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第十八章 ふしぎの海のユーリ
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私を海に誘ったシェラさんは、私の了承を得た後の
行動が異常に素早かった。
訪問の日程は花火が上がるという週末に合わせて
直近の週末三日間での休暇をリオン様へすぐに申請
した。
護衛をする騎士さんを先にリオネルへ送り出して
滞在先の環境を整えさせたのは勿論だし、その
騎士さん達には立派な馬車も帯同させていて、
リオネルに着くと私が借りる邸宅に住んでいる
貴族をそれに乗せ折り返しで王都へと招いた。
馬車で来たその人達は私がリオネルのお屋敷を借りて
いる間は、シェラさんが手配した王都を訪れる他国の
貴族や身分の高い人が滞在する豪華な迎賓館で過ごす
らしい。
当然私がリオネルから帰って来てその人達が自分の
邸宅へ帰る時も行きと同じ立派な馬車だし、邸宅を
貸したことへの謝礼も出る。
至れり尽くせりだ。お屋敷を借りるから厚遇するのは
分かるけど、その滞在費や往復の馬車代とかは一体
どこから出てるの?
まさか国のお金じゃないよね、と念のためシェラさん
に確かめてみれば
「王都での滞在先である迎賓館の用意については
リオン殿下のお力添えをいただきました。ですが
それ以外の資金面はすべてオレの個人資産からの
持ち出しですね。」
と簡単に言われた。そんな大金を使わせたなんて
申し訳ない、それになんでシェラさんはそんなに
お金を持っているんだろう?と不思議に思えば、
「いつ如何なる時でもユーリ様に貢げるように投資や
不労所得で資産は確保してあります。それにオレには
幸運の女神がついておりますので、黙っていても資産
は増える一方なのですよ。」
と微笑まれた。不労所得って、元の世界で言うところ
の家賃収入とかの不動産収入的なやつ?
いつのまにシェラさんはそんな不動産経営みたいな
事まで手を広げていたんだ。しかも私が
「真っ当に働いたお金なら何の問題もないですけど」
と言ったら、
「当然です。この先騎士を辞めてユーリ様のお側に
いつもいる事になれば収入源がなくなりますからね。
そうなったら素敵なドレスや装飾品が買えなくなり
ます。そうならないためにもそれに備えて今から
資産運用をしているんですよ。」
と将来の展望を語られた。
「え、やっぱり退職を目標にしてるんですか⁉︎」
「働いた方が良いですか?それがお望みなら、
商団でも立ち上げて代表でも務めましょうかねぇ。
在宅勤務で部下に指示だけ与えればいつもユーリ様
のお側にいられますし。」
ふむ、と考え込まれたけどどうあってもシェラさんの
人生設計の基本は私の隣から離れずいることが前提に
なっているらしい。
そんな風にシェラさんと話していたらシグウェルさん
がリオン様と現れた。
「もう準備はすっかり整っているようだな」
私とシェラさんを見てシグウェルさんは頷く。
そう。私は今シェラさんと一緒に、リオネルへ移動
するために奥の院の一室に設けてもらった魔法陣の
上にいた。
いよいよ出発の日で、シグウェルさん待ちだった
のだ。ちなみにエル君とシンシアさんは一足先に
ユリウスさんが魔法陣で連れて行ってくれている。
「レジナスも、気を付けて楽しんでくるように
ユーリへ伝えて欲しいと僕に頼んでいたよ」
リオン様がそう言って私の髪を撫でた。わざわざ
仕事の合間に抜け出して見送りに来てくれたらしい。
ちなみに下着がどうのと言う話はその話題を誤魔化
されたあの日以来タイミングを見失っていまだに
話せていない。
それを聞いたシグウェルさんには案の定、まあ
そうなるだろうと思っていたとやっぱり馬鹿にされた
ように笑われてしまったのが悔しい。
「今回は休暇だからね。なるべくユーリが力を
使わなくてもいいように、補助代わりにこれを
持っていって。」
そう言ったリオン様が撫でていた私の横髪にパチンと
何かを留めた。
触って確かめれば、何か丸いものがついている
髪留めだった。
「大きい姿の時のユーリが泣いて出来たあの真珠の
ような石だよ。それにはユーリの力が込められて
いるでしょう?何かあったらまずそれから優先的に
使って、自分自身の力はあまり使わないようにね。」
なるほど、疲れを取ってのんびりするための休暇だ。
自分の力を使って疲れてしまったら元も子もないから
もし私の力を使う必要があればまずこれに込められて
いる力の方から使えということか。
ありがたく持たせてもらおう。元はと言えば私の
パンツが脱げそうになって泣いたという情けない
理由から出来た物だけど。
