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交易都市にて?

マッサージという名のHでは?

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私達は今日、貿易都市トンデルダルトトロリアーナを出立し、王都へと向かう。

いやー、長かった。

長く足止めされた。

酷い目にあった。

いっそのこと、街ごと消したろか?、と、思うほどにクソ酷い目にあった。

それでもクソエルフや、トランの時ほどじゃない。

滅するモノは滅したわ。

ただし、その親玉に関しては放置ね、アレは下手に手を出すと世界が滅ぶかも知れない。

マジヤバだわ。

とは言え、こちらに敵対する気も、世界に干渉すつもりもないみたいだし?、安穏と、のほほんと、自由気ままに娼婦を続けるそうな。

遥か昔に異世界から来たという『宵闇人』

世界を滅ぼそうとした?『宵闇人』

今や娼婦を満喫してる『宵闇人』

なんだかなー。



私達は宿を引き払い、街の北門広場にそれぞれ買い出しを済ませて集まった。チェレスタの曳く馬車に荷物を積み込んで行く。

ここから王都までは、なら10日程の道のり、結構距離がある。

それよりも……

「マティ、いいの?」

マキュロンの所に行ってたマティは、ワタシ達のもとへ戻ってきた。

彼女はマキュロンの所に残るんじゃないかと思ってた。

「……エム姉、もうしばらく一緒にいていいですか?」

「それはいずれ、彼の元へ行くと捉えていいのかな?」

「今はわかりません、でもエム姉とはずっと一緒にはいられないと思ってます…」

マティもそう理解したのね。

「ただの友達ではずっと一緒にはいられない、いつか別れの時が来る、でも友達はいつまでも友達、どこにいようとね」

「エム姉…」

ワタシ達は微笑みあった。ケティがそんなワタシ達に指を差して言ったわ。

「あ、2人してイヤラシイ」

なんでやねん。

スノウもワタシとの精神的繋がりが切れた事で、落ち着いてる。昨晩からルナリアと魔法について、あーだこーだと議論を繰り返してた見たい。

ネタは、ワタシの魔法についてなのに、なぜかワタシを除け者にしてる。

ワタシの魔法は発動原理が彼女達に理解できないらしくて、話しが混ざると、ややこしくなって議論にならないとかなんとか。

もう好きにすれば良い。

そんなワタシも昨晩は、寝たきりで溜まった凝りをほぐすべく、例の超絶技巧按摩士に、マッサージしてもらおうと思ったら……居なかった。

そもそもあの人は、『すずめの涙亭』専属ではないそうで、顧客の依頼で街を巡回してるそうな。

残念

…え?、いや、決して例のいかがわしいHをしてもらいたいとかじゃなくてですね……

…ごめんなさい、アレをちょっと期待してました。

なんと言うか、そう言うプレイだと割り切れば、受身でいいかなーって

アハハハ

と、思いきや。ワタシが按摩士を欲してると聞きつけたカスティアさんに部屋を襲撃されました。

それはもう恐怖でしかない。

「あらぁん、ワタシもマッサージできるわよぉん?」

と、おっしゃいまして…

「結構です!」

と、お断り申し上げましたが、抵抗虚しくマッサージされてしまいました。

カスティアさんのマッサージは本物、整体を駆使して、ぶっちゃけ、普通にマジで気持ちよかったです。

でも、そこまで。

その先がないわけない。

整体マッサージも度を越すと、性帯マッサージに変貌する。

とにもかくにも身体中をムニャムニャされ、性感体をウヒウヒされました。

乳房は揉みしだかれ、乳首をいじられ、スポットは嬲られ、落とされた。

濡れに濡れまくった秘穴に、はい挿入。

意味わからん。

でもその後確かにHされたのに、ほとんど記憶がない、それだけ濃厚だったのか、あるいわ…

カスティアさんに法具なんて必要なし。

イケメン男子モードに変化したカスティアさんに、それはそれはもう、タップリと愛されました。

卑怯ですそういうの。

ワタシ好みな男子に変身するとか、反則です。

宵闇人め

「あ、あ、あ、あ、あっ!!」

