリック様。昨日はお酒をご馳走していただきありがとうございます」
ここは公の場なので、俺は敬語を使って話すことにする。
「おっと⋯⋯昨日のことは口外しないでくれ。もし見つかったら親父に何を言われるか⋯⋯」
「承知しました」
皇子が街中で飲んでると知られたら、皇帝陛下に怒られるのは間違いないだろう。ここはアルドリックの言うとおりにする。
「それにしてもさっきの見せ物は痛快だったな」
アルドリックは周囲に聞こえないようにするためか、口を手で隠し呟いてきた。
「ルドルフ様の件ですか?」
俺もアルドリックに習って、口元を手で隠し喋る。
「それ以外ないだろう。兄貴もバカなことをしたものだ」
「リリシア王女の背中に火傷があるなど、偽りの情報を公の場で言うことではなかったですね」
「それなんだが、いったいどういうことだ?」
「どういうこととは?」
「信頼できる筋からの情報だと、確かにリリシア王女の背中には火傷の痕があったはずだ」
なるほど。わざわざ俺の所に来たのは、火傷の件を聞きたかったのか。
「火傷? 何のことか俺にはわかりませんね」
「本当か? ユートなら知っていると、俺の勘が告げているんだが」
おそらく根拠はないだろう。だけど相変わらず勘の鋭い奴だな。
「俺はリリシア王女と知り合って、まだ二週間も経っていませんから」
「まあそういうことにしておいてやるか。だが俺の勘の通り、ユートがただ者ではないことがわかった」
「どういうことですか?」
俺はアルドリックの指摘に驚きを隠せないが、平静を装って答える。
「兵士でもない、冒険者でもない奴が、知り合って二週間で一国の王女の護衛になれる訳がない。お前いったい何者だ?」
「リリシア王女が俺のことを気に入ってくれただけですよ」
「到底信じられないな」
余計な情報を与えすぎたか。どうやらアルドリックはこれまでの言動で、俺がどういう人物なのか興味を持ったようだ。
「まあ今は詮索するつもりはない⋯⋯今はな」
意味深な言い方をするなあ。
だけどさすがに公の場で真実を話す訳にはいかない。
アルドリックには然るべき時が来たら、全てを話す予定だ。
何故ならアルドリックは前の時間軸では俺の仲間であり、滅びた帝国を一つにまとめた人物だからだ。
平時の際ではただの酒好きの遊び人だが、非常時には調べ上げた情報から最適解を導きだし、勘が鋭く決断力もあるリーダーだった。もし世界が滅びていなかったら、間違いなくエンド・アースの王となっていただろう。
「俺はそこまで特別な人物ではありませんよ」
「そういうことにしておくか」
それにその然るべき時は、おそらく明日だと俺は思っている。だから今は余計な詮索はしないでくれると助かる。
「ルドルフ兄貴は失態を犯してしまったな。これで後継者争いから脱落だ」
「そうなんですか」
「リリシア王女も怒らせてしまったしな」
それは喜ばしいことだ。だけどさすがにハッキリ言うと不敬に取られかねないので、濁しておく。
そうなると平時のままなら、第二皇子のデレックかアルドリックのどちらかが次の皇帝か。このパーティーにはいないようだが、一応継承権はアルドリックの妹の皇女にもあるらしい。だけど女性なので帝国のトップになることはないだろう。
そういえば、アルドリックは皇帝になりたいのだろうか? 前の時間軸だと皇族はアルドリック以外全て亡くなっていたので、選択肢はなかったように見えたが。
「アルドリック様は皇帝の座に興味があるのですか?」
俺は不意に気になって問いかけてみる。
「俺は三男だからな。ルドルフ兄貴じゃないが、もし皇帝になることを目指すなら、リリシア王女との婚姻が一番手っ取り早いだろう。だが俺はその器じゃない。小国の王くらいがお似合いじゃないのか」
「そうですか」
世界の王に手をかけた者とは思えない台詞だな。
だけど表情が茶化しているように見られなかった。
何故だかわからないけど、俺には今の言葉がアルドリックの本音のように思えた。
「アルドリック、父上が呼んでいるぞ」
突然背後から声をかけられる。
振り向くとそこにはデレック皇子がいた。
「ああ、わかった。じゃあなユート」
俺はアルドリックとデレックに頭を下げると、二人はこの場を立ち去る。
第二皇子デレックか⋯⋯
デレックは責任感が強く、安定した統治を好むらしい。動乱の時代でなければ、最も皇帝に向いていそうだな。
前の時間軸では接点がほとんどなかったため、接触するのは少し慎重になってしまう。下手に親密になって俺が知っている未来を変えられると困るからな。
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