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タルパと夜に泣く。
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清太郎の部屋のベッド。
そこで仰向けに寝そべる清太郎の上に重なり抱きついて甘える。
胸に耳を当て心音と呼吸の動きを感じているとえも言われぬ安心感を得られた。
私はポツポツと思い付くままにこれまでの自分の事を話した。
時系列も飛び飛びで、事実も感情もごちゃ混の支離滅裂で。
清太郎がどこまで理解してくれたのかは不明だけれど、玄関では吐き出しきれなかった想いを吐露し続けた。
もしかしたら清太郎は聞きたくない話もあったのかもしれない。
影山百合子だった時の私も、あの日大志と試そうとした事も。
それでも躊躇い言い淀む私に「全部吐き出せ。俺はタルパなんだから。」と清太郎は微笑んでくれた。
自重を感じなくなるくらい力が抜けていく。
これが本当の安らぎなんだ。
私の頭を撫でていた清太郎が優しい声で言う。
「なあ、名前付けてよ。イイ感じの呼び易いやつ。何でも良いから。」
私は察せずに疑問を口にした。
「何の名前?」
「タルパの時の俺の名前。」
「ああ…。」
暫く考える。
自分が名前を貰った時は手毬花からとってアナベルだと言われたけれど。
正直ダサいと思っていた。
そして自分もセンスのある名前なんてとても考えつかなくて。
「……せいたろう…。」
「ええ…?」
清太郎は困り声で弱く笑った。
「まんまじゃねぇか。タルパと俺が曖昧になっちゃうぞ。」
「でも…」
私は知っている。
名前なんていくつ用意したって曖昧になるんだって事を。
例えきちんと考えて名付けて貰っていたって。
ちゃんとその名で呼ばれていたって。
結局は心も身体も一つなのだからどれだけキャラを付け演じていてもその時に受けた痛みは私の物になった。
それと同時に喜びも私の物にはなったけれど、どこか他人とシェアしているような引っ掛かりがあり、嬉しい事だけ何故か独り占め出来ない。
別の人格に自分の出来ない事を押し付け、そして周囲を欺いている罪悪感だって常に付き纏うし。
私の為に別人になるだなんていう馬鹿げた行為を清太郎にはさせたくない。
「清太郎が良い。」
イヤイヤと首を振り駄々を捏ねる。
「えー…」
「清太郎じゃなきゃ嫌だ!」
「うーん、でも…」
「清太郎が良いよぉ…。」
べそをかきながら上目遣いに見上げると清太郎は目に見えて狼狽え出す。
ゴクッと唾を飲む音が聞こえ喉仏が上下したのが見えた。
きっと今可愛いって思ってくれたんだろうなと何となく分かる。
こんなあざとく甘える行動、町田手毬の時には誰にだってした事はない。
だけど良いんだ。
今清太郎は私のタルパなのだから。
そんな戯言を真剣に信じているわけではないけれど、先に私がタルパとして清太郎の恥ずかしい所まで見せて貰っているからこそ私も初めて町田手毬のままでもベタベタに甘える事が出来る。
「せいたろう?」
名を呼び首を傾げると清太郎は目の色を変えた。
身体を反転させ私の上に覆い被さり目をじっと見詰めてくる。
「愛してる。」
そう囁いてくれた。
自然と近付く顔と顔。
唇がふにっと触れて離れる。
苦しい程に胸が締まって。
もっと欲しい。
目をじっと見詰めた。
全身の毛穴から何かが吹き出すのではないかと思うくらいに湧き上がる幸福感。
沢山キスしたいのに、ずっと顔も見ていたくて。
ウズウズとじっとしていられないのに、身動きも出来なくて。
初めての感覚に怖くなって涙が滲む。
ずっと一緒に居たい。
隙間なくくっつきたい。
もう居なくならないで…。
「好き…」
震える声で訴えた。
清太郎の胸元に縋り付き懇願する。
「好きだから…、清太郎だけだから…。もう居なくならないで…。」
「…はぁ…っ」
清太郎は苦しそうに一度息を吐くと、噛み締めるように何度も頷いていた。
