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16章 『秘薬』の開発
第146話 哀れな命乞い
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レファーの言葉にセリィは再び不機嫌そうに鼻を鳴らすと、尊大な態度で応じてみせる。
「ハッ……見せ場だと? 下らん……何もせずにただ空を飛んでいただけの女に言われる筋合いはない」
「フン……ならば、私もそのまま返させてもらうが、何もせずにただ人の影に付いていくだけの女にだけは偉そうに言われたくはないな」
「……何だと?」
姉であるレファーに言い返され、眉間にシワを寄せ始めてしまうセリィ。
顔を合わせれば言い争いを始めてしまう二人に俺がため息を吐いていると、その争いは徐々にセリィが劣勢に陥り始めていた。
「どうした? 真実を突かれて言葉もないか? もっとも、私はどこぞの『元魔王』などとは違って、アイドの頼みで盗人に見張りを付けていたがな」
「ぐっ……! わ、我はアイドを護衛していたのだ」
「ほう……護衛? それは殊勝なことだな……とはいえ、それもイグンやムエイに任せている以上、お前の出る幕はなかっただろうが」
「よ、余計なお世話だ……!」
そうして、相変わらずいつものように言いくるめられそうになっているセリィを横目に、俺が肩を竦めているとふと視線の先で動くものが見えた。
すでに気配で察してはいたが、それが用心棒のリーダーらしき男だったことに気付くと、俺はゆっくりとこの場から去ろうとしていたその背中に声を掛けた。
「おや? ずいぶんとつれないじゃないか。話し相手を置いてどこに行くつもりだよ?」
「え!? あ、い、いや……は、はは……べ、別にどこってこともねぇんですが……」
「まだ話は終わってないんだ、もう少しゆっくりしていけよ。……それに、お前らに一つ聞いておきたいこともあるんだ」
「ひっ!? だ、旦那! 頼んます! お、お許しを! お、俺はただ雇われただけなんですって! だ、旦那みたいなお強い人に手ぇ出すほど、命知らずじゃねぇんですよ!」
俺の言葉にセリィやレファー達も同じように用心棒の男達へ視線を向けると、哀れなほどに狼狽した男が再び地面に頭を擦り付けながら命乞いをし始める。
そんな男の行動に肩を竦めた俺は、ゆっくりとその男の下へと歩きながら安心させるように囁くような声を投げ掛けてやる。
「そう怯えるなよ、心が痛むじゃないか。……まあ、ああは言ったが、俺はむやみに人殺しをするほど悪人じゃない。だから、お前達に選択肢を与えてやろう。全てを忘れてこの場を去るか、それとも俺達の手を掛けられてこの世を去るか……もっとも、ついさっき聞いたことを口外するようなことがあれば、即殺すことになるけどな」
「さ、さっきの話ってのは旦那が『魔王』かどうかって話ですかい……?」
「ああ、そうだ」
「や、やっぱ旦那は……わ、分かりやした! だ、だから、俺達―いや、俺だけでも生かして下せぇ!」
「なっ―!? おい、テメェ!」
用心棒のリーダーの言葉に、周囲で同じように逃げようとしていた他の奴らが怒りを露わにしながら声を上げるが、しかし、リーダーはそんな連中に嚙み付くように声を荒げて反論し始めた。
「うるせぇ! テメェらみたいな野良犬がいくら死のうが関係ねぇんだよ! だ、旦那、俺ならあんたの役に立てる! 俺はここらじゃ顔が利く方なんです! 殺るなら俺じゃなくてあいつらを殺ってくだせぇ! か、代わりと言っちゃなんだが、俺が持ってる情報は全部旦那にやる! い、今までの蓄えだって渡しても良い! だ、だから、俺の命だけは取らないでくだせぇ!」
そうして、気持ちの悪い笑みを浮かべながら用心棒のリーダー必死な様子で俺の足元にすり寄ってくる。
「ハッ……見せ場だと? 下らん……何もせずにただ空を飛んでいただけの女に言われる筋合いはない」
「フン……ならば、私もそのまま返させてもらうが、何もせずにただ人の影に付いていくだけの女にだけは偉そうに言われたくはないな」
「……何だと?」
姉であるレファーに言い返され、眉間にシワを寄せ始めてしまうセリィ。
顔を合わせれば言い争いを始めてしまう二人に俺がため息を吐いていると、その争いは徐々にセリィが劣勢に陥り始めていた。
「どうした? 真実を突かれて言葉もないか? もっとも、私はどこぞの『元魔王』などとは違って、アイドの頼みで盗人に見張りを付けていたがな」
「ぐっ……! わ、我はアイドを護衛していたのだ」
「ほう……護衛? それは殊勝なことだな……とはいえ、それもイグンやムエイに任せている以上、お前の出る幕はなかっただろうが」
「よ、余計なお世話だ……!」
そうして、相変わらずいつものように言いくるめられそうになっているセリィを横目に、俺が肩を竦めているとふと視線の先で動くものが見えた。
すでに気配で察してはいたが、それが用心棒のリーダーらしき男だったことに気付くと、俺はゆっくりとこの場から去ろうとしていたその背中に声を掛けた。
「おや? ずいぶんとつれないじゃないか。話し相手を置いてどこに行くつもりだよ?」
「え!? あ、い、いや……は、はは……べ、別にどこってこともねぇんですが……」
「まだ話は終わってないんだ、もう少しゆっくりしていけよ。……それに、お前らに一つ聞いておきたいこともあるんだ」
「ひっ!? だ、旦那! 頼んます! お、お許しを! お、俺はただ雇われただけなんですって! だ、旦那みたいなお強い人に手ぇ出すほど、命知らずじゃねぇんですよ!」
俺の言葉にセリィやレファー達も同じように用心棒の男達へ視線を向けると、哀れなほどに狼狽した男が再び地面に頭を擦り付けながら命乞いをし始める。
そんな男の行動に肩を竦めた俺は、ゆっくりとその男の下へと歩きながら安心させるように囁くような声を投げ掛けてやる。
「そう怯えるなよ、心が痛むじゃないか。……まあ、ああは言ったが、俺はむやみに人殺しをするほど悪人じゃない。だから、お前達に選択肢を与えてやろう。全てを忘れてこの場を去るか、それとも俺達の手を掛けられてこの世を去るか……もっとも、ついさっき聞いたことを口外するようなことがあれば、即殺すことになるけどな」
「さ、さっきの話ってのは旦那が『魔王』かどうかって話ですかい……?」
「ああ、そうだ」
「や、やっぱ旦那は……わ、分かりやした! だ、だから、俺達―いや、俺だけでも生かして下せぇ!」
「なっ―!? おい、テメェ!」
用心棒のリーダーの言葉に、周囲で同じように逃げようとしていた他の奴らが怒りを露わにしながら声を上げるが、しかし、リーダーはそんな連中に嚙み付くように声を荒げて反論し始めた。
「うるせぇ! テメェらみたいな野良犬がいくら死のうが関係ねぇんだよ! だ、旦那、俺ならあんたの役に立てる! 俺はここらじゃ顔が利く方なんです! 殺るなら俺じゃなくてあいつらを殺ってくだせぇ! か、代わりと言っちゃなんだが、俺が持ってる情報は全部旦那にやる! い、今までの蓄えだって渡しても良い! だ、だから、俺の命だけは取らないでくだせぇ!」
そうして、気持ちの悪い笑みを浮かべながら用心棒のリーダー必死な様子で俺の足元にすり寄ってくる。
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