【本編完結】異世界再建に召喚されたはずなのになぜか溺愛ルートに入りそうです⁉︎【コミカライズ化決定】

sutera

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第十四章 手のひらを太陽に

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大声殿下は春を過ぎて初夏の頃に即位式を迎える。

今はまだ冬の初めでそれまでにはまだもう少し時間は
あるけど、国の事情でその時期即位式への出席が
難しい近隣諸国の中ではぽつぽつと今ぐらいの時期
からすでに訪問が始まっている。

私のトランタニア領への視察にレジナスさんが同行
するのが遅れたのもその訪問の対応のためだった。

そして今日もどこかの国から大声殿下の即位式に
出られないため先立って祝意を述べに来た国がある。

「モリー公国。」

聞いたことのない国だ。いや、私が知ってるのは
ルーシャ国と、ここの隣国で陛下と仲の良い
王様がいるというタング王国、あとえーと・・・
うん、それくらいしかまだ知らない。びっくりする
くらい無知だ。

癒しの力を使って役に立つためにもまずはルーシャ国
の地理歴史から学ぼうと思っていたら、大国という
だけあって覚えなきゃいけない領地が多過ぎて周辺国
のことがかなり後回しになっている。

そもそも47都道府県すら全て言えるかどうか怪しい
私に国内の地理どころかカタカナの国名をたくさん
覚えるのはハナから難しい話だった。

そんな、モリー公国と口に出してみても全く何も
思うところがない無知な私にもリオン様は優しい。

「ルーシャ国と南の国境を接しているヤジャナルと
いう国から更に2つの国を越えた先にある小国だよ。
元々はその隣にあるバロイという国の属国がバロイの
王族に与えられて独立したんだ。」

ヤジャナルにバロイにモリー。一気に3つも知らない
カタカナの国名が出てきて焦る。ヤバい、もう
覚えられないぞ。

むむ、と考え込んだ私は僅かに眉間に皺が寄った
らしくリオン様がそんな私の額に指先を押し当てて
笑った。

「そんなに難しい顔をしないで。要するに、ここから
少し遠い国だよ。そうだね、例えるなら僕がルーシャ
国を出て独立して、ルーシャ国の隣に建国したような
ものかな。二、三百年ほど前に当時のバロイ王の弟の
モリー大公閣下が建国したからモリー公国。小国
だけど魔石鉱山があったり珍しい薬花やっかが取れるから
経済的には豊かな国なんだ。」

私の額を揉みほぐしながらそう教えてくれた。

「そのモリー公国がどうかしたんですか?」

大事な話があると言われて今日の私はリオン様の
執務室を訪れていた。そこで出されたのがこの
モリー公国の話だった。

「兄上の即位式に出られないからと訪れた使者が祝意
を述べてくれたんだけど、その最後の最後にユーリ
へのお願いをされてしまったんだ。」

そう言ってリオン様が後ろのレジナスさんに合図を
すれば、レジナスさんは小さな箱を大切そうに
出してきた。

開けると中には青紫色の百合のような花が1本だけ
入っていた。花弁の真ん中は花粉がまるで金粉の
ようにきらきらと光を放っている。

「これがモリー公国で取れる貴重な薬花だよ。乾燥
させて粉薬にしたり、露を絞って飲ませてもいい。
花だけでなく葉や根っこまで効能があって流行り病
にも効き目があるんだ。モリー公国の大事な収入源
でもあるんだよ。」

へえ、と見つめていればリオン様は続ける。

「その貴重な薬花が絶滅の危機だと言うんだ。だから
豊穣の加護を持つユーリにぜひとも来てもらい、
救って欲しいと懇願されてね・・・。」

なるほど、そういう事か。

「流行り病にも効く薬が無くなりそうなんて大変な
事態じゃないですか?リオン様や神官さん達がいい
って言うなら、他の国まで行くのは全然構いません
よ!」

むしろ私に出来ることがあるなら喜んで行きたい。
聞いた感じちょっと遠そうだけど。

私の返事にリオン様は、そう言うと思った。と
微笑む一方でなぜか心配顔だ。

「どうかしましたか?」

「少し気掛かりなのは、今回のルーシャ国訪問に
王族が来なかったことなんだ。一応宰相が来国した
けど、本来なら王族が来るのが礼儀なのに何故かなと
思ってね。しかもユーリへのお願い事まであったと
いうのに。」

