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16章 『秘薬』の開発
第156話 夜の女王
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「申し訳ありません、アイド様。後始末に少々手間取ってしまっておりました」
「周囲に他に残っている者はおりません」
姿を現すと同時に膝を付くムエイとイグンを視界に入れると、俺は労うように声を返してやる。
「いや、二人共ご苦労だった。丁度、そこの無礼者に引導を渡してやろうと思っていたところだ。レファーもご苦労。お前のおかげで無駄に労力を掛けずに追うことが出来たからな」
「なに、気にするな。我が夫の為なら、これしきのことは労力にも入らない。さて、そのアイドから物を盗むということは、私の物を盗むことと同じだが……盗賊などという下等な人種とはいえ、それは理解出来るだろう?」
レファーがそう口にすると、周囲にコウモリが羽音を鳴らして散らばっていく。
辺り一面にコウモリが群がり、男達は慌てた様子で声を上げた。
「な、何だこりゃ!? ちっ、くそ……! どけ!」
「ひ、ひぃ!? な、何で真っ昼間の癖にこんなにコウモリが飛んでやがるんだぁ!?」
「お、お頭! ど、どうにかして下さいよぉ!」
キィキィと声を鳴らして飛び交うコウモリを払い除けながら必死に声を上げる盗賊達。すると、ムエイとイグンの後ろから息を切らせながらフードの少年が姿を現し、盗賊達の様子を伺いながら俺の横へと並び、困惑した表情を見せた。
「こ、コウモリ……? それに、すごい魔力……あ、あの、一体何があったんですか?」
「ああ、喧嘩を売る相手を間違えた愚か者共にお灸を据えようとしていたんだが……どうやら、『夜の女王』の逆鱗に触れたらしい」
俺が何気なくそう答えてみせると、隣に居た少年が息を飲んだことに気付く。
そして、それと同時に声を震わせながら俺へとレファーのことを尋ねて来た。
「よ、『夜の女王』……!? そ、そんな……『夜の女王』は『吸血鬼』の女王ですよ? 『吸血鬼』なんて存在するはずが……仮に存在していたとしても、 噂でしか聞いたことのない存在がこんな辺境の地に居るはず―」
「目の前に居る奴こそ、正真正銘、その女王様だよ。まあ、強ささえ抜けば普通の女だからな。あの可憐な見た目から信じられないのも無理はない」
そうして俺が少年とやり取りをしていると、レファーが自分のことを話していることに気付き、得意げな様子で声を返してくる。
「『夜の女王』などと呼ばれることはあまり好まないが、我が主にそう素直に褒められては悪い気はしない」
「そ、それじゃあ、あなたは本当に『夜の女王』なんですか……?」
そうして、挙動不審になりながら声を掛けてくる少年に対し、レファーは小さく笑みを浮かべると、余裕のある笑みを返した。
「いかにも―私の名はレファー。『魔王軍』第六の将であり、『夜の女王』とも言われる『吸血鬼』の頂点に君臨する存在だ。もっとも……魔力を感じることの出来る『聖女』なら、それくらいのことは察して欲しいものだが?」
レファーはそう返しながらフードの少年へと目を向けた。
(こいつが『聖女』……?)
そんな中、フードの少年―『聖女』と告げられた少女は驚いた顔を俺達へと返してきた。
「周囲に他に残っている者はおりません」
姿を現すと同時に膝を付くムエイとイグンを視界に入れると、俺は労うように声を返してやる。
「いや、二人共ご苦労だった。丁度、そこの無礼者に引導を渡してやろうと思っていたところだ。レファーもご苦労。お前のおかげで無駄に労力を掛けずに追うことが出来たからな」
「なに、気にするな。我が夫の為なら、これしきのことは労力にも入らない。さて、そのアイドから物を盗むということは、私の物を盗むことと同じだが……盗賊などという下等な人種とはいえ、それは理解出来るだろう?」
レファーがそう口にすると、周囲にコウモリが羽音を鳴らして散らばっていく。
辺り一面にコウモリが群がり、男達は慌てた様子で声を上げた。
「な、何だこりゃ!? ちっ、くそ……! どけ!」
「ひ、ひぃ!? な、何で真っ昼間の癖にこんなにコウモリが飛んでやがるんだぁ!?」
「お、お頭! ど、どうにかして下さいよぉ!」
キィキィと声を鳴らして飛び交うコウモリを払い除けながら必死に声を上げる盗賊達。すると、ムエイとイグンの後ろから息を切らせながらフードの少年が姿を現し、盗賊達の様子を伺いながら俺の横へと並び、困惑した表情を見せた。
「こ、コウモリ……? それに、すごい魔力……あ、あの、一体何があったんですか?」
「ああ、喧嘩を売る相手を間違えた愚か者共にお灸を据えようとしていたんだが……どうやら、『夜の女王』の逆鱗に触れたらしい」
俺が何気なくそう答えてみせると、隣に居た少年が息を飲んだことに気付く。
そして、それと同時に声を震わせながら俺へとレファーのことを尋ねて来た。
「よ、『夜の女王』……!? そ、そんな……『夜の女王』は『吸血鬼』の女王ですよ? 『吸血鬼』なんて存在するはずが……仮に存在していたとしても、 噂でしか聞いたことのない存在がこんな辺境の地に居るはず―」
「目の前に居る奴こそ、正真正銘、その女王様だよ。まあ、強ささえ抜けば普通の女だからな。あの可憐な見た目から信じられないのも無理はない」
そうして俺が少年とやり取りをしていると、レファーが自分のことを話していることに気付き、得意げな様子で声を返してくる。
「『夜の女王』などと呼ばれることはあまり好まないが、我が主にそう素直に褒められては悪い気はしない」
「そ、それじゃあ、あなたは本当に『夜の女王』なんですか……?」
そうして、挙動不審になりながら声を掛けてくる少年に対し、レファーは小さく笑みを浮かべると、余裕のある笑みを返した。
「いかにも―私の名はレファー。『魔王軍』第六の将であり、『夜の女王』とも言われる『吸血鬼』の頂点に君臨する存在だ。もっとも……魔力を感じることの出来る『聖女』なら、それくらいのことは察して欲しいものだが?」
レファーはそう返しながらフードの少年へと目を向けた。
(こいつが『聖女』……?)
そんな中、フードの少年―『聖女』と告げられた少女は驚いた顔を俺達へと返してきた。
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