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湯水のごとくお金を使おう

第609話

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 美人さん、ちょっとしたことで泣くほど繊細なのに、思い切ったら振り切る人だった。

「あぶー」

 朝目覚めたら生まれてました。 
 葛藤どこいった。

『タイガのご先祖』
「っぶ」
「がぅ!? うが?」

 シャムスが美人さんの顔を覗き込み、何かを呟くとアー君と涼玉が盛大にうろたえた。
 何を言ったのだろうか。

「おーよしよし、美人さんでしゅね~」
「きゃっきゃ」

 色白なのは夢の中と変わらず。
 髪も瞳も綺麗な紫色。
 あと耳がちょっと尖ってる。

 相変わらず僕のDNAが仕事を全くしていません。
 似ているところを無理に探すなら、性別が僕と同じってところだろうか。
 
「きゃーぅー」
「ん? お腹空いたか?」
「んーーー」

 刀雲とちゅっちゅしてご機嫌だったのに、突然体を縮こまらせてしまった。

「ん、んむーー」
『魔力練り練り』
「えっ、待って、この魔力、知ってる気がする」
「にいちゃ知り合い?」
「この覇気、只者ではありますまい!!」

 そうなの!?
 え、メンタル弱そうな美人さん何者?

「ちょっと待ったぁぁ!!」
「あっパパ」

 戸を蹴破る勢いで部屋に入ってきたのは騎士様だった。
 何かすっごい焦ってる。

「今、すっっごい懐かしい気配がしてですね、嘘だろぉぉぉ、待って、すぐ帰って来るからどこにも嫁にいかせないでね!」

 赤ちゃんを見て目を見開いた騎士様、慌ててまたどこかへ駆けて行った。
 転移を使えばいいのに走るとはよほど慌てているようだ。

「タイガも抱いてみるか」
「いや、なぜか畏れおおいような気がする」

 実は刀雲の隣にいたタイガ、胡坐をかいた状態でずっと固まっていました。

「お邪魔しますっ!」
「主殿……突然なに、を……」
「羅刹あれ、あれ、あの、あの子!!」

 何やらパニック状態が続いているらしき騎士様、激しく揺さぶられている魔王様は完全に固まってしまっています。

「ああ、そんな、こんな、ことが」
「ちょっと知り合い集合しすぎだと思ってはいたけど、なんで皆この世界目指しちゃうの!?」

 刀雲の腕の中で唸る赤ちゃんを淡い光が包み、生まれたての末っ子が赤ちゃんから一瞬で少年へと変化した。
 一気に大人にならなかったのはエロフラグを折るためだろうか。

「とうさま」
「……幼少期が、とんだ」

 外見年齢は大体アカーシャと同じぐらいかな、じゃあ学園に通うってことか、一式用意しないと。
 幼児をすっ飛ばした我が子に嘆く刀雲をスルーして、僕はそんな事を考えていた。

 全ては目の前の光景から目を逸らすためです。

 だって、なんか魔王様がうちの末っ子に向かって頭を垂れてるんだもん!
 どういう事!?

 説明を求めたいけど、現実から目を逸らしたい気持ちもあって、僕はどうすればいいだろうか。
 …………子供達と朝風呂にでも入って来ようかな。
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