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湯水のごとくお金を使おう
第675話
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本来なら国王様もおばあさんと一緒に輪廻転生を繰り返す運命だった。
そこに横槍をぶっ刺したのが騎士様、運命を狂わす男が国王様の人生に介入したからさぁ大変、旦那様に再び巡り合うまで延々と一人で生まれ変わり続ける羽目に。
「騎士様の責任もありますね」
「ダメなパパだぜ」
『運命を弄んでるの』
「危険な男だ!」
「幼児の意見が容赦ない」
皆さんから「早くこの事態を収拾してくれ」という圧が凄い。
僕だって解散したいさ、だいたいなぜ僕が台風の中心地にいるんだろう。
ああ双子に連れてこられたからだ。
当人はどこ行った!
もしかして一仕事終わったと、隠れておやつタイムしてるとかじゃないよね!?
「この人はわたくしがいないとダメなのです」
「ぐぇぇ」
フランス人形が国王様の首を締めあげている。
小さな手だし、少女だから力はほとんどないはずなのに、国王様に確実にダメージが入っている気がする。
あれか、ヘラ母さんのダメージのない雷撃と同じで、スタミナにダメージいくタイプの攻撃?
話を進めるために国王様の現状と、幼児を構う騎士様を無視して宰相さんが説明してくれた。
再会の場はバザー会場、夜会や学園じゃなく、色気も何もないバザー会場。
再会の衝撃で現世の生い立ちとか、身分とか、刀国で果たすべき役割とか、あれこれが吹っ飛んだだけでなく、助走をつけてのアッパーカットからのエビ固めのコンボを国王様に決めた。
ちなみにこのコンボを受けた国王様の「ばあさん許して!」の悲鳴で、やっと警備の人が止めに入ってくれたらしい。
今の生の誕生から再会までの記憶が吹っ飛んだ件はいいのか、とか。
なぜコンボ技を食らったことで、魂の片割れと分かったんだろう、とか。
警備兵止めるの遅い、もしかしてバザー楽しんでました? とか。
ツッコミ処が多過ぎる。
ああ、でも一つだけ腑に落ちた事がある。
「国王様が村長に戻りたがったのは、魂の片割れと再会したかったからなんですね」
僕の呟きにパッと少女がこちらを見た。
瞳に浮かぶのは戸惑いだろうか。
手が緩んで喉元が解放された国王様が大きく深呼吸を繰り返している、お疲れ様です。
「でも、この人には子供が」
「全員養子です」
フォローに入ったのは宰相さんだった。
「建国以来、我が国の王は独り身。優れた者を養子にし、次の王に育てようとしましたが、一人残らず自由を求めて逃走しました」
フォローだよね?
上げているのか落としているのか、ちょっと判断付きにくい。
「王太子のお二人は?」
「神子様の御子です」
「はい、刀羅と鬼羅は僕が生みました」
父親は騎士様です!
「おじいさん、本当?」
「本当、本当、信じてばあさん」
冷や汗をかきながら必死に首を縦に振っている。
「パパのせいで拗れた運命か、対価はもらうが俺が対処してやろう」
『わーい、アー君カッコイイ!』
「よっ、にいちゃ世界一!」
やれやれ仕方ないなぁと言いながらアー君が前に出てきた。
対処したいんだね、シャムスや涼玉にいいところ見せたいんだねアー君。
アー君の言葉に少女が国王様の膝から降り、僕らのところへ歩いてくるとアー君の前で跪き、祈るように両手を組んで目を閉じた。
「願うことが許されるなら、若さを対価に寿命をお与えください」
「その願い、聞き届けた」
厳かに頷くとアー君は騎士様を見上げた。
……実行するの騎士様なんだね、そして何の疑問もなく実行する騎士様。息子に激甘っ!
騎士様が動く前に窓から差し込む光が少女を包みこんだ。
光の中に舞う天使の羽。
「ん?」
どうやら騎士様は関係ないらしい、目の前の現象に不思議そうに首を傾げている。
幻想的な光景に謁見の間に集まった皆さんが釘付けになっている中、僕は何となく窓を見上げ、舞台の裏側を見てしまった。
キーちゃんが翼をめっちゃバサバサしてました。
演出お疲れー。
「パパ、はやく」
『キーちゃん羽根なくなちゃう』
「今のうち」
「ん、んんん??」
幼児らに小声で囁かれ、騎士様が曖昧に頷きながら術を行使した。
そして現れたのは上品な雰囲気の小柄なおばあさん。
ドレスも体形に合わせて変化しているのはサービスかな?
「ば、ばーさーーん!!」
国王様が王座から立ち上がり、駆け寄ったかと思うと号泣しながらおばあさんに抱き着いた。
「おじいさんっ」
抱き合いながら涙する感動のシーンの中、宰相さんの合図で集まった人達が音もなく扉から退出し始めた。
僕らも帰っていいかな?
