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湯水のごとくお金を使おう

第794話

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 ネヴォラがマイ釣り竿を手に入れた翌日、ブチ切れたギレンが我が家に乗り込んできた。

「イツキーーー!!」
「あれギレンいらっしゃい、どうしたの?」
「コイツが俺の寝室に侵入したんだよっ!」
「ギレン釣った」

 首根っこを掴まれながらもどこか誇らしげなネヴォラ。

「何があったの?」
「いや、その……」

 ギレンの歯切れがいきなり悪くなった。
 動きが鈍った所でネヴォラが脱出、僕の腰に抱き着いてきた。

「アカーシャの幻影見せて襲ってきた所をぐるぐる巻きしたの!」
「すぐに引きちぎってやったがな!」
「ぶふっ」

 ネヴォラが幻影魔法使えることよりも、それを餌にされて見事に釣られたギレンに思わず笑いが漏れた。

「最初の獲物はイネスにあげるんじゃなかったの?」
「ん! だからこれイネスに献上! 財布持ってて権力も領地あるからイネスはっぴー」
「やめろ、ラーシャに殺されるわっ!」
「ギレンはともかく、資産はダメだよ」
「えー」
「だってあれ、アカーシャのものも同然だから」
「あっ!」

 両手で口を押えて大げさに驚くネヴォラ、今は未成年になったから親元で暮らしているけど、アカーシャはギレンと結婚しているからギレンの資産はアカーシャのものでもある。
 まぁ今となってはギレンの資産より、アカーシャの資産の方が多い気もするけどね。

「ギレン使えないな! あっ、でも魔力は美味いってヨム様言ってた」
「じゃあ魔力だけ搾り取って解放してあげようね」
「うん!」
「俺の、人権!」
「ここ異世界だし、人権ってあるのかな?」

 あるか無いかの采配は女神様の都合に左右されそう、腐女神の前では人権もプライバシーも無いようなものだと思うのは僕だけだろうか。

「大物釣れたからお祝いしてほしーな、あと魚拓取りたい」
「魚拓? え、ギレンの?」

 全裸に剥いて全身に墨塗ればいいのだろうか?

「タイガお願いしたらやってくれるかな? あっ、じいちゃんなら知ってそう」
「やめろ、落とすの大変だろうが」

 クリーン重ね掛けで落ちるから大丈夫だって。

「……でもギレンの魚拓なんて保存しても嬉しくないかなぁ」
「イツキ、コイツっ」
「どうどう」

 言いたい放題してさすがに怒ろうとしたギレンだったけれど、誰がネヴォラの保護者か思い出したのか、ぐぐっと堪えた。
 ショタ守護神、怖いもんね。

「庭で何か釣ってくる」
「じゃあ釣れたら一緒に調理してイネスに出そうね」
「うん!」

 元気よくネヴォラが庭に飛び出していった。

「これで魚拓は回避出来たと思うよ、良かったね」
「納得いかねぇ」

 回避できたのはあくまで魚拓だけなので、魔力搾り取られるのは諦めてください。
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