太っといチンPでバックから貫かれ、小刻みにファックされてる。

キモチ良すぎて、ワタシは震えるしかなかった。

「ふふ、エムちゃんのぉ身体はやっぱり最高だわぁ」

……性帯マッサージ効果が凄すぎる。高められてしまって、抵抗できるわけないじゃん。

でも、ワタシの記憶はここまで、その先は絶頂に達した瞬間ぐらいで、そのほとんどを、覚えてない

……

「ん、あ、や、あん、んあっ!!」

「ほらほらぁ、ココがアナタのぉ弱いところぉ、もうちょっと力抜かないとぉ、すーぐイっちゃう」

そ、そんな事いっても無理ぃ!!、頭の中が真っ白に、もう何も考えられない、犯してぇ

「ひっ!、あひっ!、い、イクっ!」

「だからぁ、ダメぇ」

カスティアさんは、チンPをズブっと抜いてしまった。

ヒドイ

「い、いやぁん……ひあっ!!」

今度は尻の穴に入れられた。

「ほらぁ、お尻も弱いわよねぇ?」

「やっ!、いやぁ!、お尻、ヤダァ!」

南方領の牢屋で、金獅子のオジ様に散々やられ、開拓された第二の秘穴は、弱点にもなってた。

「あ、イック、あ、ひっ」

「だからぁ、ダーメ」

イキソウになると、カスティアさんはすぐに抜く。

「あ、んあ!、な、なんでぇ…」

「この先い、そんなんでは男の言いなりヨォ?」

「い、言いなりで、い、いいもん」

「エムちゃんは、強い子なんだからぁ、一方的に犯られない様にしなさいねぇ」

「そ、そんなのわかんないよぉ、だ、だって男は男性神の…、ワタシの…」

ワタシ、何をいってんの?

「あらぁ?、無意識でも自覚があるのねぇ、なら安心。いずれ思い出すでしょ」

「お、思い……出す?」

カスティアが再び、エムの秘穴に挿入した。

「キャうんっ!!」

カスティアの腰つかいは、今度は止まらない、エムは何度も絶頂に果てた。



というわけで、ワタシはマッサージによって過去最高のコンディション。

Hチャージは半分レイプ気味で、記憶も飛んでるけども、まあご満悦

今なら、うちの徒党連中全員を相手にHしてもイケんじゃね?、とか思うわけでありんす。

しないけどね。

さて、準備も出来たし、出発しようかという矢先に現れたのが……

「待ってエム!」

「待てクソアマ!」

フィロ君とマキュロン、その他大勢、ルウ様までいるし

いや、何よアンタら。

「ちっ、フィロドロ侯、お先にどうぞ…」

マキュロン、なぜ舌打ち…

「ありがとう、マキュロン隊長」

フィロ君は、ワタシの前まで来ると、徐に片膝をついた。ワタシはギョッとした。

「ちょ、ちょっとフィロ君!?、何しちゃってんの!?」

マティ達が後ろでクスクスと笑ってる。

「エム、僕は散々にあなたに酷いことをしてしまった。どんな言葉で謝罪を綴ろうとも決して許されないとわかってる。それでもあなたは僕を救ってくれた、この街を救ってくれた」

「いや、救ってないし…」

真に救ったのはスノウ。彼女が奔走してくれたおかげで、ワタシも助かった。

でもそれを騎士団に知られてはいけない。スノウが魔族と知られてはいけない。

スノウの正体を知る衛士隊のドルガーさんとは、口外しないよう口裏を合わせてある。でも目撃者は多数いるし、人の噂は拡散して行く、封じ込めるのはもはや難儀、いつかバレる時はくる。

「エム、僕はあなたに恩を返したい」

うーん、そう言われても……

「僕の伴侶になってほしい」

は?

『えーっ!?』

周囲が一発でどよめいた。

って、それはワタシの叫びじゃ、なんでそうなる?

「僕の嫁に…」

「言い換えなくていいわ、伴侶の意味はわかるわよ」

「エム、今の僕では貴方に釣り合わないとは思う、だけど必ずや貴方に相応しい男になってみせる!、だから……」

毅然とした視線で見つめてくる。

うーん男らしい、でもね…

「お断りします」

フィロ君、ガーン

一瞬固まり、そしてがっくりと肩を落とした。

周りからの言葉もない、すると…

「ぷー、あーっはっはっはっはっ!!」

突然マキュロンが、吹き出して大笑いした。

失礼なやっちゃな。

「ああ、わりーわりー、別にフィロドロ侯を笑ったわけじゃねーよ」

いや、あのタイミングはそうでしょ!?

