不憫な推しキャラを救おうとしただけなのに【幼児ブロマンス期→BL期 成長物語】

はぴねこ

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帝国編

48 弟妹ほしいな

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 その日はそれで帝国の城に帰り、私はカルロと一緒に自室として与えられている部屋に戻った後、グレデン卿を連れて転移魔法で情報ギルドへと行った。
 情報ギルドの中で私がいつ転移してもいいとされている部屋に転移し、その部屋からギルド長の執務室を訪ねた。

 突然訪ねたにも関わらずゲーツは驚くこともなく私を迎え入れてくれ、「今日はどうされたのですか?」とすぐに用件を尋ねてくれる。

「子供たちが働かされている娼館のことは知っていますか?」

 そう直球で尋ねれば、ゲーツは少し驚いた顔をして「それをどこで知ったのですか?」と質問を返してきた。

「帝国で教師をしてくれている者から聞きました。他国の者が子供を買いに行く場所だと……」
「全く。王子に余計なことを……」
「それで、ゲーツはどこまで把握しているのですか? 規模はどの程度で、どれくらいで潰せますか?」
「もう潰しましたよ」

 ゲーツの返事は非常にあっさりしたものだった。
 私が思わず「え?」と聞き返すと、ゲーツはニッと口角をあげた。

「リヒト様が最初に資金をくれたじゃないですか? それで子供たちを保護して、その余った金でゲスな商売をしているところは潰しました」
「そうなのですか……」

 私はほっと胸を撫で下ろした。

「リヒト様は当時まだ小さかったですし……いや、今も十分子供なのですが、だから、そのような場所があることをお話しするのはやめておいたのです」

 中身が五十代のおっさんなのに、娼館など前世の自分には縁のない場所だったから全然思いつきもしなかった。

「対処しておいてくれて感謝します」
「我々は貴方様の部下ですよ? 手抜かりはありません」

 ゲーツの言葉に私は少し驚いた。
 情報ギルド設立の支援はしたが、私と彼らは上司と部下の立場ではないと私は認識していた。
 私は情報ギルドに助力や協力を求める立場であり、支配しようなどとは全く考えていなかったのだが、ゲーツは私を上司とみなしてくれていたようだ。

「私はあなた方を支配するつもりなどありませんから、これからも子供たちのための自由に動いてください」

 私の言葉にゲーツはニィッと口角をあげた。

「好きに動きはしますが、お役所関連の面倒ごとは第一補佐官殿にほとんど丸投げしていますし、面倒な貴族が絡んできた時には盾になってもらいますから」
「つまり、責任を取る立場として、私を利用したいということですか?」

 私はゲーツ率いる情報ギルドを信頼しているから利用されても問題はない。

「私は子供たちや貧しい人々のために実際に動くことが難しい身ですから、名前だけでもあなた方の役に立つのなら使ってください……とは言っても、効力を発するのは来年からになってしまいますが」

 あまり役に立つことができなくて申し訳なさを感じているとゲーツが呆れたような眼差しを向けてきた。

「リヒト様は人が良すぎます」
「ゲーツ、リヒト様の人の良さを甘く見てはダメだ」

 グレデン卿が弟であるゲーツを嗜めたが、嗜め方がなんだかおかしい。

「冗談なのに、本気で我々の行動の責任を全て取りそうで怖くなります」

 ああ、冗談だったのか。
 つまり、私の部下だと思っているということも冗談だということだろう。

「冗談だったのですね」

 私がそう微笑めば、なぜかゲーツの呆れた眼差しがより一層呆れの色を濃くしたようだった。
 なぜだろう?

「まぁ、とにかく、娼館の件はリヒト様は気にしなくても大丈夫です」
「でも、娼館を潰すには資金が少なかったでしょう?」

 あの時にゲーツが保護していた子供たちを食べさせるには十分な資金でも、娼館を潰して子供たちを助けるには全く足りなかったはずだ。

「賭博場に何人か潜入させていたのであの資金を元手に荒稼ぎしたんですよ」
「……我が国に賭博場があることも知りませんでした……私、王子失格ですね」

 まさか、こんなにも国のことを知らないなんて。

「裏でこそこそとやってるチンケな賭博場ですし、何より当時まだ3歳だった王子が娼館や賭博場を知っている方が俺は王様の教育を疑いますよ」

 ゲーツの話では娼館も帝国などの大きな国に比べると規模も力も小さいものだったのだという。

「ああ。そうだ。来たついでに頼み事をしてもいいですか?」
「何なりとどうぞ」
「エトワール王国が他国に売り出せるような特産品や産業がないか調べておいてください」
「帝国傘下に入るための準備ですか?」
「はい。そんなところです」

 ゲーツは何やら少し考える素振りを見せた。

「リヒト様が帝国に人質に行くと聞いた時には驚きましたが、本当にこの国は帝国の傘下に入るのですね」
「はい。帝国法が施行されれば、子供たちが大人の都合で物のようにやり取りされることはなくなります」

