【完結】転生白豚令嬢☆前世を思い出したので、ブラコンではいられません!

白雨 音

文字の大きさ
11 / 33

11

しおりを挟む

「エミリアン、ダンスに誘ってもいい?」

わたしが聞くと、エミリアンは手を差し出し、

「僕からお願いするよ、僕と踊って下さい、エリザ」

「はい!」

わたしはエミリアンの痩せた手を取った。

エミリアンのリードは流れる様に自然だった。
大きく動く事はしないが、とても優雅だ。
わたしはエミリアンに合わせてダンスを楽しんだが、自分の巨体を制御するのは難しく、直ぐに綻びが出始めた。

「ああ!ごめんなさい!」

足を踏んでしまったり、よろけてしまったり、体を反らすとそのまま倒れそうになった。
それで、一曲終わる頃には、汗だくになっていた。

「ふー、ひぃぃ…」

「エリザ、大丈夫?」

エミリアンはわたしの体を支えてくれ、ダンスフロアから連れ出してくれた。

「だいじょうぶ、だけど、すこし、やすみたい…」

「うん、向こうに行こう…」

テーブルの方へ行き、椅子を引いてくれた。

「飲み物を貰って来るね」

「エミリアン、あなたは大丈夫なの?」

体が弱いエミリアンを使うのは心苦しい。
だが、エミリアンは笑みを見せた。

「うん、今日は調子が良いみたい、エリザといるからかな。
だから、安心して、僕に任せて」

エミリアン~~~♡♡♡
大好き~~~♡♡♡

わたしはビュッフェテーブルに向かうエミリアンの背中に、投げキッスをした。
ふっと、視線を感じて顔を向けると、遠くからこちらを見ている女性がいた。
暗紫色のドレスに、盛り上がった黒髪…ドロレスだ!
わたしは妙な焦りを感じたのだが、ドロレスはフイと顔を背け、人の中に紛れていった。

び、びっくりしたーーー!!

やっぱり、エミリアンの事が気になるのかな?
『白豚が弟に近付かないで下さる?』とか、
『弟をパシリにして、タダで済むと思わないで頂戴!』とか、言われそう!!

恐々としていると、ブリジットとジェシーがやって来た。

「エリザー!」
「いたいた、探したのよ!」

二人共笑顔だが、表面通りではないだろう。

「一緒に来てくれる?ユーグ様と話す機会を作って欲しいの」

「ええ、勿論、でもちょっと待ってね、エミリアンが戻って来るから」

ほどなく、エミリアンが飲み物のグラスを手に戻って来た。
わたしの傍にいる、ブリジットとジェシーに気付き、表情を固くした。

「エミリアン、ありがとう!
紹介するわね、二人はわたしのルームメイトなの、ブリジットとジェシーよ。
こちらは、エミリアン=カントルーブ公爵子息、わたしのお友達よ」

エミリアンは首席だし、公爵子息なので、ブリジットとジェシーは目を輝かせて、気合の入った挨拶をした。
エミリアンの方は、いつもよりも少し硬く、「よろしくお願いします」と短く答えただけだった。
人見知りかしら?
友達がいないといっていたし、コミュ障かもしれない。

「二人をユーグの所に連れて行きたいんだけど、エミリアンも来てくれる?」
「うん、いいよ」

エミリアンはわたしに手を差し出し、立たせてくれた。
ブリジットとジェシーが頬を染めている。
分かるわ!エミリアンは優しいし、王子様みたいだものね!


ユーグを探しながら、ふと、ダンスフロアの二人が目に入った。
レオンとアンジェリーヌ。
二人の親密度は上がっているのだろう、レオンはドロレスの時よりずっと、楽しそうに見えた。
女子生徒たちも、羨望の眼差しで二人を眺めている。
王道カップルだものね…

わたしはチラリとエミリアンを見た。
ドロレスの弟としては、婚約者が他の女性と一緒にいるのを面白く思わないのでは?と思ったが、
幸いにして、エミリアンは二人に気付いていない様で、ユーグを探してくれていた。

「見つけた!ユーグ様よ!」

ブリジットが声を上げる。
見ると、人だかりが出来ていて、その中央にはユーグの姿があった。
女子生徒たちは、ユーグから一定の距離を置いて、話し掛けていた。
『触れるべからず!』という、お達しでも出ているのだろうか?

