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7話 策略 その3
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「流石はラーデュイ様です! そうですとも! 姉さまに対する仕打ち……私は絶対に許せません!」
シャルカは首を勢いよく振りながら言葉を発していた。気持ちは嬉しいんだけれど、おそらくツバがラーデュイ様に飛んでいるわ……落ち着きなさい、シャルカ。
「許せない、か……。その気持ちは分からないでもないが、何か策略を考えているのか? こういうことは言いたくはないが、貴殿たちは伯爵家だ。侯爵であるアルトファ・セネガリーに何かすることは難しいだろう」
私はラーデュイ様の言葉に黙ってしまう……確かに、この国での階級差というものは大きい。伯爵家と侯爵家ではそこそこの差があるとさえ言える。
「議会に婚約破棄の事実を告げて、慰謝料やその他を搾り取るという方法は如何でしょうか?」
「アルトファは議会の議員もある。婚約破棄という事実と暴言だけで、罪に問うをいうのは難しいだろう」
「やっぱりですか……なら、私が婚約を受けるというのはどうでしょうか?」
「婚約を? シャルカが?」
「はい、姉さま。私がアルトファとの婚約を受けるんです」
確かにそれは、自然な流れな気がするけれど……シャルカの狙いがイマイチ理解出来ていなかった。
「婚約記念パーティを利用するということか……」
「はい! その通りです!」
シャルカは明るい口調で言ったけれど、その表情は物凄く怪しかった。確かに王国内の貴族は、婚約記念パーティを開くことが多いけれど……。
「なるほど、確かにそれは面白いかもしれない……シャルカ嬢、アルトファとの婚約は受け入れる方向で頼む。それから……」
「はい、パーティ内で破棄すればいいんですよね?」
「ええっ!?」
いつの間にか、話しはトントン拍子に進んでいた。具体的なことは言わないラーデュイ様とシャルカだったけれど、なんとなく伝わっているみたい……。いえ、私にも説明してほしいんだけど……。
「まあ、細かいことは、私に任せておいてくれればいい。私としても、貴族内の不正や横暴根絶に利用出来るかと思われるしな。それになにより……」
「ラーデュイ様……?」
その時、ラーデュイ様は私の瞳を真っすぐに見つめていた。私はその眼差しに吸い込まれそうになる。
「セリナ嬢の無念が晴らせるだろう」
「ラーデュイ様……」
駄目だわ……また、涙が出て来そうになっている。ラーデュイ様の言葉で安心し、全てを任せたい気持ちにもなっていた。
「あ~~~ごほん、ごほん。本日は熱い日ですね」
「えっ? そうでもないでしょ?」
突然、シャルカが咳ばらいをして私達を睨み出していた。今日って、熱いかしら……?
「ラーデュイ様、姉さま? 本日は晴天にございます。少し、庭園を散歩されては如何でしょうか?」
「な、なによ、突然……」
意味が分からない……シャルカは一体、何が言いたいの? ラーデュイ様は笑みを零していたので、ある程度、察知しているようだけれど……。
「それもそうだな。良ければセリナ嬢、少し歩かないか?」
「えっ……? は、はい……ラーデュイ様がよろしければ、ご一緒させていただきます……」
ラーデュイ様ってそう言えば未婚だったっけ……私と一緒に歩いても問題ないのかしら? 私はよく分からないまま、彼と屋敷内の庭園を歩くことになった。内心、嬉しい気持ちを抱えながら。
シャルカは首を勢いよく振りながら言葉を発していた。気持ちは嬉しいんだけれど、おそらくツバがラーデュイ様に飛んでいるわ……落ち着きなさい、シャルカ。
「許せない、か……。その気持ちは分からないでもないが、何か策略を考えているのか? こういうことは言いたくはないが、貴殿たちは伯爵家だ。侯爵であるアルトファ・セネガリーに何かすることは難しいだろう」
私はラーデュイ様の言葉に黙ってしまう……確かに、この国での階級差というものは大きい。伯爵家と侯爵家ではそこそこの差があるとさえ言える。
「議会に婚約破棄の事実を告げて、慰謝料やその他を搾り取るという方法は如何でしょうか?」
「アルトファは議会の議員もある。婚約破棄という事実と暴言だけで、罪に問うをいうのは難しいだろう」
「やっぱりですか……なら、私が婚約を受けるというのはどうでしょうか?」
「婚約を? シャルカが?」
「はい、姉さま。私がアルトファとの婚約を受けるんです」
確かにそれは、自然な流れな気がするけれど……シャルカの狙いがイマイチ理解出来ていなかった。
「婚約記念パーティを利用するということか……」
「はい! その通りです!」
シャルカは明るい口調で言ったけれど、その表情は物凄く怪しかった。確かに王国内の貴族は、婚約記念パーティを開くことが多いけれど……。
「なるほど、確かにそれは面白いかもしれない……シャルカ嬢、アルトファとの婚約は受け入れる方向で頼む。それから……」
「はい、パーティ内で破棄すればいいんですよね?」
「ええっ!?」
いつの間にか、話しはトントン拍子に進んでいた。具体的なことは言わないラーデュイ様とシャルカだったけれど、なんとなく伝わっているみたい……。いえ、私にも説明してほしいんだけど……。
「まあ、細かいことは、私に任せておいてくれればいい。私としても、貴族内の不正や横暴根絶に利用出来るかと思われるしな。それになにより……」
「ラーデュイ様……?」
その時、ラーデュイ様は私の瞳を真っすぐに見つめていた。私はその眼差しに吸い込まれそうになる。
「セリナ嬢の無念が晴らせるだろう」
「ラーデュイ様……」
駄目だわ……また、涙が出て来そうになっている。ラーデュイ様の言葉で安心し、全てを任せたい気持ちにもなっていた。
「あ~~~ごほん、ごほん。本日は熱い日ですね」
「えっ? そうでもないでしょ?」
突然、シャルカが咳ばらいをして私達を睨み出していた。今日って、熱いかしら……?
「ラーデュイ様、姉さま? 本日は晴天にございます。少し、庭園を散歩されては如何でしょうか?」
「な、なによ、突然……」
意味が分からない……シャルカは一体、何が言いたいの? ラーデュイ様は笑みを零していたので、ある程度、察知しているようだけれど……。
「それもそうだな。良ければセリナ嬢、少し歩かないか?」
「えっ……? は、はい……ラーデュイ様がよろしければ、ご一緒させていただきます……」
ラーデュイ様ってそう言えば未婚だったっけ……私と一緒に歩いても問題ないのかしら? 私はよく分からないまま、彼と屋敷内の庭園を歩くことになった。内心、嬉しい気持ちを抱えながら。
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