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水差しの秘密
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「綺麗な泉ですね。飲んでも大丈夫でしょうか?」
「大丈夫じゃないかな。古文書には、神殿の裏手にある水はとても美味しいと書いてあったぞ」
「本当ですか?」
リリシアは泉の水を手ですくって飲み始める。
光が射し込む森の中で、泉の水を飲む美少女⋯⋯あまりにも絵になりすぎて、思わず目を奪われてしまう。
だがそれは一瞬のことで、すぐにルルによって現実に引き戻された。
(何を考えているのですか? 今の王女を見て子作りでもしたいと思いましたか? これだから人間の雄は)
(べ、別に変なことを考えていた訳じゃない。綺麗なものに見とれるのは雄も雌も同じはずだ)
思考を読まれるのも考えものだな。しかも間違った解釈をされて冤罪をかけられたし。
(冤罪ではありません。それよりこの泉にはどのような秘密があるのですか?)
変なことを言い出したのはルルじゃないか。俺は仕返しではないが、この泉の秘密を考えないようにする。
すると突然首筋に痛みが走った。
(こ、この猫⋯⋯噛みついてきたぞ。こうなったら絶対に泉の秘密を教えてやらない)
(セレスティア様の神獣である私に逆らうのですか? では全てを切り裂く私の牙を、もう一度食らいなさい)
だがその全てを切り裂く牙が、俺の首に食い込むことはなかった。
「フニャッ!」
ルルの猫っぽい声が周囲に響き渡る。どうやらリリシアがルルを抱き上げたようだ。
「ルルちゃん噛んだらダメですよ」
「ニャ、ニャー⋯⋯」
(た、助けて下さい!)
ルルが心の叫びで救出を求めている。
だが誰が噛みついてきた猫を助けるものか。
「ルルちゃんもお水を飲みますか? 美味しいですよ。それに気のせいかも知れませんが、身体の中の良くないものを綺麗にしてくれているように感じます」
さすがリリシアだ。この泉の水はセレスティア様の祝福を受けているから、ただの水ではない。
(セ、セレスティア様の祝福ですか!? 仕方ありませんね。私も飲んであげましょう)
ルルはセレスティア様の祝福があるとわかると、一心不乱に泉の水を飲み始める。
お腹が冷えて痛くなっても知らないぞ。
しかし俺の心の声はルルには届いていなかった。
「それじゃあリリシア。手を出してもらってもいいかな?」
「こうですか?」
俺は手に持った水差しを傾ける。
すると水が出て来て、リリシアの手を濡らす。
「えっ? ユート様は泉の水を汲んでいませんよね?」
「これがこの水差しの秘密なんだ。飲んでもらってもいい?」
「わ、わかりました」
リリシアは驚きながらも、水差しから出た水を口に含む。
「美味しいです。それと私の勘違いでなければ、この泉と同じ味だと思うのですが」
「リリシアは良い舌を持っているね。実はこの水差しは泉と繋がっていて、ほぼ無限に水を出すことが出きるんだ」
「すごいです⋯⋯これは旅をする時に重宝されますね」
まあ普通ならリリシアのように考えるのが普通だ。だけど俺は違う使い道も考えている。しかしそれには準備が必要なため、今はまだその時ではない。
「それじゃあそろそろ帰ろうか」
「そうですね。日が暮れる前に街へ戻りましょう」
俺達は来た道を引き返し、ヴォラリヒトの街へと向かう。その際にリリシアは何度も手に入れた剣を眺めたり、素振りをしていた。どうやら剣を気に入ってくれたようだ。
そして夕方前にザインが待っている宿屋へと到着するのであった。
「大丈夫じゃないかな。古文書には、神殿の裏手にある水はとても美味しいと書いてあったぞ」
「本当ですか?」
リリシアは泉の水を手ですくって飲み始める。
光が射し込む森の中で、泉の水を飲む美少女⋯⋯あまりにも絵になりすぎて、思わず目を奪われてしまう。
だがそれは一瞬のことで、すぐにルルによって現実に引き戻された。
(何を考えているのですか? 今の王女を見て子作りでもしたいと思いましたか? これだから人間の雄は)
(べ、別に変なことを考えていた訳じゃない。綺麗なものに見とれるのは雄も雌も同じはずだ)
思考を読まれるのも考えものだな。しかも間違った解釈をされて冤罪をかけられたし。
(冤罪ではありません。それよりこの泉にはどのような秘密があるのですか?)
変なことを言い出したのはルルじゃないか。俺は仕返しではないが、この泉の秘密を考えないようにする。
すると突然首筋に痛みが走った。
(こ、この猫⋯⋯噛みついてきたぞ。こうなったら絶対に泉の秘密を教えてやらない)
(セレスティア様の神獣である私に逆らうのですか? では全てを切り裂く私の牙を、もう一度食らいなさい)
だがその全てを切り裂く牙が、俺の首に食い込むことはなかった。
「フニャッ!」
ルルの猫っぽい声が周囲に響き渡る。どうやらリリシアがルルを抱き上げたようだ。
「ルルちゃん噛んだらダメですよ」
「ニャ、ニャー⋯⋯」
(た、助けて下さい!)
ルルが心の叫びで救出を求めている。
だが誰が噛みついてきた猫を助けるものか。
「ルルちゃんもお水を飲みますか? 美味しいですよ。それに気のせいかも知れませんが、身体の中の良くないものを綺麗にしてくれているように感じます」
さすがリリシアだ。この泉の水はセレスティア様の祝福を受けているから、ただの水ではない。
(セ、セレスティア様の祝福ですか!? 仕方ありませんね。私も飲んであげましょう)
ルルはセレスティア様の祝福があるとわかると、一心不乱に泉の水を飲み始める。
お腹が冷えて痛くなっても知らないぞ。
しかし俺の心の声はルルには届いていなかった。
「それじゃあリリシア。手を出してもらってもいいかな?」
「こうですか?」
俺は手に持った水差しを傾ける。
すると水が出て来て、リリシアの手を濡らす。
「えっ? ユート様は泉の水を汲んでいませんよね?」
「これがこの水差しの秘密なんだ。飲んでもらってもいい?」
「わ、わかりました」
リリシアは驚きながらも、水差しから出た水を口に含む。
「美味しいです。それと私の勘違いでなければ、この泉と同じ味だと思うのですが」
「リリシアは良い舌を持っているね。実はこの水差しは泉と繋がっていて、ほぼ無限に水を出すことが出きるんだ」
「すごいです⋯⋯これは旅をする時に重宝されますね」
まあ普通ならリリシアのように考えるのが普通だ。だけど俺は違う使い道も考えている。しかしそれには準備が必要なため、今はまだその時ではない。
「それじゃあそろそろ帰ろうか」
「そうですね。日が暮れる前に街へ戻りましょう」
俺達は来た道を引き返し、ヴォラリヒトの街へと向かう。その際にリリシアは何度も手に入れた剣を眺めたり、素振りをしていた。どうやら剣を気に入ってくれたようだ。
そして夕方前にザインが待っている宿屋へと到着するのであった。
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