そして潤ませた目で私を見詰め「好きだ…」と呟く。
もうこれ以上ないと思っていたのにまだ腹の底から湧き上がる幸福感。
私は手を伸ばし清太郎の顔を引き寄せた。
互いに顔を傾け口を合わせる。
そのまま何度も深くキスをする。
酸欠で何も考えられなくなって。
震える瞼をギュッときつく閉じると涙が零れた。
ゴリッ
不意にお腹の辺りに何か触れる。
「ごめん…。」
バツが悪そうに腰を引く清太郎。
私は少しでも離れたのが寂しくて。
強く抱き寄せ無理矢理また身体を密着させた。
そして「しないの?」と誘う。
「いやー、…だって…。大丈夫なのか?」
そうだ、今私はアナでも影山百合子でもない。
ほんの一瞬だけ大志を傷付けてしまった日を思い出した。
正直自分でも大丈夫なのかどうかの確証はないけれど。
「分かんない…」
「ふっ、分かんないのかよ。」
弱く笑われた。
その反応が何だか仕方ないなと子供扱いしているようで悔しくて。
私はいじけて返す。
「分かんないけど…。分かんないけど、どうにかしてよ。」
「ええ…?」
「だって、もうするしかないくらい好きなんだもん。」
息を飲む音がした。
そして次の瞬間にギュッと力強く抱き締められる。
「はあーっ、もう、んっとにさぁ…。」
伸し掛る身体。
清太郎の匂い。
心地好い重さにもっと甘えたくなる。
「なあー、もう、何でそんな急に可愛くなんの?」
表情は見えないけれど苛立っている声が響く。
私は抱き返し煽るように言い返した。
「だってもう良い子しなくて良いんでしょ?全部吐き出して良いって言った。そしたら好きなのいっぱい出ちゃうよ…」
「あー、もー無理だって。これ以上は俺タルパ出来なくなるから勘弁して。」
「しなくていい。」
「は?」
「タルパしなくていいから。」
両手で清太郎の顔を掴みぼやける程近くから目を見詰める。
「清太郎がいい。」
途端に豹変する清太郎の顔色。
キツく睨み吐き捨てる。
「はーっ…。もう、知らねえからな。」
ゾクゾクっと背筋が震えた。
そこで仰向けに寝そべる清太郎の上に重なり抱きついて甘える。
胸に耳を当て心音と呼吸の動きを感じているとえも言われぬ安心感を得られた。
私はポツポツと思い付くままにこれまでの自分の事を話した。
時系列も飛び飛びで、事実も感情もごちゃ混の支離滅裂で。
清太郎がどこまで理解してくれたのかは不明だけれど、玄関では吐き出しきれなかった想いを吐露し続けた。
もしかしたら清太郎は聞きたくない話もあったのかもしれない。
影山百合子だった時の私も、あの日大志と試そうとした事も。
それでも躊躇い言い淀む私に「全部吐き出せ。俺はタルパなんだから。」と清太郎は微笑んでくれた。
自重を感じなくなるくらい力が抜けていく。
これが本当の安らぎなんだ。
私の頭を撫でていた清太郎が優しい声で言う。
「なあ、名前付けてよ。イイ感じの呼び易いやつ。何でも良いから。」
私は察せずに疑問を口にした。
「何の名前?」
「タルパの時の俺の名前。」
「ああ…。」
暫く考える。
自分が名前を貰った時は手毬花からとってアナベルだと言われたけれど。
正直ダサいと思っていた。
そして自分もセンスのある名前なんてとても考えつかなくて。
「……せいたろう…。」
「ええ…?」
清太郎は困り声で弱く笑った。
「まんまじゃねぇか。タルパと俺が曖昧になっちゃうぞ。」
「でも…」
私は知っている。
名前なんていくつ用意したって曖昧になるんだって事を。
例えきちんと考えて名付けて貰っていたって。
ちゃんとその名で呼ばれていたって。
結局は心も身体も一つなのだからどれだけキャラを付け演じていてもその時に受けた痛みは私の物になった。
それと同時に喜びも私の物にはなったけれど、どこか他人とシェアしているような引っ掛かりがあり、嬉しい事だけ何故か独り占め出来ない。
別の人格に自分の出来ない事を押し付け、そして周囲を欺いている罪悪感だって常に付き纏うし。
