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二人だけの秘密?

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「ふう⋯⋯これで終わったな」

 俺は疲労感が身体を襲ってきたため、その場に座り地面に寝っ転がる。
 国王陛下と王妃様を救出してリスティヒとグラザムを捕縛し、フレスヴェルグを倒すことが出来た。任務達成だ。
 それにしても神聖魔法ってヤバい魔法だな。
 以前から精霊魔法と比べて強いなと思っていたけど、Sランクの魔物を一撃で倒せるとは思わなかった。
 セレスティア様もとんでもないものを授けてくれたものだ。
 神聖魔法の使い方に関しては、ちょっと考えた方がいいかもしれない。
 けどそのことは後にして、今はこれから始まるスローライフに胸をときめかせることにしよう。

「ユート様~」

 リズが満面の笑みを浮かべながら駆け寄ってきた。
 俺はリズを迎えるため立ち上がり、手を広げる。
 するとリズは胸に飛び込んできたので、そのまま抱きしめた。

「お身体は大丈夫ですか?」
「大丈夫⋯⋯と言いたい所だけど、さすがにちょっと疲れたな」
「それではすぐに城で休めるよう手配致します」
「ありがと」

 リズを抱きしめていると、ようやく全てが終わったんだと実感してきたな。もしかしたらこの手の中にあるものを守れなかったかもしれないと思うとゾッとする。リズを導いてくれたセレスティア様には本当に感謝だ。

「ユート様がお疲れなのも無理もありません。あの伝説の魔物であるフレスヴェルグを倒したのですから」

 リズは興奮した様子で語りかけてくる。
 まあ無理もないか。自分で言うのもなんだけど、ムーンガーデン王国の初代国王が封印した魔物を倒してしまったんだ。
 子孫であるリズには何か思う所があるのかもしれない。

「ムーンガーデン王国では初代国王がフレスヴェルグを封印した話は誰もが知っています。そのフレスヴェルグを倒したユート様は、英雄として迎えられるでしょう」

 英雄か。その称号には誰もが憧れる所だけど⋯⋯

「え~と⋯⋯そのことだけど。フレスヴェルグの件はなかったことに出来ないか?」
「えっ? どうしてですか!」
「たぶん目撃者はいないと思うし、俺の魔法は少々特殊だから。それに俺は英雄になりたい訳じゃない」
「そう⋯⋯ですか。ユート様がそう仰られるのなら」

 リズは言葉では納得していても表情では納得していないって感じだな。

「だから今起きたことは二人だけの秘密だ」
「ふ、二人だけの秘密ですか⋯⋯わかりました。命に変えてもこのことは誰にも話しません」
「いや、命がかかってたら話してもいいから」

 真面目なリズらしい回答に、俺は苦笑してしまう。

「とりあえずグラザムを連れて、城に戻ろうか。リズも早く国王陛下と王妃様に会いたいだろ?」
「はい」

 こうしてリズの口止めが成功し、俺はグラザムを連行するために縄で縛りつけようとしたが⋯⋯

「リズリット王女! ユート!」

 突如大きな声が聞こえると、西門の方からレッケさんが猛スピードで走ってきた。

「も、もしかしてあの化物を倒したのか!? 巨大な光の球が化物を消滅させるのを見て、慌てて戻ってきたんだが」

 俺とリズはレッケさんの様子を見て顔を見合わす。

「いきなり二人だけの秘密じゃなくなったな」
「そうですね。レッケ騎士団長には後でお仕置きせよとセレスティア様も仰っています」

 セレスティア様がそんなことを言うのか? もしかしてリズは自分の意見を押し通すために、セレスティア様の名前を使ってるんじゃないか? そんな疑問が頭に過ったが確認する方法はない。
 とにかくレッケさんにもフレスヴェルグを倒したことを口止めしとかないとな。俺はレッケさんに事情を説明して、このことを誰にも話さないようお願いするのであった。

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