その後もリオン様には海辺で暑いからと言ってあまり
冷たいものを飲み過ぎないようにだとかいくら魔法で
防護されていても夜は窓を開け放さずにきちんと鍵を
掛けて寝るようにだとかの注意をされた。
今回は護衛も侍女の数も少ないから余計に心配
らしい。
そんなリオン様にさすがにシグウェルさんも呆れた
のか、しまいには
「そろそろ行くぞユーリ。殿下ももう戻らなければ
レジナスが仕事を捌き切れなくなる頃では?」
そう言って手を差し出された。
「君はまだ魔法陣での移動に慣れていないから俺と
手を繋げ。」
素直に私もその手を取る。
そしてシグウェルさんに手を引かれ、魔法陣の
真ん中へと移動しながら「行って来ますね!」と
リオン様にも手を振った。
するとリオン様が
「ちょっと待ってユーリ」
となぜか引き止める。
「はい?」
「それほどたいした距離もない移動でなんでそんな
手の繋ぎ方をするわけ⁉︎」
じっと私とシグウェルさんの繋いだ手を見ている。
「手の繋ぎ方?」
「僕と手を繋ぐ時はそんな風にすることはないよね」
何の話だろうかと繋いだ手を見れば、しっかりと
指を絡めた恋人繋ぎだ。
これか!そういえば初めてシグウェルさんの手を
取った時って星の砂に加護をつけるために恋人繋ぎに
したんだった。
確かそれからシグウェルさんの中では私と手を繋ぐ
時はこれがデフォルトになっていた。
「手を繋ぐとはこうするのだと俺はユーリに教わり
ましたが。初めて手を繋いだ時からこうですが、
何か違いますか?」
わざとなんだか本当にそう思っているのか分からない
ことをシグウェルさんは言う。
・・・澄ました顔がちょっと面白そうな目の光を
たたえているからわざとなのかも知れない。
「ユーリ、君ねぇ・・・!」
さっきまで心配そうに私を見つめていたリオン様の
目があっという間に非難がましくなってしまった。
「ごっ、誤解ですよ!これには訳があって・・・!」
まるで浮気の言い訳だ。シェラさんまで、
「ユーリ様、オレともまだそんな風に手を繋いで
くださったことはありませんよね?それがユーリ様
のお望みならば、これからはオレもそのように手を
繋ぎますので。」
と言い出した。ええ・・・?
余計なことを、とシグウェルさんを見上げれば
「伴侶は平等だと言うからな、今気付いてもらえて
良かったじゃないか。これからは君と手を繋ぐ時は
皆が俺と同じ形になるから公平だ。俺だけ抜けがけを
していると思われるのもアレだしな」
と繋いだ手をぎゅうっと握られる。
今度からいつどこで誰が見ていようともリオン様達
四人と手を繋ぐ時にはもれなく恋人繋ぎをすること
になってしまった。
繋いだシグウェルさんの手はいつも通りひんやりと
冷たいのに、私の顔はみるみる熱を持つ。
「良くないですよ、恥ずかしいです!」
と言えば
「要は慣れの問題だ。俺への謝礼にしょっちゅう
口付けていれば口付けにも慣れるのと同じだ」
とまた問題発言をされた。
いや、それこそ慣れないしこの先も何かあれば
それを要求するつもり⁉︎
そしてそんなシグウェルさんの言葉に、
「謝礼に口付けてそれに慣れるってどういう意味
なのユーリ!」
とまたリオン様が声を上げた。
だけどシグウェルさんはそんなリオン様に、
「では行ってまいります。ユーリのことはおまかせ
ください」
ニヤリと笑って礼をするとパチンと指を弾いた。
魔法陣からは光が溢れて周りの景色が色を変えて
いく。その中で、
「ちょっとシグウェル⁉︎やっぱり心配しかないよ!」
と言うリオン様の声もかき消えていった。
・・・もしかするとリオン様が一番心配しているのは
少ない護衛で滞在するリオネルの治安や私の粗忽さ
じゃなくて、シグウェルさんやシェラさんの事なの
かも知れない。
リオン様の最後に聞こえてきた声で、その時初めて
私はそれに気付いたのだった。
行動が異常に素早かった。
訪問の日程は花火が上がるという週末に合わせて
直近の週末三日間での休暇をリオン様へすぐに申請
した。
護衛をする騎士さんを先にリオネルへ送り出して
滞在先の環境を整えさせたのは勿論だし、その
騎士さん達には立派な馬車も帯同させていて、
リオネルに着くと私が借りる邸宅に住んでいる
貴族をそれに乗せ折り返しで王都へと招いた。
馬車で来たその人達は私がリオネルのお屋敷を借りて
いる間は、シェラさんが手配した王都を訪れる他国の
貴族や身分の高い人が滞在する豪華な迎賓館で過ごす
らしい。
当然私がリオネルから帰って来てその人達が自分の
邸宅へ帰る時も行きと同じ立派な馬車だし、邸宅を
貸したことへの謝礼も出る。
至れり尽くせりだ。お屋敷を借りるから厚遇するのは
分かるけど、その滞在費や往復の馬車代とかは一体
どこから出てるの?