 断言はしたものの、帝国法が施行されればすぐに悍ましい慣習がなくなるかというとそうではないということはわかっている。
 社会に根付いた慣習がそう簡単に消えるはずはない。
 それでも、そのような希望を持つことくらいは許されるはずだ。
 ゲーツも私と同様の心情なのか、子供に現実を突きつけることなく頷いた。

「帝国の傘下に入るからにはあの大きな経済圏の中で潰されないだけの経済力が必要ですね」
「その通りです」
「他の国にとったらこの国は新たな顧客であり、いい獲物でしょうね。食い物にされて不況にでもなれば子供たちが飢えることになり、以前よりも状況が悪化します。そんなことにならないように気を引き締める必要がありますね」

 私がゲーツに頷きを返した時、部屋の扉が開かれた。

「ゲーツ、それ、この前俺が言ってたことまんまじゃねーか」

 お茶を持ってきてくれたジムニが言った。

「ジムニ。いつも急に来てすみません」

 私が転移をすることを許されているのはジムニの部屋だ。
 先ほど、ジムニが自室でくつろいでいたところに私とグレデン卿が現れて彼の休息の時間を邪魔してしまった。
 本当に申し訳ないことをした。

「リヒト様が来ないことには仕事が進まないからそれはいいですよ。それよりゲーツ、なに人の言葉を自分の言葉のように堂々と披露してんだよ」
「ジムニの頭脳は俺の頭脳、ジムニの手柄は俺の手柄だろう?」

 ゲーツが前世で見たアニメのキャラクターみたいなことを言い出した。

「ゲーツの代わりに考えてやるのはいいけど、その分の報酬をくれ」
「それなら褒めてやろう!」
「報酬は金品しか受け取らねーからな」

 私は二人の軽快なやり取りに和んだ。

「二人はいつも仲がいいですね。私が王子を辞めたらぜひ同僚にして欲しいです」

 二人が慌てて私を振り返った。

「リヒト王子、弟君ができたのですか!?」
「王位争いになるくらいなら弟君に簡単に譲りそうだとは思いましたが」

 私、そんな風に思われてたのか?
 確かに、弟を傷つけるくらいならさっさと王位継承権なんて譲りたいけど。

「残念ながらまだ弟はいません」

「そうですか」と二人は心底からほっとした様子だった。

「リヒト王子、この国は王子が王様になった方が絶対にいい国になるから!」
「弟君ができても王位継承権を譲るとか簡単に言わないでくださいね!」

 ゲーツとジムニにとても力強くそのように褒め言葉を言ってもらったのだが、そうかなぁ? と私は内心で首を傾げた。
 しかし、正直にそんなことを言ったところで弟のいない今の状況では誰に譲るわけにもいかない立場なので、私はとりあえずお礼を伝えておいた。

 私は正直、カルロの幸せしか考えていない。
 王様ってそれじゃダメなものじゃない?
 国民全員の幸せを考えるものじゃない?
 つまり、私には向いていない。

 帝国の傘下に入ってある程度国内が落ち着いたら両親には早々に子供を作ってもらった方がいいだろう。
 男の子ならその子を次期国王に、女の子なら優秀な婿を貰ってもいいし、その子自身が優秀なら女王として盛り立ててもいいだろう。

 私が内心、そんなことを考えていると私の心を透かし見るようにゲーツとジムニがじとりと私を見ていた。

 私は慌てて子供らしい笑顔を取り繕って、最近の下町とその周辺の様子について聞いてみた。
 病院もできたし、清潔さも保っているし、子供たちが学ぶ場もできたし、いたって平和だそうだ。

 ただ、ジムニが言うには、おそらく、帝国の傘下に入って帝国法が適用される時に貴族の屋敷から追い出される少年が一時的に増えるだろうという話だった。
 私もその点については気づいていたので、次にこちらに来た時にどのように対処するかを意見を述べ合うことを約束して帝国へと戻った。

 ゲーツとジムニたちと色々と話している間に日も暮れてきたので両親に会うのはまた別の機会にすることにしてエトワールの城には寄らずに帝国に戻った。

 バレたら両親からは怒られるだろうが、ひとまずバレなければ大丈夫だ。
 そう思っていたのだが、数日後、両親から長文の手紙が届き、下町に立ち寄ったのなら城にも寄るようにと愚痴のような拗ねたような内容の手紙が届いた。

 なぜバレたのか不思議に思っていると、どうやら乳母は数日に一度、私の近況を書いた報告書をエトワール王国に送っているということだった。

 手紙を送る魔導具の使用許可を乳母にも出したのが間違いだったのだろうか?
 いや、報告書を送るのは乳母の業務の一つだろう。
 だとすると、乳母を責めるのはお門違いというものだった。

 ひとまず、私は両親を宥める手紙をしたためた。




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