声を掛ける雰囲気では無かったが、ブリジットに「早く早く!」と後ろから突かれ、仕方なくそちらに向かった。

「お義兄様!」

声を掛けると、案の定、周囲の女子生徒たちはわたしに鋭い目を向けた。
うう…針のムシロだわ。

「エリザ!やっと来たか、行こう、失礼するよ___」

ユーグがわたしの手を引き、歩き出す。

「お義兄様?わたし、約束なんてしていませんよね??」
「ああ、方便だ、何でもいいから、あの場から離れたくてね…」
「お義兄様は、モテモテね!」

わたしは囃し立てたが、ユーグは顔を顰め、頭を振った。
ユーグはお堅いから…
親しくもない女生徒たちと会話を楽しむタイプではない。

わたしたちは適当なテーブル席に着いた。
わたしたちがいれば、ユーグも女子たちから囲まれる事は無いだろう。

わたしは気を利かせて、ユーグの両隣をブリジットとジェシーに譲ってあげた。
ブリジットの隣にわたし、エミリアンと輪になっている。

「お義兄様、ブリジットとジェシーは覚えているでしょう?」

話の切っ掛けだったが、毎日食堂で一緒なのだから、聞くまでもない事で、ユーグに奇妙な顔をされた。

「ああ、記憶力は良い方だ」

あ、少し、ご機嫌斜めかも…

「そうね、それじゃ…二人はお義兄様に任せて、エミリアン、料理を取りに行きましょう!」

わたしは座ったばかりだというのに、エミリアンの手を引き、ビュッフェテーブルに向かった。
流石に違和感を持ったのか、エミリアンが伺う様にわたしを見た。

「エリザ?」

「ごめんなさい、二人がお義兄様と話したいみたいだから…
お詫びに、エミリアンの料理を選んであげるわね!
朝は食べていないんでしょう?」

「うん、今日はね…でも、エリザに教えて貰ってから、なるべく食べる様にしているよ。
少しだけど、食べられる量も増えたんだよ」

エミリアンが「ふふふ」と笑う。
うう~ん!かわいい~~~!!!

「凄いじゃない!それじゃ、まずは…」

わたしは皿に料理を盛り、エミリアンに渡した。

「僕、こんなには食べられないよ…」

不安そうなエミリアンにわたしは余裕の笑みを返した。

「大丈夫よ、残ったらわたしが食べるから!」

わたしたちは笑いながらテーブルに戻った。
心配していたが、ユーグが上手く二人に質問をし、話させている様だった。

「授業はどう?」とか、「もう慣れた?」とか、無難な質問だ。

わたしたちが席に着いた時も、ブリジットは懸命に話していた。
ユーグはそれに頷きながら、わたしをチラリと見て小さく頷いた。
ブリジットが話し終えるのを待って、ユーグが席を立った。

「俺たちも料理を取りに行かないか?」

ユーグに誘われ、ブリジットとジェシーは顔を輝かせて付いて行った。
ユーグが二人を邪険にせず、楽しませていると分かり、感謝の念が浮かんだ。

ユーグは女子たちとは一定の距離を保っていて、それは素っ気なく、冷たいとさえ感じるものだ。
本気を出せば、幾らでも感じ良くなれるのに、それをしないのは、本気の相手ではないからだろう…

お義兄様も、アンジェリーヌと踊りたかったわよね?

ダンスフロアでは、レオンがアンジェリーヌではない他の令嬢と踊っていた。
アンジェリーヌと踊った事で、他の誘いを断れなくなったのだろう。
ユーグはこうなると分かっているから、誰とも踊らないのかしら?

