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祭事

第120話

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 庭氷漬け事件は騎士様のアー君へのプレゼントが原因だったようだ。
 興奮を抑え切れない口調で語ったアー君の言葉を要約すると、騎士様がアー君に贈ったのは『氷龍』と呼ばれ、かつて三大龍として世界を支えていた神龍なのだとか、僕は一体どこに驚いてどんなリアクションをすれば正解なんだろうか。

 僕は聞きたい、どこから連れて来たかを。
 問い詰めたい、プレゼントしてもいいような存在なのかを。

 まぁ騎士様だしなんでもありか、うん。
 でも庭を氷漬けにするのはいただけない、トラちゃんとお嫁さんは無事だったけど、子供達と川魚は全滅、神薙さんが大喜びで完食してくれたけどね。
 今はトラちゃんご子息の骨を乾燥させたものをバリバリ食べてます。

「これおいひいですね」
「うん、もっと食べたい」
『トラちゃんにたくさん子供作ってもらお』
「はいです! ラーシャも食べるです、栄養たっぷり」
「俺は骨より肉がいいなぁ」

 ……バリバリ音が煩くてアー君の声が聞こえにくい。

「アルジュナ、骨は硬くないか」
「平気だ。漢ならばこれぐらい噛み砕けねば」
「アー君こっちに、パパのお膝においで」
「また今度」
「おのれ白熊ぁぁぁ」
「ぱぱ、っめ」
「っぐ」

 デレたアー君の破壊力凄いなぁ。

「で、なんで朝から庭が氷漬けになっていたんですか?」
「新しく手に入れた力って使ってみたいものなんだ」
「……神薙さんがレイアさんやタイガと全力で遊んでもびくともしないし、騎士様の結界がある部屋でやれば良かったんじゃないかな?」
「あっ」

 あ。って、もしかして今気付いた?

『アー君、ごめんねって言うのよ! 小さく首傾げるの忘れちゃだめよ』
「ままごめんね?」

 小首を傾げながらの一言に僕だけでなく、騎士様と白熊さんも撃沈した。
 可愛い、可愛すぎて辛い!

「もぅ、しょうがないなぁ」
「えへ」

 あざとい、でも可愛いから全部許しちゃう!

「氷龍・アスラン、私の古き友。出会った時、私にはゼノスが居て、彼と共に歩む事は出来なかったけれど、生まれ変わりこうして再び出会えた」
「自我ないけどねー」
「父上、なぜこんな事に?」
「氷龍の記憶を弄って使役した人が居てね、長く隷属が続いた結果、魂が擦り切れただけでなく自我も消えちゃったみたいなんだよ。本当は輪廻に戻せれば良かったんだろうけど、魂が弱りすぎてそれも難しくってさぁ」

 輪廻に戻すとか操作できるものだっけ? ああいや、周防さんも何か色々犠牲にして輪廻をどうにかしたんだっけ、騎士様なら朝飯前か。

「胎に直接魂を入れて転生させるのは?」
「耐えられる器を持つ子が……いた」

 こっち見ないでくれます?
 龍なんて産みませんからね?
 
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