神様のポイント稼ぎに利用された２

優しい人生を

第42話

　タイガにスプーンを貰って以来、シャムスとアー君の間で大流行している事がある。それは……。

『イネスあーん』
「みー」
『アカーシャあーん』
「はい」

　家族やもふもふズに「あーん」をする事である。
　昨日の夕食の席では刀雲が集中砲火にあい、目元をでろんでろんに溶かしていた。

　お昼が終わればお昼寝タイム。
　神薙さんは基本的にどこでも寝る。
　土だろうが岩だろうが屋根の上だろうが、どこででもだ。
　でもシャムスを筆頭に子供達が卵を温め始めて以来、お昼寝は縁側でしてくれるようになった。

　神薙さんもだいぶ丸くなったなぁ。

『卵しゃんまだかな』
『いつか孵化するだろう、私がこうして産まれたように』
『ご飯いっぱい食べて、いっしょに大きくなるの』
『だいぶあーんの腕も上がった、いつでも大丈夫だ』

　卵を両側から挟み込みお喋りしている二人は可愛い。
　ケモミミっ子と獣人、そしてその周りを護るもっふもふ、尊い。

「良い天気ですー」
「美味しい干し柿できそう」
「夕食は何にしようかなぁ」

　お昼寝タイムが一番平和かもしれない、神薙さんを起こさないようにもふもふズも静かにしているからね。
　ただしうっかり寝ぼけて邪気が駄々洩れになる事があるのが困りもの、とは言っても被害が出そうなのは僕とアカーシャだけで、ポンチョを着て防御しているから実質実害はないんだけど……。
　
　防御力カンストポンチョがきっかけで、この間ちょっとした事件が起こった。
　アカーシャが白兎ポンチョを着ている時にギレンが訪問し、ポンチョ姿に理性が吹っ飛んだギレンがアカーシャをさらいかけた事件があったんだよね。
　シャムスが泣き叫び、アー君がガチギレし、もふもふズが駆け付けた事で未遂に終わったけれど、現在ギレンは神薙さんによって立ち入り禁止を言い渡され、邸どころか神社にすら近付く事が出来なくなっている。

　アカーシャがポンチョを着るのはお昼寝タイムだけ、つまり騒ぎが起きたのは神薙さんがお昼寝中、神様が寝ている時にものを盗むのはヤバい。
　特にアカーシャは僕と一緒に毎日神薙さんのご飯を作ったり、副官さんがいない時に甘やかしたりする役目を担っているので、そのアカーシャを盗むのは本当にまずかった。
　
　悪手だよギレン、せっかく邸の中に入れるまでになったのに……。
　100年以上独身を謳歌していたのだから、アカーシャが成長するまでの十数年ぐらい大人しく待って欲しかった。

　鎮めるためにバケツプリン何個作った事か。
　プリン代請求したいぐらい、むしろ城下で樽プリンを買って来て献上して欲しいよ。

　神薙さんの怒りを間近で見たシャムスが久々にお漏らししちゃったんだよね、せっかく最近漏らさず頑張っていたのに……。
　その一件でシャムスにも恨まれているから、信頼を取り戻すのは今まで以上に時間がかかりそう。

　とりあえず鮮魚は別のルートで手に入れよう。
　子供達のお魚ブームはまだ終わってないからね！