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湯水のごとくお金を使おう

第633話

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 それぞれの思惑を腹に抱えつつダンジョンに入場、中級ダンジョン一層目はなんかのどかな草原だった。
 なんていうか、こう、ピクニックしたくなるような感じ。

「ここにモンスター出るの?」
「ううん、ゴブリン師匠と手合わせして、認められたらギルドカードに通行証が発行される。失格の烙印押されたら初級からやり直し」
『ぶっぶーなの』
「このシステムが気に入らなきゃ、フリーのダンジョンいけばいいだけだしな」

 管理されてないダンジョンの難易度は不明、アー君らなら調べられるだろうけど、それより自分達が作るほうにはまったのでそれどころではない。
 ただ、雷ちゃんと作った高難易度ダンジョンがあるはずなんだけど、あれはどうなったんだろうか。騎士様があたりが始末したのかな?

 しばらく歩いていたらいい匂いがしてきた。
 なんで?
 ここダンジョンだよね?

「今日はキノコ料理かぁ」

 匂いを辿って行ったら、川とテントが見えてきた。
 冒険者の野営地だろうか?

 テントの近くでは焚火が焚かれ、そこで誰かが鍋を煮込んでいる。

「ししょー」
『おなべー』
「腹減る匂いだよな」
「む」

 アー君の呼びかけに顔を上げたのは白髪のおじいちゃん。
 今あの人を師匠って呼んだよね、どう見ても人間なんだけど、えっ?

「母上、紹介するな。こちら初級ダンジョンで数々の冒険者を打ちのめし、レベルが上がり過ぎたために初級の雑魚から中級の番人に昇格したゴブリン師匠!」
「どう見ても人間なんですけど!」
「中級ダンジョンへの昇格の際、ご子息様達にご加護をいただきました」
「しかも人間の言葉が流暢ですね!」

 どこかの女神様に見習ってほしいぐらい言葉遣いが丁寧!

「師匠、それキノコ鍋?」
『味見していーい?』
「薬草足りてる?」
「こちら差し入れのクッションになります」
「ほっほっほ」

 アー君らに鍋を振る舞うと、マールスからもこもこクッションを受け取り、嬉しそうにテントの中へ持っていった。
 気になって中を覗かせてもらったら、下には絨毯が敷き詰められ、テーブル、机、ベッドやソファまであった。
 
「さてさて、こちらの方達は新顔ですな」
「俺の客人だから今日はスルーで頼む」
『かあしゃまが資金稼ぎ見学したいって言うから、お手本なの』
「げっふ。そろそろ行こうぜ、あまり長居すると師匠がメルヘンになる」

 前科があるだけに涼玉の言葉に反論できない!

 ゴブリン師匠の野営地のすぐ近く、テントから数メートル離れた場所に川を渡る小さな橋があり、その先に下層へ続く道があった。
 野営地に近い理由は、万が一、下層のモンスターが冒険者を追いかけて外に出てきた場合、ここでゴブリン師匠が討伐してくれるんだって。
 優しい。アー君が配置したモンスターとは思えないぐらい優しい。

「もしかしてアー君達は良くここに来てるの?」
「おう、利用者の声を生で聞くのも大事だってアカーシャが言ってたからな!」
『あふたーしゃーびしゅ』
「割高だけどポーションもあるぜ!」
「王都以外で買える貴重な場所、よく売れているようですぞ!!」

 孤児院、不景気知らずだな。
 皆の高笑いが聞こえてきそうだ。
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