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第十八章 ふしぎの海のユーリ

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相変わらずレジナスさんの膝の上はがっしりしていて
安定感がある。それだけに逃げられないけど。

リオン様に「ユーリが動かないように支えていて」と
頼まれたレジナスさんはそのお願いに忠実に、私の
腰のあたりに手を添えて動かないようにしている。

それにしてもおかしい。

まだ何もしてないうちから何でこんな説教モードな
座り方にさせられているのかな⁉︎

人の下着姿まで勝手に決めないようにとお説教を
するのは私のはずだったのに。

そんな事を考えていたら私の手を取ったリオン様は、

「ユーリが楽しみにしている休暇ならそれを止める事
は出来ないけど・・・はしゃぎ過ぎて羽目を外したり
間違ってお酒を飲んだりしないようにね。人混みの
多いところを歩く時は必ず周囲に気を配って迷子に
なったりしないように。」

まるで子供に言いかかせるみたいな口ぶりで注意を
された。

しかもレジナスさんまで後ろから

「うまそうなものに釣られて知らない人間について
いったりもするんじゃないぞ。」

と言ってくる。

「二人とも私をなんだと思ってるんですか?ちょっと
子ども扱いし過ぎじゃないですか⁉︎」

むくれて訴えたら、

「だってシェラはユーリに甘いからユーリの希望を
何でも叶えようとして最終的にとんでもない事に
なりそうだし、シグウェルは絶対それを面白そうに
見てるだけか乗ってくるでしょう?ユリウスとエルが
そんな二人を止められると思う?歯止め役の僕も
レジナスもいないんだよ?」

と物凄くあり得そうなことを言われてしまった。

「だっ、大丈夫ですよ?多分・・・。私がちゃんと
してればいいんですよね⁉︎今から慣れておかないと
将来的に苦労するのは私なんですから任せて下さい!
三日間なんてあっという間ですよ?」

心配するリオン様に取られている手をぶんぶん振って
後ろのレジナスさんも降り仰ぎ笑顔を見せる。

と、おもむろにそのままレジナスさんに軽く口付け
られてしまった。

え?何だ何だ、珍しい。不意打ちに思わずポカンと
した私から唇を離したレジナスさんはため息をついて
私に添えた手にぎゅっと力がこもった。

「やっぱり心配しかない・・・。あの二人がいれば
危険な目に遭うことはないと思うが、あの二人自体が
危険な気もする。言動に気を付けて揚げ足を取られ
ないようにするんだぞ。」

「ど、努力します」

レジナスさんのその態度に、まさか寂しいのかな⁉︎と
思い当たる。たった三日間離れるだけなんだけど。

するとリオン様も、

「ああ、それいいね。僕もユーリを補充させて貰おう
かな。ユーリと離れるのはほんの少しの間だけど、
ついこの間もファレルに出掛けていてその顔を見られ
ない日が続いたのに、また出掛けてしまうしね。」

そう言って、くいと手を引かれた。

前のめりになってにっこり嬉しそうに微笑んでいる
リオン様の顔が近付いてそのまま唇が重なる。

ちゅ、と軽い音と共に離れたリオン様は

「帰って来たら今度は僕とレジナスとユーリの三人
で王都の近郊に日帰りで遠乗りにでも行こうね。
三人だけでゆっくり景色を楽しんで、お昼は狩りで
鹿でも仕留めてそれを食べようか」

そんな事を言った。その提案にレジナスさんも頷く。

「いいですね。ユーリの結界のおかげで王都近郊には
魔物がいなくなったので狩猟用の獣も育ちが良く
大きいものが多いです。脂の乗った美味しい串焼きが
出来ると思います。」

あら?なんだかちょっと美味しそうだけど、なんで
そんな事を言い出したのかな?

ちらりとリオン様を見上げれば、

「シェラ達だけで出掛けるんだもの、その次は僕ら
だけで出掛けたっていいでしょう?綺麗な渓流では
大きな魚を釣って食べてもいいし、お腹いっぱいに
なった後は木漏れ日がもれるふかふかで座り心地の
良い苔の絨毯の上で昼寝を楽しむのもいいね。」

続けて魅力的なことを言われた。海と同じくらい
惹かれる内容だ。

焼きたての皮がパリパリの塩魚に焚き火でしたたる
脂の焼けるいい匂いのする鹿のお肉。

お腹いっぱいで眠くなったら苔の絨毯の上での昼寝。

季節は春先で、暖かく遠乗りを楽しむにも良い時期。

ユーリがリオネルへ行っている間に僕は仕事を
片付けて、天気が良ければいつでも出掛けられるよう
にしておくからね。

だから気を付けて行ってくるんだよ。

少しだけ寂しそうな顔をしてそう微笑むリオン様に
・・・ついでにレジナスさんにもおやすみのキスを
されてそのまま寝室に戻る。

布団をかけてくれたシンシアさんにおやすみなさいと
挨拶をして明かりを落としてもらい、リオン様も
心配性だ、そんなにあの二人と一緒に私が出掛ける
のが気になるのかな?と目を閉じたところでハッと
した。

「・・・じゃなくて‼︎」

下着がうんぬん、の話を切り出すのをすっかり
忘れていた。

お説教するつもりがそれについて一言も話さない
まま、遠乗りだ焼き魚だという話に誤魔化されて
しまった。く、悔しい。

きっと何か文句を言いたそうな私の雰囲気に先に
気付いたリオン様に話題を変えられたんだ。

絶対シグウェルさんにバカにされる。

くうぅ、とその日は結局悔しくて夜遅くまで
眠れなかったのだった。






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