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三食昼寝、家族付き

第941話

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 港特有の奇病で廃れた街を救ったのはひよこ豆だった。

 そう言えばこの港街をラミアちゃんが貰ったのって、奇病のせいで廃れたからだったね。
 思いっきり忘れてました!

「涼の真価は本人が意識してない所でこそ発揮される」
『謎能力とお揃い』
「俺、無意識でもチート」
「さすが涼玉様」

 砂漠の魔改造されたスイカが一玉で水問題を華麗に解決したように、ひよこ豆が栄養問題をサラッと解決しました。
 冒険ギルド裏手に生えたこちらのひよこ豆、涼玉の恩恵を存分に吸収した結果、ビタミンだけでなく食物繊維やタンパク質がぎっちり詰まっているらしい。

 自然界のバランスを無視した神の作物ってやつだね。
 乾燥させれば船に持ち込めるので、もう壊血病に怯える必要はなくなるだろう。

 いつ植えたのかな? と思ったら、ギルド職員が酒のつまみ欲しさに建物の裏手に植えていたらしい、自分用にこそこそ育てていたのが、涼玉の力の余波を受け、爆発的に増えてバレたもよう。

「俺の、俺の夜のおつまみ!!」
「良かったな、つまみが街を救ったぞ」
「ひょーしょーものよ」
「炒ったのが美味い」

 めそめそする職員の横で採取したひよこ豆を食べている涼玉。
 採取してから炒るなんて事はせず、群生しているひよこ豆に向かって炎を吐いたんです。我が家の焼き芋と同じ扱いだね。

「これを食べれば大体の栄養問題は解決する」
『おいちぃ』
「うまい、うまい」

 そこに本日の労働を終えたカトパプレスがやってきて、もしゃもしゃとひよこ豆を食べ始めた。

「俺のぉぉぉ」
「ギルドで買い取ってやるから、自分の分は自分で採取しろよ」
『しばらく豊作が続いちゃうの』
「マールス、俺の分も確保しといて」
「承知!!」

 騒動を聞きつけてやってきた黒豚君、一日走り回って大変ですね。
 本日の事件は大体うちの子が原因なのでちょっとぐらい申し訳ないとは思ってるよ?

「これだけ栄養バッチリだとシヴァに売れるんじゃないか?」
『袋に詰めて売るといーよ』
「子供達のためって言えば喜んで買ってくれるだろーな」

 眉間を揉みながら一度去ったあと、数人の大人を連れて戻ってきた黒豚君がひよこ豆の採取を命じた。

「レシピがあるならば買い取らせて頂きたい」
「俺は持ってない」
『ばーば持ってるかなぁ?』
「ここはネヴォラのじいちゃんじゃないか?」
『ネヴォラー』
「はい!」

 シュインと音を立てて現れたネヴォラだけど、そのままひよこ豆に埋もれてぎゃーぎゃー騒いでいる。
 ネヴォラは今日も元気が有り余っているようだ。

「おーいネヴォラー、豆取り放題していいからじいちゃんにレシピを――」
「お豆嫌い!」

 ネヴォラが逃げた。
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