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第十章 カトリーズの悪夢

アレクの戦い①

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昨日は、更新せず、すいませんでした。
うっかり忘れておりました<(_ _)>

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大きな斧を持つ相手が、アレクに向かってきた。

「――ちっ」

舌打ちをして、それを躱す。
さらに斧が振るわれるが、アレクはそれを躱す事だけに専念する。

相手が、忌々しげな表情を浮かべた。

「ゲーギ! 蹴り飛ばせ!」
「ヒヒーン!」

相手の発した言葉の意味を理解できないまま、すぐ近くで上がった馬の鳴き声に、アレクは一瞬体を硬直させる。

黄の毛色の馬だ。
その馬が、後ろ足でアレクを蹴ろうとしていた。

「………………っ……!」

何とか躱す。
だが。

「もらったぁ!」

斧が振り下ろされる。

(――仕方ない)

アレクは、剣で受け止めた。

「――ぐっ!」

衝撃に呻く。
剣が折られてしまいそうな、衝撃だった。


アレクは、斧との対決をしたばかりだ。
聖地で、ヘルハウンドの魔石を飲み込んだ老人の振るう斧と戦った。その時、真正面から受け止めると、剣が折れるかと思ったのだ。

(バトルアックス、と言っていたよな)

あの老人の振るっていた斧より、さらに大きい。
当然ながら、威力も上だろう。
だからこそ、正面から打ち合うのは避けたかったのだが、それをさせられてしまった。

(このまま、力比べは無理だ!)

アレクは、剣に魔力を纏わせる。
こんな剣を密着させている状態で、剣技を発動させるなどやったことはないが、今は他に方法がない。

「【天馬翼てんまよく】……、っ!?」
「ゲーギ!」

風の直接攻撃の剣技を発動させようとして、止まった。

「ヒヒーン!」

黄の毛色の馬が、アレクに向かって大きく口を開ける。
その口の歯は、どれも尖っていた。

「うわああああぁぁぁぁ!」

アレクはたまらず悲鳴を上げた。
剣を持つ、右肩に噛み付かれた。

――凄まじい痛みが、走り抜けた。

剣を落とさなかっただけ、まだマシだったろう。

「終わりだ!」

だが、振り下ろされる斧に対して、体が動かない。
右肩の痛みに、支配されている。

「【光速剣こうそくけん】!」
「――なにっ!?」

アレクの後方から、剣技が放たれ、振り下ろされる斧に当たった。
魔族が後退する。

「アレク! 大丈夫か!?」
「タイキさん……」

小さく名前をつぶやく。
大丈夫なわけがない。これでは、まともに剣を振れない。

――ブオン!

響いた音に、目を向ける。
見えたのは、トゲトゲの鉄球だ。

「――――――!」
「【光速剣こうそくけん】!」

再び、泰基が剣技を放った。鉄球を弾き飛ばす。

「アレク! 何とか耐えてくれ!」

泰基がそれだけ言って、またも飛んできた鉄球を弾き飛ばしていた。

そうだった。
今は、リィカとユーリがいない。
泰基が一人で後衛をしてくれている。自分だけのフォローに回ってはいられない。

剣を左手に持ち替える。
右手が駄目なら、左でやるしかない。左手で剣を振るう練習をしたことはある。右手ほどに使えるかと言われれば自信はないが、今はそんな場合ではない。

「ゲーギというのは、その馬の名前か」

魔法による回復はできない。
魔道具の防御も、あっさり突破された。

希望と言えるのは、防御の魔道具のもう一つの効果、自動回復だけだ。
即効性のあるものではない、と言われているが、今頼れるのはそれだけだ。

少しでも時間を稼ぎたくて、魔族に話を振ってみる。

「その通りだ。四体の総称で人食い馬マンイート・ホースと呼んでいるが、一体ずつの名前も付いている」

余裕の表情で、その魔族は頷いた。
聞いていないことまで、説明してくれている。

「俺の名は、ラムポーン。カストル様より、このバトルアックスを与えられし者。勝負だ、と言いたいが、果たしてその怪我でどれだけ戦えるかな?」

揶揄するように言われたが、アレクは左手で剣を構えた。

「戦えるさ」

右肩は、ズキズキ痛い。
本当に回復が効いているのだろうか、と思ってしまうほどだ。
だが、泣き言を言ってはいられなかった。

(実質、三対一か)

接近戦で戦ってくるラムポーンと名乗った魔族と、ゲーギという馬。そして、いつ飛んでくるか分からない鉄球。
泰基のフォローも時々入るだろうが、完全に当てにはできない。

同じ三対一でも、接近戦で戦う三人と戦う方が、まだやりやすい。相手がバラバラなせいで、かえってやりにくい。

(――どうする!?)

今までにない危機的状態に、アレクは答えの出ない問いを自らの内に問いかけた。

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