24 / 49
女神の加護
しおりを挟む
神殿の中に入るとそこには広い空間があり、中心部には祭壇が設置されていた。
「あっ!ユート様」
先に神殿に入っていたリリシアが俺達に気づき、駆け寄ってくる。
「ここには誰もいませんね。人の気配が感じられないです」
「迷いの森には霧がかかっているから、人が来ることはないと思う」
「ユート様は何故この場所を知ることが出来たのですか?」
「偶然見つけた古文書に書いてあったんだ」
これは嘘ではない。滅びたフリーデン王国の城から見つけたんだ。三年後だけどね。
「そしてこれには秘密があって⋯⋯」
祭壇に手を置くと突如周囲が輝き始める。
「この光はなんでしょうか! 眩しくて目を開けていられません!」
「ニャーッ!」
二人は叫び声を上げると同時に、俺の首に抱きついてきた。
(ちょっと何をしたのですか! 目を開けたら王女と二人だけとかやめて下さいね!)
もうそのネタはいいから。これだけ言われると、逆に二人だけにしてほしいと、催促されているのではと考えたくなる。
(わかりました。もう言いません。それだけは絶対に止めて下さい)
どうやらルルは本気で嫌がっているようだ。このネタはやめた方がいいな。
そして光が収まり、ゆっくりと目を開ける。
「いったい何が⋯⋯これは⋯⋯」
リリシアは祭壇に視線を向けると、先程までなかった物に気づいたようだ。そこには三振りの剣といくつかの水差しが置いてあった。
「どういうことでしょうか? 祭壇の上には何もなかったはずです」
「古文書には祭壇に手を乗せると、古の時代で使用した神の祝福が得られると書いてあった。たぶんこの武器と水差しがそうなのだろう」
(概ね合っているけど嘘をついていますね?)
(ルルの考えているとおりだ。神の加護を持った者が祭壇に手を置くと、これらのアイテムが得られることになっている)
だから実質これも霧の時と同じ、俺とルルだけが可能なことだと言える。
祭壇に置いてある剣はそれぞれ形容が異なり、全長七十センチ程のショートソード、全長一メートル程のロングソード、そして二つと比べて剣身が細いエストックだった。
「この祭壇にある武器や水差しは、どこか神々しさを感じます」
リリシアはうっとりとした様子で、武器を眺めている。
その気持ちはわからないでもない。
俺も初めて見た時は、心奪われたのを今でも覚えている。
そして俺は祭壇にあるエストックを手に取る。そしてリリシアへ手渡した。
「これはリリシアが使うのがいいんじゃないか」
「この剣を⋯⋯私が⋯⋯」
「今持っている剣と形状が似ているし、問題なく扱えるんじゃないかな」
「わかりました⋯⋯ありがとうございます」
リリシアが剣を持ち、天高く掲げる。そしてその場で刺突を放った。
気のせいかもしれないけど、その刺突は先日俺と戦った時より鋭く感じた。
「不思議な剣です。まるで長年使っていたかのように手に馴染んでいます」
「それは良かった」
「そちらの二本の剣はどうされるのですか? 一本はユート様がお使いになるのですか?」
「俺はこのロングソードを使わせてもらうよ」
「でしたらもう一本はザインさんが? ですが⋯⋯」
リリシアが懸念を示す。同じ剣でも形状が異なれば、扱いも異なる。格下の相手ならいいが同等、もしくは格上の者と戦う時、馴染んだ剣でないとそれが致命的になるのは言うまでもない。だが⋯⋯
「ザインは今ロングソードを使ってるけど器用な奴だから、ショートソードも上手く扱えると思う」
何に適正があるかなんて本人にもわかっていないことが多い。ただ少し先の未来から来た俺は、当時仲間がどのような戦い方をしていたか知っているので、その方向へと導くだけだ。
「なるほど。それとこの水差しは何に使うのでしょうか? お茶を入れる容器にちょうどいいかもしれませんね」
「古文書によると、この水差しにはすごい能力が眠っていると書いてあった」
「す、すごい能力ですか?」
「ああ。それを説明するためには、神殿の裏手に来てもらってもいいかな」
「わかりました! 水差しに隠された能力が何か、すごく気になります!」
リリシアは笑顔を浮かべ、とても楽しそうだ。王女様は退屈な日常を過ごしていそうだから、こういう刺激的なことに餓えているのかもしれない。
「ユート様、早く来て下さ~い」
俺は前を行くリリシアに急かされて、神殿の裏手に回る。
するとそこには、清んだ水が湧いている小さな泉があるのだった。
「あっ!ユート様」
先に神殿に入っていたリリシアが俺達に気づき、駆け寄ってくる。
「ここには誰もいませんね。人の気配が感じられないです」
「迷いの森には霧がかかっているから、人が来ることはないと思う」
「ユート様は何故この場所を知ることが出来たのですか?」
「偶然見つけた古文書に書いてあったんだ」
これは嘘ではない。滅びたフリーデン王国の城から見つけたんだ。三年後だけどね。
「そしてこれには秘密があって⋯⋯」
祭壇に手を置くと突如周囲が輝き始める。
「この光はなんでしょうか! 眩しくて目を開けていられません!」
「ニャーッ!」
二人は叫び声を上げると同時に、俺の首に抱きついてきた。
(ちょっと何をしたのですか! 目を開けたら王女と二人だけとかやめて下さいね!)
もうそのネタはいいから。これだけ言われると、逆に二人だけにしてほしいと、催促されているのではと考えたくなる。
(わかりました。もう言いません。それだけは絶対に止めて下さい)
どうやらルルは本気で嫌がっているようだ。このネタはやめた方がいいな。
そして光が収まり、ゆっくりと目を開ける。
「いったい何が⋯⋯これは⋯⋯」
リリシアは祭壇に視線を向けると、先程までなかった物に気づいたようだ。そこには三振りの剣といくつかの水差しが置いてあった。
「どういうことでしょうか? 祭壇の上には何もなかったはずです」
「古文書には祭壇に手を乗せると、古の時代で使用した神の祝福が得られると書いてあった。たぶんこの武器と水差しがそうなのだろう」
(概ね合っているけど嘘をついていますね?)
(ルルの考えているとおりだ。神の加護を持った者が祭壇に手を置くと、これらのアイテムが得られることになっている)
だから実質これも霧の時と同じ、俺とルルだけが可能なことだと言える。
祭壇に置いてある剣はそれぞれ形容が異なり、全長七十センチ程のショートソード、全長一メートル程のロングソード、そして二つと比べて剣身が細いエストックだった。
「この祭壇にある武器や水差しは、どこか神々しさを感じます」
リリシアはうっとりとした様子で、武器を眺めている。
その気持ちはわからないでもない。
俺も初めて見た時は、心奪われたのを今でも覚えている。
そして俺は祭壇にあるエストックを手に取る。そしてリリシアへ手渡した。
「これはリリシアが使うのがいいんじゃないか」
「この剣を⋯⋯私が⋯⋯」
「今持っている剣と形状が似ているし、問題なく扱えるんじゃないかな」
「わかりました⋯⋯ありがとうございます」
リリシアが剣を持ち、天高く掲げる。そしてその場で刺突を放った。
気のせいかもしれないけど、その刺突は先日俺と戦った時より鋭く感じた。
「不思議な剣です。まるで長年使っていたかのように手に馴染んでいます」
「それは良かった」
「そちらの二本の剣はどうされるのですか? 一本はユート様がお使いになるのですか?」
「俺はこのロングソードを使わせてもらうよ」
「でしたらもう一本はザインさんが? ですが⋯⋯」
リリシアが懸念を示す。同じ剣でも形状が異なれば、扱いも異なる。格下の相手ならいいが同等、もしくは格上の者と戦う時、馴染んだ剣でないとそれが致命的になるのは言うまでもない。だが⋯⋯
「ザインは今ロングソードを使ってるけど器用な奴だから、ショートソードも上手く扱えると思う」
何に適正があるかなんて本人にもわかっていないことが多い。ただ少し先の未来から来た俺は、当時仲間がどのような戦い方をしていたか知っているので、その方向へと導くだけだ。
「なるほど。それとこの水差しは何に使うのでしょうか? お茶を入れる容器にちょうどいいかもしれませんね」
「古文書によると、この水差しにはすごい能力が眠っていると書いてあった」
「す、すごい能力ですか?」
「ああ。それを説明するためには、神殿の裏手に来てもらってもいいかな」
「わかりました! 水差しに隠された能力が何か、すごく気になります!」
リリシアは笑顔を浮かべ、とても楽しそうだ。王女様は退屈な日常を過ごしていそうだから、こういう刺激的なことに餓えているのかもしれない。
「ユート様、早く来て下さ~い」
俺は前を行くリリシアに急かされて、神殿の裏手に回る。
するとそこには、清んだ水が湧いている小さな泉があるのだった。
10
お気に入りに追加
84
あなたにおすすめの小説

貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!
やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり
目覚めると20歳無職だった主人公。
転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。
”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。
これではまともな生活ができない。
――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう!
こうして彼の転生生活が幕を開けた。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第三章フェレスト王国エルフ編

異世界転生漫遊記
しょう
ファンタジー
ブラック企業で働いていた主人公は
体を壊し亡くなってしまった。
それを哀れんだ神の手によって
主人公は異世界に転生することに
前世の失敗を繰り返さないように
今度は自由に楽しく生きていこうと
決める
主人公が転生した世界は
魔物が闊歩する世界!
それを知った主人公は幼い頃から
努力し続け、剣と魔法を習得する!
初めての作品です!
よろしくお願いします!
感想よろしくお願いします!

悪役貴族に転生した俺は悪逆非道の限りを尽くす
美鈴
ファンタジー
酷いイジメを受けていた主人公大杉静夜(おおすぎせいや)。日に日にイジメは酷くなっていった。ある日いつものように呼び出された静夜は仕方無く呼び出された場所向かう。それが自分の最後とは知らずに…
カクヨム様にも投稿しておりますが内容が異なります

ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~
むらくも航
ファンタジー
Fランク探索者の『彦根ホシ』は、幼馴染のダンジョン配信に助っ人として参加する。
配信は順調に進むが、二人はトラップによって誰も討伐したことのないSランク魔物がいる階層へ飛ばされてしまう。
誰もが生還を諦めたその時、Fランク探索者のはずのホシが立ち上がり、撮れ高を気にしながら余裕でSランク魔物をボコボコにしてしまう。
そんなホシは、ぼそっと一言。
「うちのペット達の方が手応えあるかな」
それからホシが配信を始めると、彼の自宅に映る最強の魔物たち・超希少アイテムに世間はひっくり返り、バズりにバズっていく──。
☆10/25からは、毎日18時に更新予定!
転生したら男女逆転世界
美鈴
ファンタジー
階段から落ちたら見知らぬ場所にいた僕。名前は覚えてるけど名字は分からない。年齢は多分15歳だと思うけど…。えっ…男性警護官!?って、何?男性が少ないって!?男性が襲われる危険がある!?そんな事言われても…。えっ…君が助けてくれるの?じゃあお願いします!って感じで始まっていく物語…。
※カクヨム様にも掲載しております
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる