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ダンジョン探検

第104話

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 我が家専属寿司職人として活躍するギレンだけど、ドリアンの個体がそろそろ技術を身に着けつつあるんだよね。
 それにはギレンも危機感を覚えつつあるようだ。何せ呼ばれる理由が一つ減っちゃうんだからね。

 だからだろうか、ギレンがやたら綺麗な魔物とは思えない魚をこのタイミングで持ってきた。
 大きめの桶の中で泳ぐシーラカンスに似たその魚は鱗が虹色で、ヒレは淡く光を放っていた。
 なんでも普段は深海にいるけれど、年に一度繁殖シーズンの時だけ強い個体を求めて浅瀬に姿を現すらしい、強い個体の子を産み進化を続ける種族なんだとか。アマゾネスかな?

「シャムス、ギレンが魚持ってきてくれたよ」

 そう言いながらシャムスを抱えたアカーシャが桶の中を覗きこんでいる。
 アルビノの子はギレンに驚いて隠し部屋に逃げ込んでしまった。

『アカーシャ、この子、トラちゃんのお嫁しゃん?』
「ちょうど今が繁殖シーズンでな、脂が乗ってて美味いぞ」
「増やすだけならちょうどいいかな、ギレン、これは神薙さんへの差し入れ?」
『母様、池に放していーい?』
「ちょっと待とうね」

 目をキラキラさせているシャムスが何を要求しているかは分かる。背後の池でトラちゃんが三段ジャンプを決めてアピールしているし。
 でもそうだよね、神薙さんへの奉納品だったら勝手出来ない、アカーシャのひとことがなければそのまま池に放すところだった。
 
「いや、アカーシャへの貢ぎ物だ」

 キリっと言われても内容が内容だから微妙に締まらないけれど、今回に限ってはどうでもいい。

「シャムス、お池に放してもいいって」
「は? アカーシャ?」
『トラちゃん! お嫁さん!』

 こんな風に喜んでいても子孫は片っ端から食べるんだよね。

「ギレン、早く」
「いや、これ生け捕りにするの本当に大変で」
「わっ!」

 納得させるより早くアマゾネスが自ら桶から池に飛び込んだ。
 すげぇや、トビウオもびっくりな跳躍力。

 喜んだのはトラちゃん、ジャンプに加え四回転を決め、アマゾネスの周囲をぐるぐる泳ぎ回っている。
 ……あれ?
 もしかしてあの子に気に入られないと増えない!?

 住処を確認するようにゆっくりとアマちゃんが泳ぎ出した。
 トラちゃん頑張って!
 僕らの食卓は君にかかっている!

『トラちゃん頑張って、今日の夕食お魚なの!』
「今夜はさすがに無理じゃないかなぁ」

 もしかしたら口説くのに時間かかるかもしれないし、トラちゃんに気に入られないと生き残れなかった前のお嫁さんと違い、今回はトラちゃんが気に入られないといけないみたいだしね。
 駄目だったら別の魚持ってきてもらおう。

「ギレンありがとう、お茶入れるよ」
「アカーシャァ」

 でれ~んって感じかな、スパダリも嫁には弱いねー。
 シャムスごとアカーシャを抱き上げるといそいそと茶の間に移動して行った。

 あの調子で甘やかせば舟盛りの一つや二つ作ってくれる事だろう、川魚の焼き立て食べたいなぁ、でも僕一人だと焚火とか危ないか、そうだギレンならあれ持ってないかな、バーベキューコンロ。
 焼き立ての魚にレモンを掛けて食べたい、フライものはもう作ったし、今日はエビフライもあるんだよね、海鮮鍋、海鮮カレー、貝の酒蒸し、うん、魚しかない。
 主食どうしよう、大人組はお酒があればいいけど、子供達にはご飯炊いておけばいいかな、炒飯もいいかなぁ、んーフランスパンも捨てがたい!

 とりあえず全部作っておこう。
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