神様のポイント稼ぎに利用された２

三食昼寝、家族付き

第1062話

　アー君が混乱の元凶だと思っていたら、真打はシャムスだった。

「神と人間の婚姻はありだとは思う、うん、古来からある話だし」
「ハイダルも僕と婚姻して子供もいるから普通にあるある」
「カイおめでとう、商会で手に入るものなら何でもいって、甥っ子が生まれたお祝いに贈るよ！」
「大丈夫、黙ってればあの女神も綺麗なお姉さん、そうだアー君、この子の魂強化してあげて」
「あ、そっか」

　そして朱がサラッととんでもない事を言い出して、アー君も簡単に了承している。
　誰か止めて、騎士様――は当てにならない、セティ、セティ止めたげて！

「未来ある子が人外にされちゃう！」
「兄と関わった時点でそういう運命だったんだろう」

　ダメだった。
　セティもたいがい兄弟に激甘だった。

「とや！」

　そしていつかネリちゃんの旦那様の額にそうしたように、皇帝の額にアー君が肉球をぷにっと押し付けた。
　あれ、動作としては可愛いけれど、効果が予測付かないんだよなぁ。

「厄災除け完了！　他はなんだろ」

　アー君がドヤ顔で告げたけど、そもそもアー君が厄災の元凶のような気がする。

「爵位あげよう、五人全員に貴族籍プレゼントしろって今脳内に電波が」

　朱の笑顔がとても輝いています。
　あの子……回収した方がいいんじゃないだろうか。

「公爵家は四家しかないからなぁ、どうしよ、五つにまた増やすか」
「はいはいはい！！」

　観客席から見たことある貴族のおじさま一人手を挙げながら飛び出した。

「あれ、確か前公爵だったおっちゃん」
「はい！　今は侯爵として家族のヒーローです！　アルジュナ様にご提案があります！」

　爵位を落とされてヒーローになれる国がここにある。

「皇帝陛下は部下の方と同列というわけにはいかないでしょう、公爵の上に一つ特別な爵位を作り、それを与えるというのはいかがでしょう」
「それいいな、じゃああれだ、天爵！　皇帝は刀国唯一の天爵ってことで！　じいちゃん書類お願い！」
「OK！　儂と養子縁組もしとくよ！」

　騎士様の隣でこれまたいい笑顔でサムズアップしたのは我が国の国王様です、気軽な爵位授けだけでなく、まさかの養子縁組。
　こうして、当の本人が魂を飛ばしている間に、帝国の後ろ盾に刀国そのものがつきました。これからも強く生きてほしい。

「四人も適当に公爵家と縁付かせておくから、あとでステータス確認してくれ。じゃあこんなもんかな！」
「マシューとラミアの義父さんから差し入れもらってあるから、お祝いも兼ねてみんなに配ろうよ」
「確か酒とアイスだっけ？」
「マシューが新作のお酒、アイスはイグちゃんがラミアにプレゼントしたくて開発させたって」

　魂の抜けた皇帝チームを舞台の隅に移動させると、アカーシャがいつものように合図をした。
　売り子が人の間を走り回って次々配っていく、大人にはお酒を、子供にはアイスを配っている。

　ちなみに僕はアイスでした。
　おかしい、この世界では15は成人指定のはず。

「では皇帝陛下が俺らの家族になったことを祝して、乾杯！！」
「「乾杯！！」」

　アー君が掲げたのはアイスだよね？
　うん、アー君もアカーシャ達もスプーン使ってるからアイスだね、良かった。

「セティなんのお酒だった？」
「梅酒と柿の酒だな、柿の方は少々甘口だがいける」

　舞台に上がったマシュー君がお酒の説明をしている。
　森の中に梅を、ダンジョンで柿を見つけたナーガが果実のお酒飲みたさに研究し、作られたのがセティが飲んでいるお酒だそうです。

「わぁこれ美味しい」
「素晴らしい、これはバラの香りだね」
「これがバラなんだね、まるで香りを食べているみたい」

　マシュー君が解説する横でアイスを食べたうちの子が歓声を上げた。

　アイスを口にしたアー君は耳をぴるぴる動かして可愛いけど、三人の表情はアカン、頬が赤く染まってうっとりする様が人前でさらしていい表情じゃない。
　会場のどよめきでそれに気付いた伴侶がダッシュで舞台に上がり、ボスが朱を、ギレンがアカーシャを、ハイダル君の代わりに騎士様がカイちゃんを回収した。
　ナイス騎士様！　今日一番のいい仕事です！

　ふぅ、これで僕も安心してアイスを食べれる。
　一口食べたら確かにバラの香りはするけど、なんだろう、柿の味がする。
　でも美味しい～～、もう一口！　なんだかふわふわしてきた。

『ママ酔っちゃった！　セティったらっめ！』
「すまん」

　シャムスに怒られたセティが慌てて僕を回収、騎士様達がいるところへと運ばれた。
　どうやら三人の騒動に気を取られている時にセティがアイスに柿酒をかけたらしい、まさかあんなに簡単に酔うとは思わなかったと後に謝られました。