まさか国のお金じゃないよね、と念のためシェラさん
に確かめてみれば
「王都での滞在先である迎賓館の用意については
リオン殿下のお力添えをいただきました。ですが
それ以外の資金面はすべてオレの個人資産からの
持ち出しですね。」
と簡単に言われた。そんな大金を使わせたなんて
申し訳ない、それになんでシェラさんはそんなに
お金を持っているんだろう?と不思議に思えば、
「いつ如何なる時でもユーリ様に貢げるように投資や
不労所得で資産は確保してあります。それにオレには
幸運の女神がついておりますので、黙っていても資産
は増える一方なのですよ。」
と微笑まれた。不労所得って、元の世界で言うところ
の家賃収入とかの不動産収入的なやつ?
いつのまにシェラさんはそんな不動産経営みたいな
事まで手を広げていたんだ。しかも私が
「真っ当に働いたお金なら何の問題もないですけど」
と言ったら、
「当然です。この先騎士を辞めてユーリ様のお側に
いつもいる事になれば収入源がなくなりますからね。
そうなったら素敵なドレスや装飾品が買えなくなり
ます。そうならないためにもそれに備えて今から
資産運用をしているんですよ。」
と将来の展望を語られた。
「え、やっぱり退職を目標にしてるんですか⁉︎」
「働いた方が良いですか?それがお望みなら、
商団でも立ち上げて代表でも務めましょうかねぇ。
在宅勤務で部下に指示だけ与えればいつもユーリ様
のお側にいられますし。」
ふむ、と考え込まれたけどどうあってもシェラさんの
人生設計の基本は私の隣から離れずいることが前提に
なっているらしい。
そんな風にシェラさんと話していたらシグウェルさん
がリオン様と現れた。
「もう準備はすっかり整っているようだな」
私とシェラさんを見てシグウェルさんは頷く。
そう。私は今シェラさんと一緒に、リオネルへ移動
するために奥の院の一室に設けてもらった魔法陣の
上にいた。
いよいよ出発の日で、シグウェルさん待ちだった
のだ。ちなみにエル君とシンシアさんは一足先に
ユリウスさんが魔法陣で連れて行ってくれている。
「レジナスも、気を付けて楽しんでくるように
ユーリへ伝えて欲しいと僕に頼んでいたよ」
リオン様がそう言って私の髪を撫でた。わざわざ
仕事の合間に抜け出して見送りに来てくれたらしい。
ちなみに下着がどうのと言う話はその話題を誤魔化
されたあの日以来タイミングを見失っていまだに
話せていない。
それを聞いたシグウェルさんには案の定、まあ
そうなるだろうと思っていたとやっぱり馬鹿にされた
ように笑われてしまったのが悔しい。
「今回は休暇だからね。なるべくユーリが力を
使わなくてもいいように、補助代わりにこれを
持っていって。」
そう言ったリオン様が撫でていた私の横髪にパチンと
何かを留めた。
触って確かめれば、何か丸いものがついている
髪留めだった。
「大きい姿の時のユーリが泣いて出来たあの真珠の
ような石だよ。それにはユーリの力が込められて
いるでしょう?何かあったらまずそれから優先的に
使って、自分自身の力はあまり使わないようにね。」
なるほど、疲れを取ってのんびりするための休暇だ。
自分の力を使って疲れてしまったら元も子もないから
もし私の力を使う必要があればまずこれに込められて
いる力の方から使えということか。
ありがたく持たせてもらおう。元はと言えば私の
パンツが脱げそうになって泣いたという情けない
理由から出来た物だけど。
その後もリオン様には海辺で暑いからと言ってあまり
冷たいものを飲み過ぎないようにだとかいくら魔法で
防護されていても夜は窓を開け放さずにきちんと鍵を
掛けて寝るようにだとかの注意をされた。
