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16章 『秘薬』の開発
第154話 『勇者』なんて退屈な仕事を引退した、しがない『魔王』さ
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「喧嘩を売る相手を間違えるなよ、三下。他人から物を盗むしか能が無い野良犬風情が俺から物を盗むなんざ、百年早いんだよ」
そう言って、手にしたままだったナイフを男達の前へと投げてやる。
あまりにも弱い。
竜のフェグを相手にした後にこんな雑魚を相手にしたところで、当然満たされるはずもなかった。
すると、俺の言葉に盗賊のリーダーは青筋を立てて苛立ちを露わにしていき、やがて地面に落ちていたナイフを片手に取ると威勢の良い声を返してくる。
「ガキの分際で、偉そうな口利いてんじゃねぇぞ!? 少し手練れみたいだが、調子に乗ってっとぶっ殺すぞ!?」
苛立ちを露にするリーダーの男を横目に、俺は軽く笑いがこみ上げてくる。
『蛮勇』というものは嫌いじゃない。
しかし、それが無礼極まりない盗賊風情が相手だとすれば、それはただ滑稽に過ぎない。
俺はそんな盗賊相手に笑いをこぼすと、こみ上げる笑いを堪えないまま男の言葉に返した。
「ハハハッ、良いね……キャンキャンと吠える犬ってのは。とはいえ、大口を叩いておいて尻尾を巻いて俺から逃げ出したことも忘れるなよ? こっちは年甲斐もなく追いかけっこに付き合わされたんだ。少しくらい楽しませてもらわないと割に合わないとは思わないか?」
「こ、この……! ぶっ殺す! てめぇは絶対にぶっ殺す!」
その言葉と共に盗賊のリーダーは慣れた手つきでナイフを操ると、手下の男とは比べ物にならないほどの速さで俺へと迫ってくる。それと同時に、手にしたナイフを一気に俺の喉元へと向けて一気に振り上げた。
「死ねぇ!」
だが、俺がそれを軽く身を翻して避けると、盗賊のリーダーはさらに怒りを強めた顔を俺へと向けてきた。
「誰が避けて良いって言ったんだ!? ああ!?」
「そう怒るなよ。あまりにも遅い動きを見せられて、こっちは退屈なんだ。それに合わせて踊るくらい良いじゃないか」
「ぐ……! こ、このクソがああああああアアアアアアアア!」
おっと怒らせてしまったかな?
リーダーの男は口から泡を吹きそうな勢いで俺へと迫ると、必死にナイフを使って俺の喉元に狙いを済ませてくる。
「お仲間が来る前にぶっ殺してやるよ! 偉そうな口を叩いてるガキが!」
「そいつは良い、俺ももう一度くらいあの世を散歩したいと思ってたんだ。盗賊相手じゃ味気ないが、あえて殺られてみるのも悪くないかもな?」
「ぶ、ぶっ殺す……! テメェはぜってぇにぶっ殺してやる!」
あえてすんでのところでナイフを避け続けながら男の言葉に乗っていると、さらに怒りが強まっていくのを感じる。
そんな中、男を挑発するようにさらに言葉を返していく。
「ナイフの扱いは部下よりも良いな。まあ、でかい口を叩くだけはあるようだ」
「ちっ……! 誰に向かって言ってんだ!? どこの誰だか知らねぇが、でけぇ顔してんじゃねぇぞ!?」
「ああ、そうだな。確かに自己紹介をしていなかった」
そう言うと同時に、俺は男が向けてきたナイフを軽く人差し指で弾いた。
「な―!?」
いともたやすくナイフは男の手を離れて宙を舞い、俺がそれを人差し指と中指で軽く掴んで止めた。男が持っていたナイフの持ち手ではなく、刃の部分を持って。
すると、男は驚愕したような顔と共に声を上げた。
「お、お前……それ、切れねぇのか……?」
「言っただろ? こんななまくらじゃ、俺は切れないってな。それにしても、刃物の使い方はまあまあだが、才能に溺れて努力が微塵も感じられない……なるほど、これじゃ、せいぜい盗賊が良い所だな。お前みたいに間違った方向に努力をする奴を見ると悲しくなるよ、本当」
「あ、あり得ねぇ……! な、何なんだよ、お前は……!?」
男は恐怖するようにゆっくりと足を後ろへと後退させていく。
そんな男の反応に満足した俺は、ナイフを弄びながら笑みを深めながらその質問に答えてやった。
「悪いな、名乗れるほどの肩書きなんざ持ってないんだ。強いて言うなら―『勇者』なんて退屈な仕事を引退した、しがない『魔王』さ」
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この度、2月10日にAmazonで販売を予定している「『魔王』と呼ばれた『元勇者』~」の表紙イラストが完成したので報告をさせて頂きたいと思います!
