【第2部完結】悪役王女の跡継ぎはバッドエンドですか?

結月てでぃ

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逃亡編

6.悪役令息エドワード

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「王侯貴族が変態ばっかってのはよく分かったよ」
 最悪の気分だと言いながら、白い神官服を脱ぐ。エドワードから隠しカーテンを貸してもらい、シュウを同伴して車両の隅に移動してきたのだ。この服が興奮剤になっているのなら、早々に脱いでしまった方がいい。
 部屋を出る前にトランクに詰めてきた普段着を取り出し、身に着けていく。
「なあ、あの子ってなんで”悪役令息”なんて呼ばれてるんだ」
 シュウは「お前、エンパイア家についてどこまで知ってるんだ」と訊いてきた。それに政治を担ってることと闇属性の魔人を召喚する魔法を持ってることならと返すと、魔法馬鹿と呆れた顔で腕を組まれる。
「代々、貴族・庶民関係なく裁く権利を持っているんだ。王敵や国に対して害悪であれば容赦なく処刑される」
 ただしとシュウが腰を曲げて近づいてくるので、エディスも体を伸ばして寄った。
「アイツの父親は、俺の父さんと繋がっている」
 叫びそうになったエディスの口をシュウの手が塞ぐ。
「だから、今じゃ名ばかりだ。落ちぶれたなんて言う奴らもいる」
 だけどとシュウがエドワードがいる方に顔を向ける。
「息子は、まさにエンパイア公の再来だなんて言われてるんだ。絶対に一筋縄じゃいかない」
 油断するなよと目を鋭く細めて睨むシュウの手を取って、「でも、シルクが信頼してた奴だ」と眉を下げた。首を振って、悪い奴じゃないよと笑うエディスにシュウは頬を緩めて屈託のない笑顔を浮かべる。
「お前も大概お人よしだな」
「そりゃそうだろ。俺たち、運命共同体なんだから」
 似もすると頬を突くと、シュウは顎を上げてぶすくれた顔になった。

 着替え終えたエディスとシュウが出てくると、エドワードに招かれる。いつの間にかコーヒーが人数分真ん中のテーブルに置かれていて、どこにあったんだと面食らった。
 エドワードは意味ありげに笑うだけだし、レウに訊いても「なんか、黒い執事が出てきて置いてった」とわけの分からないことを口にする。
 毒なんて入れてないよというエドワードの話を信じて手にすると、鼻孔を香ばしい匂いがついた。一口飲み、また口にする。飲む度に微妙に味に変化が出た。どこか紅茶のような味わいさえしてくるコーヒーに、エディスは普段飲んでるのとは値段が違うんだろうなと目を閉じる。
「気に入った?」
「うん、これ美味しいな!」
 訊ねてきたエドワードにそう言うと、「でしょう」と嬉し気な顔になった。僕も好きなんだと言うエドワードの隣でレウが「コーヒーなんて苦さと酸っぱさが命だろ」と舌を出す。
「味の深みも分からない奴は置いとくとして、これからどうするの? 北に行くと言っていたけど」
 シルベリアにシュウを預けに行くことしか考えていなかったエディスは悩む。だが、先にレウが「貴方ならどうするんだ」とエドワードに訊いたことで思考が途切れた。顎に当てた手を離して、現状この場で最も家柄がいい彼に視線を向ける。
「そうだね。今はまだ王位継承者の話をする時じゃないだろうし……まずは確かめてみた方がいい」
 そう言い、エディスに向かって手を差し出す。父親と酷似した色合いの目に縫い止められる。
「あなたが自分の根源を調べる気があるのなら、送るから北へ行こう」
 彼に言われる前から北に行く予定だったエディスは相槌を打つ。
「この国の歴史を編纂しているトリドット家に行くといい。僕がギジアに約束を取りつけるから」
「どうしてアンタがそうまでしてくれるんだ」
 シュウが怪しんで言うと、エドワードは小馬鹿にするように笑った。手を上げて、足を組み直す。
「そっちこそ、どうしてブラッド家なのにエディスさんといるのさ」
「友だちだからだ」
 シュウの言葉にエドワードは目を僅かに見開き、「またそれ?」とふっと息を吐き出した。
「それ昔も言ってたよね。王様を突き飛ばして処罰された時に」
「シルベリアのことか?」
 訊ねるとシュウは肘置きから腕を浮かし、「シルベリアから聞いたのか」と意外そうにする。出発前に喧嘩しただろと言うと、シュウはなるほどと口の端を上げた。
「なら決まりだ。俺は北部軍司令棟に。エディスはトリドット家に向かおう」
 シュウは正面にいるエドワードに対して頭を下げ、「悪いが頼んだ」と言う。エディスがそれに倣おうとするとエドワードは手で制して首を振る。
「頼まれるようなことじゃない」
 我が国のことだよと手を組む彼の眼差しに、エディスは(やっぱり悪い奴じゃない)と強く思った。
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