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57.ジュールと森の精霊
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あれは俺が何歳の頃だったろうか。
兄と喧嘩したのか、親に注意されたのか。
とにかく何もかも嫌になった俺は、執事が止めるのも無視して、ドンドンと森の中に走っていったのだ。
ズンズンと森の中を進む。
俺はもう捨鉢な気持ちになっていて、どうせ俺なんか、居ても居なくても同じなんだと、兄だけがいれば、男爵家も領地もいいんだと、悔しいような、悲しいような、寂しいような、そんなグチャグチャな気持ちで森の奥へ奥へと進んで行った。
ふと我に返って、辺りを見回してみたが、目印になるようなものはなく、迷ったのは間違いないようだった。
来た道を戻ればいいと戻ってはみたが、戻っても戻っても、村は見えてこなかった。
こっちじゃなかったかも。
俺はもうどっちに進んでいいのか分からなかった。
太陽を探してみるも、木々に隠れて姿は見えない。
このまま、誰にも見つからないで死ぬのかも。
なんだか急に不安になったが、また怒りのような気持ちも湧いてきて、いっそこのままここで死んでもいいという気持ちにもなっていた。
誰も俺のことなんか見ちゃいない。
誰も俺を必要としない。
俺はスペアで、兄が男爵位を継いだら、俺は用済み。
兄の下で一生働くのか。准男爵なんて名ばかりの貴族として。
結婚したって、子どもは平民だ。
俺は王都の学校には行けない。
そんな男爵令息を婿に迎えてくれる家などない。
婿に行きたい令息は王都にだって沢山いるのだから。
もう、脚も動かない。
ぼんやりと森の奥を見ていると、木の陰に女の子どもがいた。
「おい!お前も迷ってるのか?」
声をかけると、女の子どもは首を傾げた。
「ちょっと待ってろ!今行くから」
女の子どものところへ行こうと近づくと、女の子どもは、タタタっと走り出した。
「おい!待てって!」
追いかける俺、逃げる子ども。
もう方向も分からない。
追いかけて、どうしようというのか。
俺が追いかけるのをやめ立ち止まると、子どもも走るのをやめ振り返った。
「どこ行くんだよ?」
子どもはまたゆっくりと走り出した。
「おい!」
先程よりゆっくりと走る子どもに追いつくと、そこには小さな滝と滝壺があった。
それは、息をのむような美しさで、俺は時間が経つのも忘れて、只々その滝を見ていた。
どれくらいの時間が経ったのか。
子どもが森の奥を指差す。
指さした方向を見ると、猟師と父が木の間から姿をあらわした。
「ジュール!」
父は俺に気がつくと、ものすごい勢いで走ってきて、俺を抱きしめた。
そして、無事で良かった。無事で良かったと言って泣いた。
猟師は
「森の精霊がジュール様を助けてくれたんだべ」
と言った。
森に迷った時、森の精霊がこの滝壺まで案内することがあるのだそうだ。
必死に俺を探す父に猟師たちは、
「ジュール様がどこに入り込んだかは探しようがない。唯一アテがあるとしたら、滝壺だべ。そこにいなければ、領主様も諦めてけろ」
と言って、この滝壺まで俺を探しにきてくれたのだった。
俺は父に抱きしめられながら、子どもを探したが、子どもはどこにもいなかった。
「ジュール様、良かったなさ。精霊もいつも助けてくれるわけではないからなさ」
と猟師もほっとした顔をした。
その後も、何度か森に入ったが、精霊には会えなかった。
精霊に案内された滝壺は、今でもひっそりと森の奥にある。
兄と喧嘩したのか、親に注意されたのか。
とにかく何もかも嫌になった俺は、執事が止めるのも無視して、ドンドンと森の中に走っていったのだ。
ズンズンと森の中を進む。
俺はもう捨鉢な気持ちになっていて、どうせ俺なんか、居ても居なくても同じなんだと、兄だけがいれば、男爵家も領地もいいんだと、悔しいような、悲しいような、寂しいような、そんなグチャグチャな気持ちで森の奥へ奥へと進んで行った。
ふと我に返って、辺りを見回してみたが、目印になるようなものはなく、迷ったのは間違いないようだった。
来た道を戻ればいいと戻ってはみたが、戻っても戻っても、村は見えてこなかった。
こっちじゃなかったかも。
俺はもうどっちに進んでいいのか分からなかった。
太陽を探してみるも、木々に隠れて姿は見えない。
このまま、誰にも見つからないで死ぬのかも。
なんだか急に不安になったが、また怒りのような気持ちも湧いてきて、いっそこのままここで死んでもいいという気持ちにもなっていた。
誰も俺のことなんか見ちゃいない。
誰も俺を必要としない。
俺はスペアで、兄が男爵位を継いだら、俺は用済み。
兄の下で一生働くのか。准男爵なんて名ばかりの貴族として。
結婚したって、子どもは平民だ。
俺は王都の学校には行けない。
そんな男爵令息を婿に迎えてくれる家などない。
婿に行きたい令息は王都にだって沢山いるのだから。
もう、脚も動かない。
ぼんやりと森の奥を見ていると、木の陰に女の子どもがいた。
「おい!お前も迷ってるのか?」
声をかけると、女の子どもは首を傾げた。
「ちょっと待ってろ!今行くから」
女の子どものところへ行こうと近づくと、女の子どもは、タタタっと走り出した。
「おい!待てって!」
追いかける俺、逃げる子ども。
もう方向も分からない。
追いかけて、どうしようというのか。
俺が追いかけるのをやめ立ち止まると、子どもも走るのをやめ振り返った。
「どこ行くんだよ?」
子どもはまたゆっくりと走り出した。
「おい!」
先程よりゆっくりと走る子どもに追いつくと、そこには小さな滝と滝壺があった。
それは、息をのむような美しさで、俺は時間が経つのも忘れて、只々その滝を見ていた。
どれくらいの時間が経ったのか。
子どもが森の奥を指差す。
指さした方向を見ると、猟師と父が木の間から姿をあらわした。
「ジュール!」
父は俺に気がつくと、ものすごい勢いで走ってきて、俺を抱きしめた。
そして、無事で良かった。無事で良かったと言って泣いた。
猟師は
「森の精霊がジュール様を助けてくれたんだべ」
と言った。
森に迷った時、森の精霊がこの滝壺まで案内することがあるのだそうだ。
必死に俺を探す父に猟師たちは、
「ジュール様がどこに入り込んだかは探しようがない。唯一アテがあるとしたら、滝壺だべ。そこにいなければ、領主様も諦めてけろ」
と言って、この滝壺まで俺を探しにきてくれたのだった。
俺は父に抱きしめられながら、子どもを探したが、子どもはどこにもいなかった。
「ジュール様、良かったなさ。精霊もいつも助けてくれるわけではないからなさ」
と猟師もほっとした顔をした。
その後も、何度か森に入ったが、精霊には会えなかった。
精霊に案内された滝壺は、今でもひっそりと森の奥にある。
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