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とんでもない褒賞

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  「ユートにピッタリの褒賞を思いつきました」
「おお! それは何か教えてくないか」

 レッケ騎士団長が思いついた俺への褒賞か。何だか嫌な予感がするのは気のせいだろうか。
 そしてその予感は見事に的中する。

「長年我が国で不在になっていた軍の最高司令、元帥の地位などどうでしょうか?」
「えっ!」

 この人とんでもないことを言ってきたな。やはり信用出来ないぞ。

「国王陛下と王妃様を救出した作戦は見事でした。そしてフレスヴェルグを一人で倒す実力者⋯⋯ユートのためにある地位だと思いませんか?」
「それはいい! ではユートには元帥の地位を授けよう」
「いや、ちょっと待って」
「どうだユート。元帥といえば軍で憧れの地位だ。私に感謝してくれてもいいぞ。ガーッハッハッハ!」

 この人達俺の話を聞いてないよ。
 まずいぞ。このままだと本当に元帥にされてしまう。そんな面倒くさい地位なんていらないよ。

「二人とも落ち着きなさい! ユートくんは嫌がっているのがわからないの?」
「お、王妃様⋯⋯」

 さすがリズの母親である王妃様だ。国王陛下とレッケさんの暴走を止められるのはあなたしかいない。

「あなた、ちゃんとユートくんのことを考えて褒賞を決めてあげて。望まない褒賞を国王に押しつけられるなんて可哀想よ」
「はい⋯⋯すみません」
「そしてレッケ騎士団長。あなたの願望をユートくんに押しつけるのはやめなさい」
「わ、わかりました。申し訳ありません」

 見事にこの場を収めてしまった。何だか王家の力関係を見た気がする。
 王妃様⋯⋯俺はあなたに着いていきます。
 俺の中の王妃様への信頼度が爆上がりした。これからもし二人が暴走したら王妃様を頼るとしよう。

「それでユートくん。実は私もユートくんへの褒賞を思いついたの。聞いてくれる?」
「はい」

 王妃様はレッケさんと違って常識人っぽいし、きっと良い案を出してくれるだろう。
 俺は期待の眼差しを王妃様へと向ける。
 だがその期待は間違いだったとすぐに気づいてしまう。むしろ王妃様の方がレッケさんの案より酷かった。

「ユートくん、将来ムーンガーデン王国の王様にならない?」

 えっ?  王様? 俺が? この人はなにを言ってるんだろうか。開いた口が塞がらないぞ。
 それは俺だけじゃなく、他の人も同じだった。

「お、お母様⋯⋯何を仰っているのですか?」
「リズは黙ってなさい。全てはあなたのためよ」
「私のため?」

 全く意味がわからないぞ。何故俺が王様になるとリズのためになるんだ?

「王妃よ。さすがにそれは無茶ではないか?」
「私も国王陛下の仰る通りだと思います」

 良かった。おかしいと思っているのは俺だけじゃなかった。
 まともだと思っていた王妃様が、一番ぶっとんだ考えを持っている人だとは思わなかった。
 とにかく王妃様の提案を断るとしよう。

「確かに突然ユートくんが王位を継承することは出来ないわ。クーデターでも起こさない限りね」
「ま、まさかユートはクーデターを起こして、私の王位を奪うつもりなのか!」
「そんなことしません!」

 とんでもないことを言ってくるな。勝手に俺を反逆者にしないでほしい。

「はあ⋯⋯やれやれだわ」

 王妃様は呆れているのかため息をついていた。
 ため息ををつきたいのはこっちの方なんだが。

「ユートくんが王位を継ぐ方法ならもう一つあるじゃない」

 そんな方法あるのか? 俺以外の人達もわかっていないように見える。
 だがこの後王妃様は、さらにとんでもないことを口にし始めた。
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