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女神の加護
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神殿の中に入るとそこには広い空間があり、中心部には祭壇が設置されていた。
「あっ!ユート様」
先に神殿に入っていたリリシアが俺達に気づき、駆け寄ってくる。
「ここには誰もいませんね。人の気配が感じられないです」
「迷いの森には霧がかかっているから、人が来ることはないと思う」
「ユート様は何故この場所を知ることが出来たのですか?」
「偶然見つけた古文書に書いてあったんだ」
これは嘘ではない。滅びたフリーデン王国の城から見つけたんだ。三年後だけどね。
「そしてこれには秘密があって⋯⋯」
祭壇に手を置くと突如周囲が輝き始める。
「この光はなんでしょうか! 眩しくて目を開けていられません!」
「ニャーッ!」
二人は叫び声を上げると同時に、俺の首に抱きついてきた。
(ちょっと何をしたのですか! 目を開けたら王女と二人だけとかやめて下さいね!)
もうそのネタはいいから。これだけ言われると、逆に二人だけにしてほしいと、催促されているのではと考えたくなる。
(わかりました。もう言いません。それだけは絶対に止めて下さい)
どうやらルルは本気で嫌がっているようだ。このネタはやめた方がいいな。
そして光が収まり、ゆっくりと目を開ける。
「いったい何が⋯⋯これは⋯⋯」
リリシアは祭壇に視線を向けると、先程までなかった物に気づいたようだ。そこには三振りの剣といくつかの水差しが置いてあった。
「どういうことでしょうか? 祭壇の上には何もなかったはずです」
「古文書には祭壇に手を乗せると、古の時代で使用した神の祝福が得られると書いてあった。たぶんこの武器と水差しがそうなのだろう」
(概ね合っているけど嘘をついていますね?)
(ルルの考えているとおりだ。神の加護を持った者が祭壇に手を置くと、これらのアイテムが得られることになっている)
だから実質これも霧の時と同じ、俺とルルだけが可能なことだと言える。
祭壇に置いてある剣はそれぞれ形容が異なり、全長七十センチ程のショートソード、全長一メートル程のロングソード、そして二つと比べて剣身が細いエストックだった。
「この祭壇にある武器や水差しは、どこか神々しさを感じます」
リリシアはうっとりとした様子で、武器を眺めている。
その気持ちはわからないでもない。
俺も初めて見た時は、心奪われたのを今でも覚えている。
そして俺は祭壇にあるエストックを手に取る。そしてリリシアへ手渡した。
「これはリリシアが使うのがいいんじゃないか」
「この剣を⋯⋯私が⋯⋯」
「今持っている剣と形状が似ているし、問題なく扱えるんじゃないかな」
「わかりました⋯⋯ありがとうございます」
リリシアが剣を持ち、天高く掲げる。そしてその場で刺突を放った。
気のせいかもしれないけど、その刺突は先日俺と戦った時より鋭く感じた。
「不思議な剣です。まるで長年使っていたかのように手に馴染んでいます」
「それは良かった」
「そちらの二本の剣はどうされるのですか? 一本はユート様がお使いになるのですか?」
「俺はこのロングソードを使わせてもらうよ」
「でしたらもう一本はザインさんが? ですが⋯⋯」
リリシアが懸念を示す。同じ剣でも形状が異なれば、扱いも異なる。格下の相手ならいいが同等、もしくは格上の者と戦う時、馴染んだ剣でないとそれが致命的になるのは言うまでもない。だが⋯⋯
「ザインは今ロングソードを使ってるけど器用な奴だから、ショートソードも上手く扱えると思う」
何に適正があるかなんて本人にもわかっていないことが多い。ただ少し先の未来から来た俺は、当時仲間がどのような戦い方をしていたか知っているので、その方向へと導くだけだ。
「なるほど。それとこの水差しは何に使うのでしょうか? お茶を入れる容器にちょうどいいかもしれませんね」
「古文書によると、この水差しにはすごい能力が眠っていると書いてあった」
「す、すごい能力ですか?」
「ああ。それを説明するためには、神殿の裏手に来てもらってもいいかな」
「わかりました! 水差しに隠された能力が何か、すごく気になります!」
リリシアは笑顔を浮かべ、とても楽しそうだ。王女様は退屈な日常を過ごしていそうだから、こういう刺激的なことに餓えているのかもしれない。
「ユート様、早く来て下さ~い」
俺は前を行くリリシアに急かされて、神殿の裏手に回る。
するとそこには、清んだ水が湧いている小さな泉があるのだった。
「あっ!ユート様」
先に神殿に入っていたリリシアが俺達に気づき、駆け寄ってくる。
「ここには誰もいませんね。人の気配が感じられないです」
「迷いの森には霧がかかっているから、人が来ることはないと思う」
「ユート様は何故この場所を知ることが出来たのですか?」
「偶然見つけた古文書に書いてあったんだ」
これは嘘ではない。滅びたフリーデン王国の城から見つけたんだ。三年後だけどね。
「そしてこれには秘密があって⋯⋯」
祭壇に手を置くと突如周囲が輝き始める。
「この光はなんでしょうか! 眩しくて目を開けていられません!」
「ニャーッ!」
二人は叫び声を上げると同時に、俺の首に抱きついてきた。
(ちょっと何をしたのですか! 目を開けたら王女と二人だけとかやめて下さいね!)