「マッキー!、あなたねぇ」

マティが呆れてる。

ん?、マッキー?

「本当だって、笑っちまったのは、そこのクソアマに対してだ」

「はぁ?」

「こんなアバズレに求婚する奴がいるとかおかしくてな」

「それ、フィロ君を笑ってるんじゃん」

「フィロドロ侯よ、こんな奴やめとけやめとけ、碌な目に会わねーぞ」

「言っときますけど、フィロ君はワタシの好みじゃないわ」

ワタシのトドメの一撃に、フィロ君が完全に落ち込んだ。

「おいおいおいおい、ここでそれを言うか!?、最低だなテメェ!」

「フィロ君は若すぎんのよね。ワタシは年上のオジ様が好きなの、そうねそこのオキシドさんとか?」

「ほほう、それは光栄ですな」

光栄に思ってませんよね?、全然目が笑ってないし。

「しかし残念ながら、私は若くて未熟な女性が好みですな」

ぐはっ、それってロリ……おっと、倫理的な問題発言だわ。

オキシドさんは、ロベール氏の対極にいる人だわ。

ん?、そうするとワタシも人のことは言えないのかも?

そんな事を考えてると、ツカツカと、もう1人がやって来て、ワタシの前に片膝をついた。

「んなっ!?、ルウ様まで!?」

「私のは、求婚ではない、求愛だ」

「はい?」

何がちゃうねん

「エム、私が勝手に君を愛しても良いという許可を賜りたい」

ワタシの首が45度右に傾いた。

「……意味がわかんないんですけど?」

「君が私を愛する必要はない、私が勝手に君を愛したい、君が誰を愛そうとも、私の愛は変わらない」

なんじゃそりゃ

ルウ様は隣のフィロ君を横目で見ると何故かドヤ顔を見せた。するとフィロ君がムッとする。

「エム!、僕も勝手に君を愛する許可がほしい!」

フィロ君も何を言い出すのよ、この人達の思考が意味フだわ。

「僕は、何があろうとも君を愛する。例え拒絶されても、ぼ、僕の愛は変わらない」

そういのはね、世間一般的に『ストーカー』って言うのよ。

つけまわすとか、危害を加えるとか、そういったことはしない人達だとは思うけど…

「あーもう!、好きにすれば!!」

ワタシの言葉にルウ様が輝くような笑顔を見せた。フィロ君も、眩しいまでの美少年の微笑み。

クソっ、不覚にもクラッと来た。

逆ハーレムか。

だったらワタシはステキなおじ様に囲まれたい。

金獅子のオジ様、木こりのオジ様、鍛冶屋の……

って、ろくなのがいねー

ワタシは恥ずかしくなって踵を返し、足早に馬車に向かおうとした。

すると…

「おい、ちょっと待て!、クソアマ!!、俺の話が終わってねー!」

なに?、今度はマキュロン?

振り返り彼をじとっ睨んだ。

「何よ、アンタまで愛の告白?」

「アホか!、テメェなんかに求愛なんざするかっ!!!」

「マティにはしたんだもんね」

「うるせーよ!!、俺はテメェに勝負を申し込む!!」

何を言い出すかな、このハゲは

「なんでアンタとそんな事しなきゃいけないのよ」

「テメェが騎士団に相応しいのか確かめる」

「はぁ?、騎士団には入らないって言ったわよね?」

「俺は認めてない」

「コッチが拒否ってるんだけど?」

「剣を抜きやがれ、クソアマ」

聞けよ、人の話

「エム姉、マッキーは言い出したら聞かないわ」

そう言ったのはマティ、見れば彼女は笑ってる、コヤツ、マキュロンをけしかけたわね。

チキショウ、仕方がない。

「手加減出来ないわよ?」

「はっ、臨む所だ、テメェも俺を侮るんじゃねーぞ、全力でこいや!!」

侮ってなんかいないわ、マキュロンから発せられる覇気はかなりのモノ。

チェレスタがマキュロンを圧倒したらしいけど、彼女は『ナイトメア』という竜種さえ凌駕するチート馬だしね。

……

と、いうわけで街から少し離れた場所まできました。

場所は草原。

風が気持ちいい。

ここがこれから戦場になる。

目の前で対峙するは、マキュロン

ギャラリーは遠巻きに、ドルガー氏と、ゲドー隊長さんまでやって来た。

「おいテメェ、丸腰でやり合おうってーのか?」

ああ、そうでした。

彼の装備は…鎖鎌、かなり珍しい。僅かに魔力を感じるので、どうも法具っぽい。

職業は『魔剣士』かしら?