ぼんやりと考えていると、三人が戻って来た。
それから程なくして、レオンがやって来た。
少々厳つい顔つきで、ユーグに向けて短く聞く。

「ユーグ、いいか?」

「ああ、すまない、席を外させて貰うよ」

ユーグはあっさりと席を立った。
だが、相手が第三王子という事もあり、ブリジットとジェシーは愛想良く見送ったのだった。

「エリザ、ありがとう!」
「ユーグ様とお話出来るなんて、夢みたい!」
「ああ、ユーグ様、いい匂いがしたぁ…」
「私はどさくさ紛れて腕に触れたわよ!」

二人は大はしゃぎだが、これはエミリアンには聞かせたくないわ…

「エミリアン、美味しい?」
「うん、美味しいよ、エリザも食べてね」
「うん!美味しい♪」

わたしはエミリアンと二人の世界に入ろうと苦心した。
それでも、聞こえてきてしまう…

「ユーグ様の残された物、食べていいわよね?」
「戻って来られないもの、私たちでお片付けしなくちゃ!」

ううーん、義妹としても聞きたく無かったわ…

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

捨てられた地味な王宮修復師(実は有能)、強面辺境伯の栄養管理で溺愛され、辺境を改革する ~王都の貴重な物が失われても知りませんよ?~

水上
恋愛
「カビ臭い地味女」と王太子に婚約破棄された王宮修復師のリディア。 彼女の芸術に関する知識と修復師としての技術は、誰からも必要性を理解されていなかった。 失意の中、嫁がされたのは皆から恐れられる強面辺境伯ジェラルドだった! しかし恐ろしい噂とは裏腹に、彼はリディアの不健康を見逃せない超・過保護で!? 絶品手料理と徹底的な体調管理で、リディアは心身ともに美しく再生していく。 一方、彼女を追放した王都では、貴重な物が失われたり、贋作騒動が起きたりとパニックになり始めて……。

『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています

六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。 しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。 「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

【本編完結】王子の寝た子を起こしたら、夢見る少女では居られなくなりました!

こさか りね
恋愛
私、フェアリエル・クリーヴランドは、ひょんな事から前世を思い出した。 そして、気付いたのだ。婚約者が私の事を良く思っていないという事に・・・。 婚約者の態度は前世を思い出した私には、とても耐え難いものだった。 ・・・だったら、婚約解消すれば良くない? それに、前世の私の夢は『のんびりと田舎暮らしがしたい!』と常々思っていたのだ。 結婚しないで済むのなら、それに越したことはない。 「ウィルフォード様、覚悟する事ね!婚約やめます。って言わせてみせるわ!!」 これは、婚約解消をする為に奮闘する少女と、本当は好きなのに、好きと気付いていない王子との攻防戦だ。 そして、覚醒した王子によって、嫌でも成長しなくてはいけなくなるヒロインのコメディ要素強めな恋愛サクセスストーリーが始まる。 ※序盤は恋愛要素が少なめです。王子が覚醒してからになりますので、気長にお読みいただければ嬉しいです。 ※本編完結しました。

【完結】大変申し訳ありませんが、うちのお嬢様に貴方は不釣り合いのようです。

リラ
恋愛
 婚約破棄から始まる、有能執事の溺愛…いや、過保護?  お嬢様を絶対守るマンが本気を出したらすごいんです。  ミリアス帝国首都の一等地に屋敷を構える資産家のコルチエット伯爵家で執事として勤めているロバートは、あらゆる事を完璧にこなす有能な執事だ。  そんな彼が生涯を捧げてでも大切に守ろうと誓った伯爵家のご令嬢エミリー・コルチエットがある日、婚約者に一方的に婚約破棄を告げられる事件が起こる。  その事実を知ったロバートは……この執事を怒らせたら怖いぞ!  後に後悔しエミリーとの復縁を望む元婚約者や、彼女に恋心を抱く男達を前に、お嬢様の婿に相応しいか見極めるロバートだったが…?  果たして、ロバートに認められるようなエミリーお嬢様のお婿候補は現れるのだろうか!? 【物語補足情報】 世界観:貴族社会はあるものの、財を成した平民が貴族位を買い新興貴族(ブルジョア)として活躍している時代。 由緒正しい貴族の力は弱まりつつあり、借金を抱える高位貴族も増えていった。 コルチエット家:帝国一の大商会を持つ一族。元々平民だが、エミリーの祖父の代に伯爵位を買い貴族となった資産家。

