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第1部 仮初めの婚約者
身の安全の保証
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「皇太子殿下。実はお願いがあるのです」
「ああ、こちらが無理を承知で願い出たんだ。どのようなことでも言って欲しい」
「ありがとうございます。……実は、私は……」
旨を言おうとして、ピタリと動きを停止させる。
(なんと言えばよいのかしら……)
皇女二人から虐げられていて命の危険があるなど、軽々しく皇太子に言ってもよいのだろうか。
腹違いとはいえ皇太子と血のつながりのある姉妹に虐げられているなどと言って、果たして信用をしてもらえるかどうかか……。
だが、下手に取り繕っても目前の皇太子にはすぐにバレてしまうだろう。
「このまま皇女宮に戻れない理由がありまして、できることならで構わないのですが、もしどこかに空いているお部屋や小屋、隙間などがありましたら紹介をしていただきたいのです」
「隙間……? 疑問は湧くが……、まずはその理由を訊いてもよいか」
「はい。私たちの婚約は、きっと皇女様方にとっては全く見当もつかなかったことだと思うのです。なので、私がこのまま戻りますと混乱を招きかねないので、よろしければ皇女宮には後日改めて戻りたいのです」
嘘はついていないが、少々理由が苦しかっただろうか。
案の定アーサーは手を口元に当てて少々考え込んでいるが、その後小さく頷いた。
「分かった。それではこれから第二宮へと一緒に向かってもらう。ただ隙間ではないが」
「……ありがとうございます……!」
クレアは心から安堵した。これで今晩は命拾いしたことになる。
それが、どんなに尊いことか、クレアはこれまでの人生の経験から痛いほど知っていた。
だから、彼の配慮にはとても頭が下がる思いであるし、何も感じないはずの心が少しだけ震えたように感じたのだった。
「ああ、こちらが無理を承知で願い出たんだ。どのようなことでも言って欲しい」
「ありがとうございます。……実は、私は……」
旨を言おうとして、ピタリと動きを停止させる。
(なんと言えばよいのかしら……)
皇女二人から虐げられていて命の危険があるなど、軽々しく皇太子に言ってもよいのだろうか。
腹違いとはいえ皇太子と血のつながりのある姉妹に虐げられているなどと言って、果たして信用をしてもらえるかどうかか……。
だが、下手に取り繕っても目前の皇太子にはすぐにバレてしまうだろう。
「このまま皇女宮に戻れない理由がありまして、できることならで構わないのですが、もしどこかに空いているお部屋や小屋、隙間などがありましたら紹介をしていただきたいのです」
「隙間……? 疑問は湧くが……、まずはその理由を訊いてもよいか」
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