私の為に別人になるだなんていう馬鹿げた行為を清太郎にはさせたくない。
「清太郎が良い。」
イヤイヤと首を振り駄々を捏ねる。
「えー…」
「清太郎じゃなきゃ嫌だ!」
「うーん、でも…」
「清太郎が良いよぉ…。」
べそをかきながら上目遣いに見上げると清太郎は目に見えて狼狽え出す。
ゴクッと唾を飲む音が聞こえ喉仏が上下したのが見えた。
きっと今可愛いって思ってくれたんだろうなと何となく分かる。
こんなあざとく甘える行動、町田手毬の時には誰にだってした事はない。
だけど良いんだ。
今清太郎は私のタルパなのだから。
そんな戯言を真剣に信じているわけではないけれど、先に私がタルパとして清太郎の恥ずかしい所まで見せて貰っているからこそ私も初めて町田手毬のままでもベタベタに甘える事が出来る。
「せいたろう?」
名を呼び首を傾げると清太郎は目の色を変えた。
身体を反転させ私の上に覆い被さり目をじっと見詰めてくる。
「愛してる。」
そう囁いてくれた。
自然と近付く顔と顔。
唇がふにっと触れて離れる。
苦しい程に胸が締まって。
もっと欲しい。
目をじっと見詰めた。
全身の毛穴から何かが吹き出すのではないかと思うくらいに湧き上がる幸福感。
沢山キスしたいのに、ずっと顔も見ていたくて。
ウズウズとじっとしていられないのに、身動きも出来なくて。
初めての感覚に怖くなって涙が滲む。
ずっと一緒に居たい。
隙間なくくっつきたい。
もう居なくならないで…。
「好き…」
震える声で訴えた。
清太郎の胸元に縋り付き懇願する。
「好きだから…、清太郎だけだから…。もう居なくならないで…。」
「…はぁ…っ」
清太郎は苦しそうに一度息を吐くと、噛み締めるように何度も頷いていた。
そして潤ませた目で私を見詰め「好きだ…」と呟く。
もうこれ以上ないと思っていたのにまだ腹の底から湧き上がる幸福感。
私は手を伸ばし清太郎の顔を引き寄せた。
互いに顔を傾け口を合わせる。
そのまま何度も深くキスをする。
酸欠で何も考えられなくなって。
震える瞼をギュッときつく閉じると涙が零れた。
ゴリッ
不意にお腹の辺りに何か触れる。
「ごめん…。」
バツが悪そうに腰を引く清太郎。
私は少しでも離れたのが寂しくて。
強く抱き寄せ無理矢理また身体を密着させた。
そして「しないの?」と誘う。
「いやー、…だって…。大丈夫なのか?」
そうだ、今私はアナでも影山百合子でもない。
ほんの一瞬だけ大志を傷付けてしまった日を思い出した。
正直自分でも大丈夫なのかどうかの確証はないけれど。
「分かんない…」
「ふっ、分かんないのかよ。」
弱く笑われた。
その反応が何だか仕方ないなと子供扱いしているようで悔しくて。
私はいじけて返す。
「分かんないけど…。分かんないけど、どうにかしてよ。」
「ええ…?」
「だって、もうするしかないくらい好きなんだもん。」
息を飲む音がした。
そして次の瞬間にギュッと力強く抱き締められる。
「はあーっ、もう、んっとにさぁ…。」
伸し掛る身体。
清太郎の匂い。
心地好い重さにもっと甘えたくなる。
「なあー、もう、何でそんな急に可愛くなんの?」
表情は見えないけれど苛立っている声が響く。
私は抱き返し煽るように言い返した。
「だってもう良い子しなくて良いんでしょ?全部吐き出して良いって言った。そしたら好きなのいっぱい出ちゃうよ…」
「あー、もー無理だって。これ以上は俺タルパ出来なくなるから勘弁して。」
「しなくていい。」
「は?」
「タルパしなくていいから。」
両手で清太郎の顔を掴みぼやける程近くから目を見詰める。
「清太郎がいい。」
途端に豹変する清太郎の顔色。
キツく睨み吐き捨てる。
「はーっ…。もう、知らねえからな。」
ゾクゾクっと背筋が震えた。
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