二度目の子育て~我が子を可愛がったら溺愛されました

三園 七詩
恋愛
私は一人娘の優里亜の母親だった。 優里亜は幼い頃から体が弱く病院でほとんどの時間を過ごしていた。 優里亜は本が好きでよく私にも本の話をしてくれた。 そんな優里亜の病状が悪化して幼くして亡くなってしまう。 絶望に打ちひしがれている時事件に巻き込まれ私も命を落とした。 そして気がつくと娘の優里亜が大好きだった本の世界に入り込んでいた。

見た目の良すぎる双子の兄を持った妹は、引きこもっている理由を不細工だからと勘違いされていましたが、身内にも誤解されていたようです

珠宮さくら
恋愛
ルベロン国の第1王女として生まれたシャルレーヌは、引きこもっていた。 その理由は、見目の良い両親と双子の兄に劣るどころか。他の腹違いの弟妹たちより、不細工な顔をしているからだと噂されていたが、実際のところは全然違っていたのだが、そんな片割れを心配して、外に出そうとした兄は自分を頼ると思っていた。 それが、全く頼らないことになるどころか。自分の方が残念になってしまう結末になるとは思っていなかった。

美しい公爵様の、凄まじい独占欲と溺れるほどの愛

らがまふぃん
恋愛
 こちらは以前投稿いたしました、 美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛 の続編となっております。前作よりマイルドな作品に仕上がっておりますが、内面のダークさが前作よりはあるのではなかろうかと。こちらのみでも楽しめるとは思いますが、わかりづらいかもしれません。よろしかったら前作をお読みいただいた方が、より楽しんでいただけるかと思いますので、お時間の都合のつく方は、是非。時々予告なく残酷な表現が入りますので、苦手な方はお控えください。10~15話前後の短編五編+番外編のお話です。 *早速のお気に入り登録、しおり、エールをありがとうございます。とても励みになります。前作もお読みくださっている方々にも、多大なる感謝を! ※R5.7/23本編完結いたしました。たくさんの方々に支えられ、ここまで続けることが出来ました。本当にありがとうございます。ばんがいへんを数話投稿いたしますので、引き続きお付き合いくださるとありがたいです。 ※R5.8/6ばんがいへん終了いたしました。長い間お付き合いくださり、また、たくさんのお気に入り登録、しおり、エールを、本当にありがとうございました。 ※R5.9/3お気に入り登録200になっていました。本当にありがとうございます(泣)。嬉しかったので、一話書いてみました。 ※R5.10/30らがまふぃん活動一周年記念として、一話お届けいたします。 ※R6.1/27美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛(前作) と、こちらの作品の間のお話し 美しく冷酷な公爵令息様の、狂おしい熱情に彩られた愛 始めました。お時間の都合のつく方は、是非ご一読くださると嬉しいです。※R6.5/18お気に入り登録300超に感謝!一話書いてみましたので是非是非! *らがまふぃん活動二周年記念として、R6.11/4に一話お届けいたします。少しでも楽しんでいただけますように。 ※R7.2/22お気に入り登録500を超えておりましたことに感謝を込めて、一話お届けいたします。本当にありがとうございます。  ※R7.10/13お気に入り登録700を超えておりました(泣)多大なる感謝を込めて一話お届けいたします。 *らがまふぃん活動三周年周年記念として、R7.10/30に一話お届けいたします。楽しく活動させていただき、ありがとうございます。 ※R7.12/8お気に入り登録800超えです!ありがとうございます(泣)一話書いてみましたので、ぜひ!

処理中です...