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16章 『秘薬』の開発
第139話 ◇『盗賊』side2◇
しおりを挟む「―お頭、獲物が見つかりましたぜ」
部下の一人がニヤニヤと笑いながらそうこぼす。
「相変わらず、汚ぇツラしてんな」とか考えつつ、そんな部下の一人の言葉を受けた俺は少し遠くから獲物の様子を見ながら、近くに立っていたガキの一人を睨み付けてやった。
「おい、魔力が弱まったってのは本当だろうな?」
「は……はい……」
「ああ? 聞こえねぇよ? 本当に魔力は弱まったかって聞いてんだよ」
「は、はい! 間違いなく弱まっています!」
小汚ぇ格好をしたガキはイライラさせるようなムカつく声でそう返してくる。
(ちっ……野郎のガキと行動するなんざ、死んでもゴメンだが……こいつが魔力を感知できるのはデケェからな。ある意味、そんじょそこらのお宝より良い代物だ)
腹が立ったら殴れるし、ストレス解消にもなる。
俺は将来、デカくなる男だ。その為にはこいつの存在は不可欠ってわけだ。
少し前にそこら辺で一人で歩いてたからありったけの財産を奪ってやろうと思って襲ったが、こいつに魔力を感知できる能力があったから引き込んでやったのは正解だったぜ。
(でなけりゃ、あんないかにも金になりそうな瓶を手に入れることなんざ出来なかっただろうからな……カハハ! 神様ってのは居るもんだなあ!)
笑いを抑えられず、自分の口元が歪んでいくのを感じる。
だが、少し気になったことがあった俺はついさっき話していた部下の一人を睨み付けるようにして声を掛ける。
「にしても―おい! あいつが『例の瓶』を持ってたってのは本当か?」
「へ、へい! 俺達が襲った時にあのぼーっと間抜けなツラしてたんで、間違いないっす! な、なあ!?」
「は、はい! そう……だと思います……」
「ああ? はっきりしろよ!」
「は、はい! ま、間違いなく瓶を持っていた男の人です! 感知した魔力も同じですし、間違いありません!」
「ちっ! だったら最初からそう言え! クソが!」
「す、すいません……」
男らしくもねぇ声で俯く野郎に苛立つが、今はそれどころじゃねぇ。
目の前に宝の山が転がってるかもしれねぇんだ、こいつの仕置きは後で良い。
「よし、例のアレをやれ」
「え、えっと……幻術の事でしょうか……?」
「そうだっつってんだろ!? そんな事も分からねぇのか、このタコ!」
「す、すいません! すぐにやります!」
俺に急かされて魔法を使い始めるクソガキ。しかし、こいつがとんでもねぇくらいに便利な代物だ。
幻術みたいなものを掛けて、敵の注意が無くなっているうちに全部かすめ取れる。
おかげでこいつが来てからは頭が回らないクソみたいな部下でも、ガバガバ稼いで来れてるんだからな。
こんなに便利な道具を手に入れられるなんざ、やっぱり俺はツイてるねぇ。
「あ……あれ……?」
「ああ? 何だよ?」
「幻術ってのはちゃんと効いたんだろうな?」
「あ……い、いえ……その……」
「いちいちオドオドしてんじゃねぇ! 効いたか、効いて無いか、それを聞いてんだろうが! ぶっ殺すぞ!?」
「す、すいません! それが―」
そうして、クソガキが口を開こうとした時だった。
「―もし、効いていなかったどうする?」
「ああ……?」
目の前のクソガキとは違うところが声が聞こえ、俺はそっちに視線を向ける。
そして、そこに居る野郎を見て……俺は言葉を失った。
「な―い、いつの間に!?」
そこには幻術を掛けようとしていた連中が立っていた。
間違いない、今目の前で歩いていたはずの連中だ。
驚く俺に、盗賊である俺以上に悪人じみた笑いを浮かべた男が声を掛けてくる。
「チンピラ風情が……喧嘩を売る相手を間違えたな」
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