「・・・もし何かの事情があり、それを隠したままで
ユーリを招きたいというのであれば問題ですね。
調べた方が良くないですか?」

レジナスさんも気にしている。

「そうだね。モリー公国の使者はあと三日ほど
滞在予定だからそれまでに何か分かるといいけど。
その間は、もしユーリ本人へ目通りの要望を出されて
も断るように。」

モリー公国を訪れるかどうかはその調査結果次第と
いうことになり、その間に私は訪問に備えて一応
準備しておこうということでその日は終わった。

そしてリオン様から次にモリー公国の話を聞いたのは
それから二日後のことだった。

いつものように、夕食後のひとときを一緒に過ごして
いる時に切り出されたのだ。

「普段そこまで親しい付き合いがないだけに詳しい
話まではまだ分からないけど、やっぱり気掛かりな
ことがあったよ。」

「何か分かったんですか?」

「公主である大公殿下はまだ存命だけどお年を召して
いてね。そのために今回は代理で宰相がルーシャ国を
訪問しているけど、ここ数年大公殿下は立て続けに
二人の息子を亡くされていて、残るのは三番目の息子
だけ。その彼も体が弱く滅多に人前に出て来ないと
いう話なんだ。」

「へぇ・・・」

不幸ごとは重なる時は重なるからなぁ。でもそれなら
年老いた大公殿下も随分と気落ちしているだろう。

「それで、宰相殿によくよく聞いたらユーリには
薬花の加護をお願いするだけでなく、残された跡継ぎ
の三番目の王子殿下も診てもらい、癒しの力を使って
欲しいって話らしいんだ。」

「なんだ、それならそうと最初から言えば良かった
のに遠慮してたんですかね?」

「元々そういう事を気兼ねなく言えるほど親しい
国同士の付き合いはないからそれもあるだろうけど、
どうもね・・・。ユーリは大事な召喚者だから、その
ユーリを離れた国に招くのなら最初から腹を割って
話すべきだよ。他にも何か隠し事がないか気になる
ところだけど残念ながら今分かるのはそれ位かな。」

勘の鋭いリオン様が何か気になると言うのなら本当に
何かあるのかもしれないけど、逆に普段そんなに
付き合いのない国・・・しかも大陸有数の大国である
ルーシャ国の大事な召喚者を何かトラブルのある自国
にわざわざ招くかな?

もし私に何かあった時のことを考えればそんな事は
しないと思うんだけど。

「跡取りを巡るお家騒動があるとかそんなことも
ないんですよね?」

何かあって巻き込まれるとしたらそれ位だろうか。
念のため聞いてみるけど、リオン様もそれに頷く。

「国の状況からそれも考えたけど今のところ国内で
それに関する問題は無さそうだったよ。まあ他国の
事だからあまり干渉も出来ないし、表面上のことしか
分からないけどね。」

遠い国の事情なのによく二日程度でそこまで
確かめられたなと感心する。

最初にモリー公国の話が出た時に、マリーさんに
ここからモリー公国までどれくらいで着くのか聞いて
みたのだ。

マリーさんの家は商会をやってるからか、すぐに
答えてくれた。

「うちの行商人達が行った時は片道で八日かかったと
言ってましたよ。モリー公国の薬花は有名で、あの国
にしか自生しないのでそこまで時間をかけていく価値
は充分あるんです。貴重な品物なので定期的な取引を
望んでいるけど薬花は今のところ栽培が出来ずに
自然に自生している物を取るしかないので交渉が
なかなか難しいと以前兄がこぼしていましたね。」


そんなマリーさんの話と合わせて、片道で八日かかる
国の事を随分と早く調べられましたねとリオン様に
聞いたら

「宰相殿をお茶に呼んで20分ほど無言でお茶を
飲んでいたら自分から色々話してくれたよ。」

ニコリと微笑まれてそう言われた。鬼か。

大国の王子にお茶に誘われて喜んでいたら、無言で
お茶に付き合わされるとかそんな沈黙に耐えられる
人が世の中にどれだけいるんだろう。

そりゃ自分から色々喋っちゃうわ。しかも相手は
このリオン様だ。隠し事をしたままお願いなんか
したら後で恐ろしい目に遭いそうだし、それとなく
そんな事を匂わせた会話をリオン様自身がしてそう。

後で宰相さんに胃薬でも届けた方がいいかな・・・。
そんな風に私がモリー公国の見知らぬ宰相さんに
同情しているのに気付かないリオン様は、

「どうする?若干の気掛かりはあるけどこの話、
受けてみる?もちろん僕も同行するつもりではある
けれど、初めて国外に出るにしては遠過ぎる気も
するし・・・」

心配そうに聞いてきた。当然私の返事は決まって
いる。イエスだ。

「大丈夫ですよ!今の私には専属護衛のエル君も
いますから!」

それに、ここ最近私との外出への同行をずっと
断っていて悪い事をしていたなと気掛かりだった
シェラさんにも声を掛けてみよう。

ダーヴィゼルドに一緒に行ったからか、遠方への
お出掛けイコールシェラさん、な図式が何となく
自分の中で出来上がっていた。
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