今回は護衛も侍女の数も少ないから余計に心配
らしい。
そんなリオン様にさすがにシグウェルさんも呆れた
のか、しまいには
「そろそろ行くぞユーリ。殿下ももう戻らなければ
レジナスが仕事を捌き切れなくなる頃では?」
そう言って手を差し出された。
「君はまだ魔法陣での移動に慣れていないから俺と
手を繋げ。」
素直に私もその手を取る。
そしてシグウェルさんに手を引かれ、魔法陣の
真ん中へと移動しながら「行って来ますね!」と
リオン様にも手を振った。
するとリオン様が
「ちょっと待ってユーリ」
となぜか引き止める。
「はい?」
「それほどたいした距離もない移動でなんでそんな
手の繋ぎ方をするわけ⁉︎」
じっと私とシグウェルさんの繋いだ手を見ている。
「手の繋ぎ方?」
「僕と手を繋ぐ時はそんな風にすることはないよね」
何の話だろうかと繋いだ手を見れば、しっかりと
指を絡めた恋人繋ぎだ。
これか!そういえば初めてシグウェルさんの手を
取った時って星の砂に加護をつけるために恋人繋ぎに
したんだった。
確かそれからシグウェルさんの中では私と手を繋ぐ
時はこれがデフォルトになっていた。
「手を繋ぐとはこうするのだと俺はユーリに教わり
ましたが。初めて手を繋いだ時からこうですが、
何か違いますか?」
わざとなんだか本当にそう思っているのか分からない
ことをシグウェルさんは言う。
・・・澄ました顔がちょっと面白そうな目の光を
たたえているからわざとなのかも知れない。
「ユーリ、君ねぇ・・・!」
さっきまで心配そうに私を見つめていたリオン様の
目があっという間に非難がましくなってしまった。
「ごっ、誤解ですよ!これには訳があって・・・!」
まるで浮気の言い訳だ。シェラさんまで、
「ユーリ様、オレともまだそんな風に手を繋いで
くださったことはありませんよね?それがユーリ様
のお望みならば、これからはオレもそのように手を
繋ぎますので。」
と言い出した。ええ・・・?
余計なことを、とシグウェルさんを見上げれば
「伴侶は平等だと言うからな、今気付いてもらえて
良かったじゃないか。これからは君と手を繋ぐ時は
皆が俺と同じ形になるから公平だ。俺だけ抜けがけを
していると思われるのもアレだしな」
と繋いだ手をぎゅうっと握られる。
今度からいつどこで誰が見ていようともリオン様達
四人と手を繋ぐ時にはもれなく恋人繋ぎをすること
になってしまった。
繋いだシグウェルさんの手はいつも通りひんやりと
冷たいのに、私の顔はみるみる熱を持つ。
「良くないですよ、恥ずかしいです!」
と言えば
「要は慣れの問題だ。俺への謝礼にしょっちゅう
口付けていれば口付けにも慣れるのと同じだ」
とまた問題発言をされた。
いや、それこそ慣れないしこの先も何かあれば
それを要求するつもり⁉︎
そしてそんなシグウェルさんの言葉に、
「謝礼に口付けてそれに慣れるってどういう意味
なのユーリ!」
とまたリオン様が声を上げた。
だけどシグウェルさんはそんなリオン様に、
「では行ってまいります。ユーリのことはおまかせ
ください」
ニヤリと笑って礼をするとパチンと指を弾いた。
魔法陣からは光が溢れて周りの景色が色を変えて
いく。その中で、
「ちょっとシグウェル⁉︎やっぱり心配しかないよ!」
と言うリオン様の声もかき消えていった。
・・・もしかするとリオン様が一番心配しているのは
少ない護衛で滞在するリオネルの治安や私の粗忽さ
じゃなくて、シグウェルさんやシェラさんの事なの
かも知れない。
リオン様の最後に聞こえてきた声で、その時初めて
私はそれに気付いたのだった。
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