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。
しおりを挟む本当に彼女はこの港周辺の土地を買い占めた。
潤沢な資産があるにはあるだろうが、ここまで金を持っているとは思わなかった。
「逆玉の輿ってことだな先生!」
「玉の輿なんて、そんな言葉を知っているのなら、五カ国語で挨拶するくらい簡単だな。ミッキー、新学期までの宿題に付け足そう」
「えー!そんなのずるい!無理だ!」
「やる前から無理は無しだ」
ミッキーはふざけてばかりで、勉強はなかなか捗らない。
皆に教科書をしまうように言う。
「それじゃ、来週から長期の休みに入る。みんな勉強を怠らず、真面目にコツコツ毎日続けるんだぞ」
「そしたら先生みたいにきれいな彼女ができるの?」
口が減らないミッキーを急かし、今日の授業は終わりだと告げた。
皆、帰りの準備を始め、私も帰る用意をした。
今日は僕の家でアイリスが待っている。
そう思うだけでドキドキしてきた。
今日こそはちゃんとアイリスに伝えようと決めた。
僕は、もう一度結婚して欲しいと言うつもりだ。
彼女と一緒に住んでいるわけではないから、いつも帰ってしまうのが寂しかった。
彼女のことを考えると夜はなかなか寝付けない。
何も持っていない自分を受け入れてくれるだろうか心配だけど、一生彼女に尽くそうと決めているから、その事は誠心誠意伝えようと思った。
プロポーズに指輪は必要だろうと思い、教師の給金から何とか捻出した。
安物だから恥ずかしい。
けれどプライドなんてものは、くだらない物だと彼女が教えてくれた。
途中花屋によって花束を買った。アイリスの花だ。
彼女は喜んでくれるだろうか。
年甲斐もなくかなり緊張してしまう。
◇
「結婚して欲しい。僕は君が好きでどうしようもないんだ」
他にもたくさんプロポーズの言葉を考えていたけど、彼女を前にすると全部飛んでしまった。
「ええ……やっと言ってくれたのね」
アイリスは笑った。
ああ……待たせていたんだと思った。
時間をかけ過ぎてはいけない事がある。
沈黙が続いた。
いつも泊っていってくれないかと言いたくて、言えずに帰してしまっていた。
今夜は帰さないつもりだ。
「その……あれだよな……結婚して、それがなかった事になり、結婚して、それでそれから」
なんだかちょっと挙動不審になってしまう。
「それから?」
「いや……、その……やっぱり順番というか順序というのは大事だと思うんだ」
「順序……あ、」
アイリスは思いついたように目を見開いた。
「初夜が無かったですものね、私たち」
「そうなんだ。あの時は、その、すまなかったと思っている」
「まぁ……」
今更感が拭えない。
「僕は、君のことが大事だ。それで、君の子供がいれば……それは、その僕の子供でもあるんだけど、とても可愛いと思うんだ」
「ええ。そうね」
「それで、できれば早いほうが良いと思って」
伝わっただろうか。
「面倒です」
「え?」
「いろいろ、もう。ずっと待っていて、私は待ちくたびれてしまったので」
待たせ過ぎたんだ。
「め、面倒なの!?」
「とっとと、どこかよそで済ませてきましょうか?初夜」
「駄目!駄目だ。違うだろ…」
ふふふ、と笑ってアイリスは僕の膝の上に座った。
僕はアイリスをギュッと抱きしめた。とてもいい香りがする。
「君はとても、軽いな」
そう言って僕はアイリスを抱き上げるとそのまま寝室へ向かった。
優しく彼女を寝室のベッドおろした。
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