アー君、家までひとっ飛びお願い。
いえ、騎士様は宰相さんが笑顔で呼んでいますのでここでお別れです、僕ら先に帰ってますのでまた家で会いましょう。
「じゃあなパパ! 仕事頑張れよ!」
「俺、さっきからずっと頑張ってる気がする!」
「気のせい!」
騎士様の泣き言をBGMに帰宅しました。
「アカーシャ大丈夫?」
「自分の平凡さを実感したよ、非常識が常識になるぐらいもっと勉強する」
疲労から顔色は少々悪いけれど、でも闘志に燃えているようなので大丈夫だろう。
そこに横槍をぶっ刺したのが騎士様、運命を狂わす男が国王様の人生に介入したからさぁ大変、旦那様に再び巡り合うまで延々と一人で生まれ変わり続ける羽目に。
「騎士様の責任もありますね」
「ダメなパパだぜ」
『運命を弄んでるの』
「危険な男だ!」
「幼児の意見が容赦ない」
皆さんから「早くこの事態を収拾してくれ」という圧が凄い。
僕だって解散したいさ、だいたいなぜ僕が台風の中心地にいるんだろう。
ああ双子に連れてこられたからだ。
当人はどこ行った!
もしかして一仕事終わったと、隠れておやつタイムしてるとかじゃないよね!?
「この人はわたくしがいないとダメなのです」
「ぐぇぇ」
フランス人形が国王様の首を締めあげている。
小さな手だし、少女だから力はほとんどないはずなのに、国王様に確実にダメージが入っている気がする。
あれか、ヘラ母さんのダメージのない雷撃と同じで、スタミナにダメージいくタイプの攻撃?
話を進めるために国王様の現状と、幼児を構う騎士様を無視して宰相さんが説明してくれた。
再会の場はバザー会場、夜会や学園じゃなく、色気も何もないバザー会場。
再会の衝撃で現世の生い立ちとか、身分とか、刀国で果たすべき役割とか、あれこれが吹っ飛んだだけでなく、助走をつけてのアッパーカットからのエビ固めのコンボを国王様に決めた。
ちなみにこのコンボを受けた国王様の「ばあさん許して!」の悲鳴で、やっと警備の人が止めに入ってくれたらしい。
今の生の誕生から再会までの記憶が吹っ飛んだ件はいいのか、とか。
なぜコンボ技を食らったことで、魂の片割れと分かったんだろう、とか。
警備兵止めるの遅い、もしかしてバザー楽しんでました? とか。
ツッコミ処が多過ぎる。
ああ、でも一つだけ腑に落ちた事がある。
「国王様が村長に戻りたがったのは、魂の片割れと再会したかったからなんですね」
僕の呟きにパッと少女がこちらを見た。
瞳に浮かぶのは戸惑いだろうか。
手が緩んで喉元が解放された国王様が大きく深呼吸を繰り返している、お疲れ様です。
「でも、この人には子供が」
「全員養子です」
フォローに入ったのは宰相さんだった。
「建国以来、我が国の王は独り身。優れた者を養子にし、次の王に育てようとしましたが、一人残らず自由を求めて逃走しました」
フォローだよね?
上げているのか落としているのか、ちょっと判断付きにくい。
「王太子のお二人は?」
「神子様の御子です」
「はい、刀羅と鬼羅は僕が生みました」
父親は騎士様です!
「おじいさん、本当?」
「本当、本当、信じてばあさん」
冷や汗をかきながら必死に首を縦に振っている。
「パパのせいで拗れた運命か、対価はもらうが俺が対処してやろう」
『わーい、アー君カッコイイ!』
「よっ、にいちゃ世界一!」
やれやれ仕方ないなぁと言いながらアー君が前に出てきた。
対処したいんだね、シャムスや涼玉にいいところ見せたいんだねアー君。
アー君の言葉に少女が国王様の膝から降り、僕らのところへ歩いてくるとアー君の前で跪き、祈るように両手を組んで目を閉じた。
「願うことが許されるなら、若さを対価に寿命をお与えください」
「その願い、聞き届けた」
厳かに頷くとアー君は騎士様を見上げた。
……実行するの騎士様なんだね、そして何の疑問もなく実行する騎士様。息子に激甘っ!
騎士様が動く前に窓から差し込む光が少女を包みこんだ。
光の中に舞う天使の羽。
「ん?」
どうやら騎士様は関係ないらしい、目の前の現象に不思議そうに首を傾げている。
幻想的な光景に謁見の間に集まった皆さんが釘付けになっている中、僕は何となく窓を見上げ、舞台の裏側を見てしまった。
キーちゃんが翼をめっちゃバサバサしてました。
演出お疲れー。
「パパ、はやく」
『キーちゃん羽根なくなちゃう』
「今のうち」
「ん、んんん??」
幼児らに小声で囁かれ、騎士様が曖昧に頷きながら術を行使した。
そして現れたのは上品な雰囲気の小柄なおばあさん。
ドレスも体形に合わせて変化しているのはサービスかな?
「ば、ばーさーーん!!」
国王様が王座から立ち上がり、駆け寄ったかと思うと号泣しながらおばあさんに抱き着いた。
「おじいさんっ」
抱き合いながら涙する感動のシーンの中、宰相さんの合図で集まった人達が音もなく扉から退出し始めた。
僕らも帰っていいかな?
アー君、家までひとっ飛びお願い。
いえ、騎士様は宰相さんが笑顔で呼んでいますのでここでお別れです、僕ら先に帰ってますのでまた家で会いましょう。
「じゃあなパパ! 仕事頑張れよ!」
「俺、さっきからずっと頑張ってる気がする!」
「気のせい!」
騎士様の泣き言をBGMに帰宅しました。
「アカーシャ大丈夫?」
「自分の平凡さを実感したよ、非常識が常識になるぐらいもっと勉強する」
疲労から顔色は少々悪いけれど、でも闘志に燃えているようなので大丈夫だろう。
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