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16章 『秘薬』の開発

第134話 囮の準備―1―

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 そして、俺はセリィと共にイグンと盗賊と戦う為の準備を行っていた。
 準備と言っても、盗賊は少人数かつ軽装の旅人や村人を襲っていたと聞いていた為、俺達も必要以上に武装しないように軽装に着替えているくらいだが。

 幻術を使うとはいえ、相手はただの人間だし、本気でやるには役不足だ。
 だから、あくまでも囮として見つかりやすくする為に軽装に着替え、森へと出向いて奴らの出方を見るわけだな。

 ムエイとミンクも別の場所でそれぞれ準備を行っており、もっとも盗賊の行動が盛んだと思われる日の入りを見て出発する。

 そんな俺達の周りにはイグンの他にメルトを始めとした仲間やルディン、レファーもおり、俺達の様子を見ていたメルトが呆れたように口を開いてくる。

「……先日のような竜やクディアを相手にしたあなたが盗賊などに後れを取るとは思いませんが、せいぜい後ろから刺されたりしないように気を付けて下さいね」
「ずいぶんと物騒な物言いだな。置いてけぼりを食らったことがそんなに不満か?」

 『聖女』らしからぬ不穏な言葉を聞き、俺が呆れたようにそう返すと、メルトはムッとした表情を返してきた。

「馬鹿を言わないで下さい。神に仕える身で、そのような些細なことで私が腹を立てるとでも思うのですか?」
「うん……まあ」

「……ルク、あなたとは一度ゆっくりと話をする必要があるようですね」
「えぇ!?」

 俺の代わりにルクがメルトの言葉にそう反応するも、恐ろしい目で睨まれていた。
 そんな二人の様子を微笑みながら見ていたセヴィリアとクルゥは、軽装へと着替えている俺を見ながら考え込むように声を投げかけてくる。

「それにしても、せっかく作った『秘薬』が盗まれるなんてね……。さっき会議の時にも言ってたけど、相手は盗賊だし、さっさとどっかに流しちゃってる可能性もあるのよね。そうなると、サンプルを回収出来るかどうか……」

「本当に嫌になっちゃう……せっかく村が発展するチャンスをアイドが作ってくれたっていうのに……。はあ、盗賊なんて居なくなっちゃえば良いのにね」

「だから今から潰しに行くんだろ? ま、弱い者イジメは趣味じゃないから放っておいても良かったが、手を出して来たのは向こうだしな。同情の余地は全くない」

 そう言って、俺は普段付けている鎧すらも外し、ほとんど普通の村人と変わらないくらいの状態になる。

 文字通りの丸腰状態に、様子を見守っていたレファーが余裕のある笑みを向けてきた。

「主の場合であれば、盗賊など素手ですら充分だろう。その活躍を間近で見れないのは残念だが……そうだな、私は空から見物でもさせてもらうとしようか」

「まあ、さすがに盗賊も空を飛んでる奴まで気にする余裕は無いだろうから良いが。心配無いとは思うが、先に見つかられると出て来なくなる可能性もあるから気を付けてくれよ?」

「なに、心配するな。主自ら戦場へと出向くと言うのに、仮にもその部下たる私がそれを台無しにするようなことなどあるはずが無いだろう?」
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