サキュバスクラブ~最高ランクの精気を持つボクは無数の淫魔に狙われ貪られる~

ウケのショウタ

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5章

5章43話 決断と提案

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 シャリアーデさんに案内され、僕は応接室に通された。

「本来はこのままVIPルームにお通しする予定だったのですが、事情が少し変わってしまいましたね」

 シャリアーデさんが僕の分の紅茶を入れてくれた。
 椅子に座って体を縮こまらせながら、僕は紅茶をちびちびと飲んだ。

「すみません……」
「お気になさらず。我々はこうしてまた清太様に当クラブへご来店いただけただけで歓喜しております。我々の使命はお客様にご満足いただくこと。そのために全力を尽くさせていただきます」

 シャリアーデさんはタブレットを操作しながら何かを確認している様子だった。

「状況をまとめさせていただきます。清太様は数分前にクラブに入館した女性の素性が知りたい、と」
「はい」

 その女性が、もしかしたら僕が憧れていた学校の先輩……花宮詩織先輩の可能性があるからだ。

「しかし当クラブにおいてキャストの個人情報を提示することは禁止されております。が、特別にクラブポイントと引き換えにキャストの情報を販売取引する案を検討しております」

 ここまでは説明された通りだ。

「しかし清太様は現在余剰のクラブポイントをお持ちではないため、もう一度ポイントをお貯めいただかなくてはなりません」
「……はい」

 つまり今日予定されていた僕の歓迎プランを白紙に戻して……あの魔の施設、バームホールを再び味わうということだ。

「――うっ」

 思い出しただけで股間がきゅんと疼くのを感じる。
 バームホールは……できれば入りたくない。
 あそこは……そりゃ、確かに気持ちよかったのは間違いない。間違いないんだけど……あまりにも強烈過ぎる。
 バームホールを利用するのは最後の手段に取っておきたい。

「……でも、どうしても知りたいんです」

 一度生まれてしまった疑念をそのままにはしておけない。
 詩織先輩がサキュバスかどうか……それを知りたいのは、もちろん好奇心もある。

 でもそれ以上に……もし詩織先輩がサキュバスだった場合……。

「……ごく」

 分かってる。最低な考えだって。
 そんな風に詩織先輩を見るのは最低だし、卑怯だって……分かってるけど……。

「詩織先輩と……」

 できるかもしれない。
 セ、セックスが……!

 だ、だって……詩織先輩だって飢えてるはずなんだ。
 サキュバスで……異性と接触できなくて……だから……!

 そうだ。そういえば詩織先輩は誰とも付き合ったことがないって言ってた。
 よく考えてみればおかしい。あのルックスだ、今まで何度も告白されてきたはず。
 それを全て断ったのは……サキュバスだからじゃないのか?

「……僕の告白は……」

 僕も詩織先輩に告白した。
 そのとき先輩はなんて言った?

“――ごめんなさい、君とは付き合えません”

 付き合えません。
 付き合いたくないんじゃなくて、付き合えないと言った。
 本当は付き合いたいけど、ルールのせいでできない……そういう意味なんじゃないかと期待してしまうのは、僕のイタイ自意識過剰な考えだろうか?

 もし詩織先輩がサキュバスなら、あの人は僕と一年間一緒にいて、何を感じていたんだろう……?

「…………」

 確かめたい。
 どうしても確かめずにはいられない。
 そして、他に確かめる手段はない。

 このクラブで、ポイントを獲得する以外に。

「分かりました。バームホールを使わせてください」

 絞り出すようにして発した声を、シャリアーデさんは静かに頷いて受け入れた。

「清太様のお気持ちは承知いたしました。ですが先ほども申し上げましたように、我々の目的は清太様にご満足いただくことにあります」

 シャリアーデさんは優しく、そして妖しい声で僕に囁いた。

「とりわけ本日は特別な一日でございます。清太様にバームホールでの辛い経験を最後にこのクラブを去っていただくのは我々の本意ではございません」
「で、でもポイントが……」
「そこで、特別なご提案をさせていただければと存じます」

 特別な提案……?
 このクラブでそういうこと言われると凄く身構えちゃうんだけど……。

「清太様、そもそもバームホールがなぜあのような仕様になっているかはサリナさんから説明がありましたね?」
「はい。普通、シルバーランク以上の人は認知阻害の魔法を使えて、顔を合わせて接客しても本人だと気づけなくなるんですよね」

 サリナさんがまさにそうだった。
 クラブの中と外、それぞれ同じ顔を見たはずなのに同一人物だと思えなくなる魔法。
 あれがあるからサキュバスのキャストはクラブ外でのトラブルを避けて接客することができる。

「左様でございます。しかしブロンズランクのサキュバスの多くはその魔法が使えません。なので顔を合わせずに搾精行為ができる、あのような施設が必要なのでございます」

 確かそういう説明だったはずだ。

「逆に言えば、顔さえ見えなければ、バームホールでなくともブロンズランクのサキュバスとの性行為は可能となります」
「顔を見ずに行為って……マスクを被る、とかですか?」
「いえ、それでは管理局の許可が下りないでしょう。もっと物理的に見えなくしなければ」

 シャリアーデさんはそこで言葉を区切って、くす、と少しだけ笑みを浮かべた。


「――壁尻です。あれなら顔を見せずにセックスができます」

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