侯爵令息から婚約破棄されたけど、王太子殿下から婚約の申し出がありました!

安奈

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8話 怒りのハルト その1

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「お、王太子殿下……!? な、なぜここに……!?」


 突然のハルト様の登場。そして、あまりにタイミングの良い登場に驚きを隠せなかった。

「シエル、君のピンチとなれば、私はどこにでも駆け付けると言っただろ?」

「それはお聞きしたと思いますが……御多忙のハルト様が、なぜ貴族街に? いえ、それよりもこのタイミングは……」


 登場自体よりも、「タイミングの良い」登場に私は一番驚いていた。それにはシグマとアンナの二人も同じような感想を抱いているようで、さっきから開いた口が塞がっていない。

「種明かしをすると簡単なことだ。君の別宅に泊めてもらっていたんだよ。メルレーンさんという人が居ただろう? 彼女に頼んでね」

「そ、そのようなことが……しかし、なぜ……?」

 ハルト様が昨日も私と同じ屋敷にいらっしゃった……それだけでも驚きだけど、それ以上に秘密裏に隠れていたなんて……ますます意図が見えてこないし。


「理由は簡単だ。シエルが再び、ブリーテンの者やホプキンスの者に逆恨みで攻撃されないようにするためだよ。念の為の措置だったが、功を奏したようだ」

「は、ハルト様……」

 功を奏したどころじゃない。私からしてみれば、再びの白馬の王子様からの救いの手だ。しかも今回は、完全に私を想って待機してくれていた。ウソ、なんだか信じられないわ……ハルト王太子殿下がここまでしてくれるなんて。


────


「さて、シグマ・ブリーテン、アンナ・ホプキンス……シエルに何をさせようとしていた?」

「い、いえ……な、なにも……」

「ん? 私には土下座をさせようとしていたように見えたんだが」

「あれは冗談ですよ……貴族同士のお遊びみたいなものです……」

「そうか……冗談か」

「は、はい……冗談です」


 意外にも冷静に対応している王太子殿下。シグマは怯え切っているけれど、なんとか冗談ということで乗り切ろうとしている。流石に無理があると思うんだけれど……。


「土下座が、冗談か……冗談……」

「ハルト様……?」


 その時だった、ハルト様の声色が明らかに変わったのは……。低い唸り声のようにも聞こえる。そして、しばらくの沈黙が流れた後……。



「笑止!! 断じて笑えんわぁぁぁぁぁ!!」

「ひ、ひい……!!」


 貴族街全域に広がる勢いで、ハルト王太子殿下の大声がこだました。こんなハルト様を見るのは初めてのこと……。私も後ろで縮み上がってしまう。

「本来、市民の規範にならねばならぬ貴族が、土下座などという冗談とは何たることだ!! これは明らかなるシエルへの逆恨み! 先日のパーティでの一件と合わせ、厳格なる罰が下るものと覚悟いたせ!」


「は、はい! 申し訳ありませんでした!!」


 最早、シグマもアンナも何も言い返すことは出来ない。ハルト様の前に跪き、土下座をしてみせていた。
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