鎖鎌は中近距離武器っぽいので、ロングソードが良いけど、ルウ様に折られたままだし…

仕方ない…あまり見せたくない武器だけど。

ウェポンコンテナNo.5

スウっと、ワタシの左腰に鞘に収まった剣が顕現する。

「!?」

マキュロンが眉根を寄せてる。



ギャラリー群が騒ついてる。

「なんだ今のは…どこから出した?」

「あの剣は一体なんだ?」

などなど、ゲドー隊長やオキシドさん達。



「おいテメェ!、その剣を今どこから出しやがった!?」

「ヒミツー」

「んだと!?」

「貴方が勝ったら教えてあげる…あ、そうだ、ワタシが勝つと、何かいい事あるのかしら?」

「ねえよ」

ホワッツ!?

「俺が勝ったら、マティは置いていけ」

ボソリと言ったマキュロン

ああ、そっちが本音なのね

「なるほどなるほど、ワタシの力を試すんじゃなくて、これはマティを賭けた戦いって事なのね」

マティの方をチラッと見た。

この会話は離れている彼女には聞こえてない

「こんな事しないで、直接言えばいいじゃん」

「言ったさ、だがアイツはお前を選んだ」

「嫉妬?」

「そうじゃねーよ、アイツを連れて行く以上、テメェが相応しいのか確認してーだけだ」

「わざと負けてもいいけど?」

「そんなくだらねーことしたら、ここで殺してやる」

「山賊ゴリ男と発想が同じね」

「やっぱりテメェがやったのか?」

「ケティが馬車で轢き殺したんだってば」

「ああ、そうかよ」

「本当だってば」

「どうでもいい、剣を抜け」

「始まったら抜くわよ」

「本当に舐めたクソアマだ」

うわっ!?

ワタシの顔面に向かって、突然何かが音もなく飛んできた。

咄嗟に首を右に傾ける。

その何か、が左頬を掠めた、魔力?、頬に受けた静電気の様な小さな衝撃、

その一瞬、ワタシの目は正体を捉えた。

『小さな分銅』

鎖鎌の鎌とは反対についている分銅、それよりも小さな分銅が、弾丸の様に飛んできた。

それも、何も繋がっていない単体で…

マキュロンは動いてない、予備動作など全くない。

ゾクリっ!

瞬間、背筋を冷たいものが走った、ワタシはそのまま体を右に倒し、踏み込むと走りだした。

すると、『小分銅』が戻って来た、それもカクカクとあり得ない曲がり方をしながら物凄い勢いで追いかけてくる。

ナニソレっ!、キモっ!

小分銅の動きがどんどん速くなっていく。

遠心力とかそういう話じゃない。生き物の様に、ブーンと蜂の羽音の様な唸りを上げて飛びかかってくる。

ワタシはマキュロンの周りを跳ねたりしゃがんだりして、襲いくる分銅を避け、マキュロンから距離を取ろうと考えた。

だけど妙だわ、

マキュロンは、一見なにもしてなさげだけど、鎖鎌の大分銅を小さく回してる、操っている?

でもその動きには妙な違和感がある。

だったら確かめるまで。

ワタシは動きを止めた。

「どうした!、息切れか?、足を止めたら死ぬぞ!」

マキュロンが煽ってきた。

小分銅はグルリと周り正面からドンと加速した、衝撃波ソニックブームを発し、音速で飛んでくる。

ワタシはまだ納めたままの剣の持ち手を逆手に握ると、左に半身を引きながら、瞬時で、した。

刃先で小分銅の軌道を僅かにずらし、滑らす様に弾き上げると、マキュロン方向に向かって倒れ込む

「なにっ!?」

縮地。

ひと瞬きでマキュロンの懐に入る。

ワタシは下げた剣先を逆袈裟がけで切り上げた。

キいンッ!

