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6話 策略 その2
しおりを挟む玄関先では既に、ラーデュイ様や御者、護衛の方々が立っていらっしゃった。出迎えているのはメイド達なので、お父様とお母様は不在みたいね。
私とシャルカの二人は、ラーデュイ様に深々とした挨拶をし、すぐに近くの応接室へとお迎えする。
「急に訪ねてしまって申し訳なかったな、セリナ嬢よ」
「いえ、とんでもないことでございます、ラーデュイ様。いつでも来ていただけるよう、準備をしておりました」
嘘も方便と言えばいいのかしら? この辺りは決まり文句のようなものね、おそらくラーデュイ様も分かっていると思うわ。
「驚きました……ラーデュイ様がいらっしゃるなんて。姉からは、例の一件で助けていただいたと聞いております。姉を助けていただいて、本当にありがとうございました!」
気さくな雰囲気を絶やさないシャルカは、ラーデュイ様に対しても明るく振る舞っている。こういう雰囲気に騙された貴族は多いとかなんとか……。
「セリナ嬢の妹のシャルカ嬢だな? 助けただなんてとんでもない。たまたま、通り過ぎただけに過ぎないよ」
「いえ、ラーデュイ様、それはご謙遜でございますわ……私も本当に感謝しております」
「いやいや、参ったな……二人の令嬢からそのように言われては、これ以上、否定しては失礼に値しそうだ」
流石はラーデュイ様といったところかしら? 私やシャルカの言葉に対する受け止め具合が絶妙と言える。少しだけ引いてからろいうのも、位の高い貴族らしくないわ。
通常は、アルトファ様のような態度でもおかしくはないのに……私の中でのラーデュイ様の印象が上がった一幕だった。
「そちらのシャルカ嬢だが……」
「はい! なんでございましょうか?」
話題は変わったようだけれど、相変わらず明るい受け答えのシャルカにラーデュイ様も、自然と笑みがこぼれていた。むむむむ……あれ? なんだか、いけない感情が芽生えてしまったような……。
「シャルカ嬢、貴殿はアルトファ・セネガリー侯爵に結婚の申し出を受けたのではないかな?」
「あ、もう既にラーデュイ公爵にもお話しが行ってましたか。その通りですっ」
「なるほど……上位貴族に一早く、話が向かったようだ。まだ、ほとんどの者が知らないだろうがな」
それはそうか……アルトファ様は腐っても侯爵の立場。ラーデュイ様を始めとした方々には、婚約が決まりそうになれば、連絡くらいするわよね。
「シャルカ嬢と言えば、気さくで明るく、ルックスも良いという噂が絶えない。それに対して、裏では尻軽だの色々言われているようだな」
「そうみたいですね、まあどうでもいいですけど。というか、私まだ15歳ですよ? 流石に尻軽になる年齢ではないと思いますけど……」
「平民たちの間では15歳以下でも身体を売らないと生きて行けない者達が居るようだ」
「あ、そうなんですね……」
明るく振る舞っていたシャルカだけれど、急に大人しくなった。彼女は感受性が強く優しい一面も持っているので、特に驚かないけど。
「ああ、済まない。特に貴殿を責めているとかそういうことではない。私が言いたいのは、尻軽が良いなどという理由でセリナ情と婚約破棄をし、シャルカ嬢に乗り換えたアルトファは許せない、ということだ」
「ラーデュイ様……」
私はラーデュイ様のお言葉に感動を抑えられないでいた。単純にそんなことを言ってくれるのも嬉しいけれど、妹のシャルカへの配慮についても感動している。
そして、シャルカは物凄い勢いで首を縦に振っていた……なにか、良からぬことを思い付いた表情ね……。
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