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20話 男同士の会話 その1

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 もしかして、殴り合いの喧嘩でも勃発しているのではないか……メイサとシルからは、そんな不穏な考えまで言われていた。流石にそれはないと思ったけれど、ライジング公爵とお父様が何を話しているのはかとても気になってしまう。

 秘密裏に聞きに行きたいところではあるけれど、それではお父様たちがやっていたことと同じことをしてしまうわけだし……私はその衝動をぐっと堪えていた。


「殴り合いの喧嘩はないしても……本当に、どういう会話をされているのかしら?」

「確か、オルスト伯爵って平民出身の出世コースに乗った人なんでしょ? あの変な方便からは想像しにくいけれど……そんな人と、ライジング公爵との会話なら聞いておきたいっていうのは、あるかもね」


「まあ、確かに……」


 二人の会話は本当に気になるところではあるけれど……うう、さっき決めた決意が揺らぎそうだわ。


「よし、では聞きに行こうよ!」


 シルが元気いっぱいにそう言った。……この子は何を言っているのかしら?


「何を言っているのよ……もう」

「だって、オルスト伯爵に後を付けられて、デート監視されていたのよ? なら、一回くらい仕返しとして、会話を盗み聞きしてもバチは当たらないと思わない?」

「……」


 メイサもうんうんと頷いている。……この子たちの面の厚さには呆れるのを通り越して感心しているわ。私もこのくらい無神経というかメンタル面を強くすれば、婚約破棄とかにも耐えられたのかもね。

 でもまあ……私がそれをする分には、確かにバチは当たらないかもね……。


「……二人も付いてくるの?」

「当たり前でしょ、いいじゃない別に」

「親友じゃない、私達」


 ……本当にとても良い親友を持ったわ……。なんていうか、地の果てまででも親友で居てくれそな二人ね。私は頭を抱えながらも、メイサとシルを引き連れて、店を後にした。



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 お父様とライジング公爵の居場所はすぐに発見することができた。寿司のお店の裏側辺りで話していたからだ。


「ライジング公爵に話すのは初めてかもしれませんなぁ……」

「ああ、そのようですね。あなたが平民の出の貴族という話は、確かに知りませんでしたよ。噂ではそういう者が居る程度には聞いておりましたが」


 私達は二人の会話に聞き耳を立てているのだけれど、意外にも真面目な話をしているようだった。


「それだけに、心配でもあったんですよ……元平民の娘とか、差別されるんやないかとね」

「オルスト伯爵……心中、お察しいたします……」


 ……ええと、聞き耳を立てるのが失礼な会話に発展しそうなんだけれど……大丈夫かしら?
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