マキュロンの胸当てをスッパリと切り裂いた。

ちっ、浅かった。

マキュロンは、ワタシの斬撃に対して、咄嗟にバックステップしてた。

今のに反応するとか、流石だわ。

マキュロンは自分の胸当てを見た。バックリと裂けている

「…テメェ、やるじゃねーか、初見で俺の技を見抜いて接敵するとはな」

途端に周囲から幾つもの小分銅が地面から飛び出した。

あっぶなー、射程外に出てたらアレに巻き込まれてた。

先に仕込んで置くとか、姑息だわマキュロン



「やっぱり凄いわ、エム姉は」

そう言ったマティの隣で、ケティは腕を組んでウンウンと頷いてる。

一方で、ルナリアは唖然とし、スノウさえも驚きを隠せないでいた。

「エムさんは、まさか剣士なのですか?」

「魔法士だって聞いてるけど?」

ケティが答えた。

「魔法も使えて、剣士ですか…」

半ば呆れた様に答えたスノウに対し、ルナリアは…

「スノウ、ワタシも同じ反応をしたわ、エムは魔法士であり剣士でもあるのよ、そんな馬鹿なと言いたいけど、エムは何もかも異常なのよ」

……

「エムが使っているあの剣は一体なんだ?、片刃の曲剣?、あの様な剣は見たことがない。私と戦った時には使っていなかった…」

エムの動きに目を見張っていたルウは、エムが剣を抜いた瞬間を捉えることが出来なかった。それよりも、抜いた剣の刃形状を見て、衝撃的に驚いていた。

刃は片側だけ、先端へ向かって緩やかに曲がり、先へいくにつれやや細くなっている。

高速に抜剣出来る様に作られていると、見定めた。

その刃には波の様な美しい紋様が光り、しなやかに見えるも、強靭さが垣間見える。

一方で、オキシドにはその剣に心当たりがあった。

「片刃の曲剣……西方大陸の南方に、『無頼人』と呼ばれる戦闘部族が暮らしている、そこの者達がアレと酷似した剣を持っていたな。確か『ポントゥ』とか呼ばれていた。だがアレは彼らの中では門外不出の武器だったはずだが……」

「ではエムはその『無頼人』だと?」

「いや、『無頼人』は人族ではあるが、額に小さな角が2本生えている、あの女にはそれがない、何処かで手に入れたとしか思えんな、それにしても…」

「他にも何か?、オキシド殿」

「…いや、戦ってみたいものだと思っただけだ、あのエムとやらとな」

オキシドは不敵に笑った。

……

周りを飛ぶ小分銅達に囲まれた状況で、マキュロンと着かず離れずの距離を保ち、切り結ぶ。

距離を離せば、例の幾多もの小分銅が殺到して襲いかかってくる。

間合いが近ければ、マキュロンもおいそれと小分銅をけしかけられない。

だけどその距離は、完全に『鎖鎌』の間合い。

『鎖鎌』という変態的な特殊武器、鎌も鎖も分銅も、全ての部位が武器になる、使い方によっては、相手を拘束し、時には武器破壊も可能。

ワタシは、抜刀、納刀を繰り返し、基本的に体術と居合いを織り混ぜて、武器を取られる事をなんとか防いでる。

ある講談に、鎖鎌使い『シシド』なる盗賊の頭目が登場する。それに対峙し斬り合った、不遇の天才的剣士を思い出し『刀』を選択した。

え?、誰?

そう、ワタシの武器は『ニホン刀』、それも呑んだくれ八つ首龍の首を切り落とした伝説の神刀と同じ名を持つ『アマノハバキリ』

鎖鎌相手には少し分が悪いんだけどねー

それにしても、小分銅達を抜きにしても、ハゲロンの剣術?は凄いわ、ワタシの不意の居合切りを、ことごとく捌いて、それに合わせて攻撃してくる。

鎌の刃と大分銅が飛び交う。

と、思いきや、鎖が鞭の様に飛び回り、刀を絡めようとしたり、避ければワタシを打ち据えようとする。

下がれば、小分銅が雨あられ。

いやんっ

一番厄介なのが、背後の『小分銅』

小分銅達は単独で飛行してると見せかけて、実は規則的に動いてる。

飛ぶ方向はワタシ達を中心に、常に反時計回り、その動き、鎖鎌の大分銅の廻る向きと一緒、すなわち大分銅はアンテナの役割をしていると見た。初撃の小分銅から魔力をわずかに感じたので、恐らくそれぞれの中に魔石が入っていると見た。

あれだけの数の魔石を用意するとか、マキュロンは金持ち?