もうそのネタはいいから。これだけ言われると、逆に二人だけにしてほしいと、催促されているのではと考えたくなる。
(わかりました。もう言いません。それだけは絶対に止めて下さい)
どうやらルルは本気で嫌がっているようだ。このネタはやめた方がいいな。
そして光が収まり、ゆっくりと目を開ける。
「いったい何が⋯⋯これは⋯⋯」
リリシアは祭壇に視線を向けると、先程までなかった物に気づいたようだ。そこには三振りの剣といくつかの水差しが置いてあった。
「どういうことでしょうか? 祭壇の上には何もなかったはずです」
「古文書には祭壇に手を乗せると、古の時代で使用した神の祝福が得られると書いてあった。たぶんこの武器と水差しがそうなのだろう」
(概ね合っているけど嘘をついていますね?)
(ルルの考えているとおりだ。神の加護を持った者が祭壇に手を置くと、これらのアイテムが得られることになっている)
だから実質これも霧の時と同じ、俺とルルだけが可能なことだと言える。
祭壇に置いてある剣はそれぞれ形容が異なり、全長七十センチ程のショートソード、全長一メートル程のロングソード、そして二つと比べて剣身が細いエストックだった。
「この祭壇にある武器や水差しは、どこか神々しさを感じます」
リリシアはうっとりとした様子で、武器を眺めている。
その気持ちはわからないでもない。
俺も初めて見た時は、心奪われたのを今でも覚えている。
そして俺は祭壇にあるエストックを手に取る。そしてリリシアへ手渡した。
「これはリリシアが使うのがいいんじゃないか」
「この剣を⋯⋯私が⋯⋯」
「今持っている剣と形状が似ているし、問題なく扱えるんじゃないかな」
「わかりました⋯⋯ありがとうございます」
リリシアが剣を持ち、天高く掲げる。そしてその場で刺突を放った。
気のせいかもしれないけど、その刺突は先日俺と戦った時より鋭く感じた。
「不思議な剣です。まるで長年使っていたかのように手に馴染んでいます」
「それは良かった」
「そちらの二本の剣はどうされるのですか? 一本はユート様がお使いになるのですか?」
「俺はこのロングソードを使わせてもらうよ」
「でしたらもう一本はザインさんが? ですが⋯⋯」
リリシアが懸念を示す。同じ剣でも形状が異なれば、扱いも異なる。格下の相手ならいいが同等、もしくは格上の者と戦う時、馴染んだ剣でないとそれが致命的になるのは言うまでもない。だが⋯⋯
「ザインは今ロングソードを使ってるけど器用な奴だから、ショートソードも上手く扱えると思う」
何に適正があるかなんて本人にもわかっていないことが多い。ただ少し先の未来から来た俺は、当時仲間がどのような戦い方をしていたか知っているので、その方向へと導くだけだ。
「なるほど。それとこの水差しは何に使うのでしょうか? お茶を入れる容器にちょうどいいかもしれませんね」
「古文書によると、この水差しにはすごい能力が眠っていると書いてあった」
「す、すごい能力ですか?」
「ああ。それを説明するためには、神殿の裏手に来てもらってもいいかな」
「わかりました! 水差しに隠された能力が何か、すごく気になります!」
リリシアは笑顔を浮かべ、とても楽しそうだ。王女様は退屈な日常を過ごしていそうだから、こういう刺激的なことに餓えているのかもしれない。
「ユート様、早く来て下さ~い」
俺は前を行くリリシアに急かされて、神殿の裏手に回る。
するとそこには、清んだ水が湧いている小さな泉があるのだった。
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