旦那様、政略結婚ですので離婚しましょう

おてんば松尾

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本当に彼女はこの港周辺の土地を買い占めた。
潤沢な資産があるにはあるだろうが、ここまで金を持っているとは思わなかった。

「逆玉の輿ってことだな先生!」

「玉の輿なんて、そんな言葉を知っているのなら、五カ国語で挨拶するくらい簡単だな。ミッキー、新学期までの宿題に付け足そう」

「えー!そんなのずるい!無理だ!」

「やる前から無理は無しだ」

ミッキーはふざけてばかりで、勉強はなかなか捗らない。

皆に教科書をしまうように言う。

「それじゃ、来週から長期の休みに入る。みんな勉強を怠らず、真面目にコツコツ毎日続けるんだぞ」

「そしたら先生みたいにきれいな彼女ができるの?」

口が減らないミッキーを急かし、今日の授業は終わりだと告げた。
皆、帰りの準備を始め、私も帰る用意をした。


今日は僕の家でアイリスが待っている。

そう思うだけでドキドキしてきた。
今日こそはちゃんとアイリスに伝えようと決めた。


僕は、もう一度結婚して欲しいと言うつもりだ。

彼女と一緒に住んでいるわけではないから、いつも帰ってしまうのが寂しかった。
彼女のことを考えると夜はなかなか寝付けない。

何も持っていない自分を受け入れてくれるだろうか心配だけど、一生彼女に尽くそうと決めているから、その事は誠心誠意伝えようと思った。

プロポーズに指輪は必要だろうと思い、教師の給金から何とか捻出した。
安物だから恥ずかしい。

けれどプライドなんてものは、くだらない物だと彼女が教えてくれた。

途中花屋によって花束を買った。アイリスの花だ。

彼女は喜んでくれるだろうか。

年甲斐もなくかなり緊張してしまう。






「結婚して欲しい。僕は君が好きでどうしようもないんだ」

他にもたくさんプロポーズの言葉を考えていたけど、彼女を前にすると全部飛んでしまった。

「ええ……やっと言ってくれたのね」

アイリスは笑った。

ああ……待たせていたんだと思った。
時間をかけ過ぎてはいけない事がある。


沈黙が続いた。
いつも泊っていってくれないかと言いたくて、言えずに帰してしまっていた。
今夜は帰さないつもりだ。


「その……あれだよな……結婚して、それがなかった事になり、結婚して、それでそれから」

なんだかちょっと挙動不審になってしまう。

「それから?」

「いや……、その……やっぱり順番というか順序というのは大事だと思うんだ」

「順序……あ、」

アイリスは思いついたように目を見開いた。

「初夜が無かったですものね、私たち」

「そうなんだ。あの時は、その、すまなかったと思っている」

「まぁ……」

今更感が拭えない。

「僕は、君のことが大事だ。それで、君の子供がいれば……それは、その僕の子供でもあるんだけど、とても可愛いと思うんだ」

「ええ。そうね」

「それで、できれば早いほうが良いと思って」

伝わっただろうか。

「面倒です」

「え?」

「いろいろ、もう。ずっと待っていて、私は待ちくたびれてしまったので」

待たせ過ぎたんだ。

「め、面倒なの!?」

「とっとと、どこかよそで済ませてきましょうか?初夜」

「駄目!駄目だ。違うだろ…」

ふふふ、と笑ってアイリスは僕の膝の上に座った。
僕はアイリスをギュッと抱きしめた。とてもいい香りがする。

「君はとても、軽いな」

そう言って僕はアイリスを抱き上げるとそのまま寝室へ向かった。


優しく彼女を寝室のベッドおろした。

      
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