表紙は猫箸様に担当して頂きました!
主人公のアイド、ヒロインのセリィとメルトを描いて頂いています!
とても素晴らしいイラストで、主人公であるアイドが何割にも増して格好良くなっております…!
メルトやセリィも想像していた以上に魅力的なキャラクターにして頂けました!
Amazonでは電子書籍版(Kindle)と書籍版(ペーパーバック)の両方で販売され、Web版連載時にはなかったエピソードを多数収録し、誤字や脱字なども修正しています!
まだ読んでいらっしゃらない方も、これを機に読んで頂けると幸いです!
何より、表紙が格好良いのでぜひ購入して下さい!
今後とも「『魔王』と呼ばれた『元勇者』~」をよろしくお願いいたします!
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あまりにも弱い。
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「ガキの分際で、偉そうな口利いてんじゃねぇぞ!? 少し手練れみたいだが、調子に乗ってっとぶっ殺すぞ!?」
苛立ちを露にするリーダーの男を横目に、俺は軽く笑いがこみ上げてくる。
『蛮勇』というものは嫌いじゃない。
しかし、それが無礼極まりない盗賊風情が相手だとすれば、それはただ滑稽に過ぎない。
俺はそんな盗賊相手に笑いをこぼすと、こみ上げる笑いを堪えないまま男の言葉に返した。
「ハハハッ、良いね……キャンキャンと吠える犬ってのは。とはいえ、大口を叩いておいて尻尾を巻いて俺から逃げ出したことも忘れるなよ? こっちは年甲斐もなく追いかけっこに付き合わされたんだ。少しくらい楽しませてもらわないと割に合わないとは思わないか?」
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「死ねぇ!」
だが、俺がそれを軽く身を翻して避けると、盗賊のリーダーはさらに怒りを強めた顔を俺へと向けてきた。
「誰が避けて良いって言ったんだ!? ああ!?」
「そう怒るなよ。あまりにも遅い動きを見せられて、こっちは退屈なんだ。それに合わせて踊るくらい良いじゃないか」
「ぐ……! こ、このクソがああああああアアアアアアアア!」
おっと怒らせてしまったかな?
リーダーの男は口から泡を吹きそうな勢いで俺へと迫ると、必死にナイフを使って俺の喉元に狙いを済ませてくる。
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そんな中、男を挑発するようにさらに言葉を返していく。
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「ああ、そうだな。確かに自己紹介をしていなかった」
そう言うと同時に、俺は男が向けてきたナイフを軽く人差し指で弾いた。
「な―!?」
いともたやすくナイフは男の手を離れて宙を舞い、俺がそれを人差し指と中指で軽く掴んで止めた。男が持っていたナイフの持ち手ではなく、刃の部分を持って。
すると、男は驚愕したような顔と共に声を上げた。
「お、お前……それ、切れねぇのか……?」
「言っただろ? こんななまくらじゃ、俺は切れないってな。それにしても、刃物の使い方はまあまあだが、才能に溺れて努力が微塵も感じられない……なるほど、これじゃ、せいぜい盗賊が良い所だな。お前みたいに間違った方向に努力をする奴を見ると悲しくなるよ、本当」
「あ、あり得ねぇ……! な、何なんだよ、お前は……!?」
男は恐怖するようにゆっくりと足を後ろへと後退させていく。
そんな男の反応に満足した俺は、ナイフを弄びながら笑みを深めながらその質問に答えてやった。
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