うーん、コレ反則的武器だわ。

と、小分銅のカラクリがわかったところで、避けるのが精一杯なわけで……

ん?、アンテナ?

「オラオラオラオラオラオラ!、どうしたどうしたどうした!!」

うるさい、ちょっと黙れ、お前はスタンド使いか!

スタンド使い?

こちらは、ビックリ初撃をかわされた時点で現状は手詰まり。

かろうじて剣を打ち合っているだけの状態。

剣戟だけでは勝負がつかない。

、ね

「!?」

マキュロンが突然大分銅を大きく振り回し、地面へ叩きつけた。地面が砕け、土煙が舞う。

「なにしてんの?」

すると小分銅がマキュロンの周りに集結し、彼の周りを廻りはじめた。ワタシは巻き込まれまいと飛び退いた。

「テメェなら死なねーだろ?」

あ、コレって必殺技とか?

小分銅が回りながら、マキュロンの大分銅に集結して、合体して鉄球形状になった。

武器がフレイルになりやがりましたよ。ナニソレ的な。

「押し潰してやるぜ」

もはや鎖鎌の意味ねーわ。

「…でもそうはイカのタマQなのよ」

ワタシはマキュロンに向けて両手をかざした、正確には小分銅達へ

すると小分銅達の動きに揺らぎが起き、途端に乱れ始め、バラバラと地面に落ちた。

唖然とする、マキュロン

「……んだとっ!?、テメェ!、いったい何しやがった!?」

マキュロンがハゲ頭を真っ赤に紅潮させ、3本毛を逆立ててる。

「ハッキングでーす」

「ハ…何?」

「小分銅の中身が魔石っぽいので、魔力で操やつってるんだろうなーって、だから魔力パスを乗っ取ってやりましたー」

「サラッと、とんでもねえ真似しやがって、クソアマがぁ!!」

マキュロンが大分銅を飛ばし、それを牽制に、鎖鎌で踊りかかって来た。

ワタシは体を捻りその場で一回転する

ガキーンっ!!

飛んできた大分銅を鎖ごと断ち切った

ワタシの手にあるのは、刀ではなくウェポンNo.6「禁断の大剣」

「な!?、なんだそりゃ!?」

その回転の勢いで、マキュロンに向かって大剣を投げ飛ばす。

唸りを上げて飛行する大剣が、マキュロンに迫る。

「おわぁっ!!!」

そんなモノが飛んでくるとは夢にも思ってなかったんでしょうね。

マキュロンは飛んできた大剣を間一髪で避けた。

だけど、ワタシはをしただけ。

土属性魔法、『ウォールオブマッドチャージ』

「んなっ!?」

態勢を崩したマキュロンの左右に地面から、噴き出す様に立ち上がった2枚の分厚い土壁

ワタシは両手を叩く。

土壁サンドイッチ

どドーンっ!!

「ぐわぁっ!」

叫び声を上げるマキュロン

ガラガラガラガラ……

土壁は衝撃で崩れ落ちた。

土壁の瓦礫の山に押し潰されるマキュロン

まだまだ。

火属性魔法、『マジカルパンツァーファウスト・レッサー』

ワタシの手から放たれた、小さな火球がマキュロンを覆う瓦礫にヒット、アーンド…

キュドーンっ!!!!

大爆発。

西の街ギルドを吹き飛ばした、オリジナル火魔法の廉価版。

瓦礫は木端微塵、火だるまになったマキュロンが宙を舞う。

あ、やばっ

水属性魔法で火消し、『リキッドスフィア』

コレ、粘性高めの水球です。当たると衝撃が凄い。

どっぷぁーン!!

弾かれて、地面に落ちて、盛大に転がっていくマキュロン。

やり口が卑怯?

そうねー、でもワタシ本職は剣士じゃないしね。

マキュロンはそのまま動かなくなった。

黒焦げでビチョビチョです。でも頭はぴキュンとツルピカに輝いてる。なんだそれ、テフロン加工でもされてるのかしら?

テフロン加工?

でも、頭にケガなくてよかったね。

お、シャレだわ?

合掌。
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