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第4章 焔の中の怪物

第4話 湯けむり大作戦!

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※短めのお話2つを合体させたので今回かなり長めですが、どうぞお楽しみ下さい。



~~side 春風~~

ボクは今、宿の大浴場への道を歩いている。本当は彼と一緒に行きたかったのだが、好みを押し付けるわけにもいかない。別にここが混浴だからというわけではないし、そもそもここは混浴ではない。ただ、普段ああやって一緒に行動している分、何かと一緒に行動することが、自分の中で自然に思えているのだ。

「……あっ、春風さん!やっぱりいた~」

不意に、声をかけられる。反射的にその声の方向に振り向き、その声の主を探る。ボクの名前を知っていてこの声……あっ、見つけた。やっぱり来てたんだ。

「カンナさん!セイスさんも」

「よう、春風さん。珍しいな、1人か?」

「プレア殿はお部屋にいます。なんでも、大浴場はあまり好みではないんだとか……」

「あー、まあ一定数いるし仕方ないですよね……そうだ、私達でよければご一緒しましょうか?」

「良いんですか!?」

それは願ってもない申し入れだ。実はというと、ボクはVRで大浴場に入ったことが一度もない。現実なら、地元の温泉なんて殆ど顔見知りしかいないようなものだし、ボク自身そこそこ顔が売れている方なので、そこで世間話を楽しむのは結構好きだ。

でも、ここでは違う。加えて、空間を共にするのも不特定多数の初対面。性犯罪防止のため、アバターを性転換している人は本来の性別で作り変えない限り大浴場には入れないから、そこには事実上同性しかいないとはいえ。やはり、初対面の人に裸を見られるのは誰であれ恥ずかしいし緊張するのだ。いくらそれがフィルター越しとは言っても。

「是非、お願いします」

「はーい、じゃあチェックインするから少し待ってて下さいね」

そう言って、2人はカウンターに向かって行った。ボクはそこから見えやすい位置のソファに腰かける。元々入口まででもプレア殿に付き添ってもらいたかったのだが、まさか同性のカンナさんが来てくれるとは。ごめんね、プレア殿。今回ばかりはキミの負けだよ。

因みに、このゲームは全年齢対象なので、プレイヤーの年齢に合わせてフィルターが入る。ボクは17歳なので謎の光だ。因みに15歳以下は謎の光の拡大。12歳未満はそもそも肌着だ。16歳以上なら、厳重な手続きの下、互いの了承を得ることで一時的にフィルターを解除できるらしい。

昔はこういうのは18禁と言われ、18歳以上である必要があった。しかし、昨今のVRゲームの普及と共に、所謂いかがわしい描写を間近で見る機会が増えたことで、お酒や選挙権といった他の成人向けコンテンツは変わらない中、性描写だけは解禁が全体的に早まったのだ。進行中の少子高齢化対策の一環ではないか、なんて噂も広まっている。

「お待たせしました!早速行きましょうか?」

そんなことを考えているうちに、カンナさんが戻ってきた。セイスさんは先に行っている。聞くと彼は長風呂派らしい。

~~side プレアデス~~

そろそろカンナさん達が到着した頃だろう。実は、2人がわざわざ僕達の泊まる宿に来たのは僕が呼んだからだ。2人にはそのことは黙ってもらっている。まあ、流石に僕達だけ先に楽しむなんて忍びないからね。それに、こっちの紅焔石のある環境の方が何かと研究はしやすいだろうし。

セイスさんは長風呂派らしいし、流石に彼らを置いて戻ってくる、なんてことはしないだろう。これで時間は十分に稼がれた。協力してくれる彼らのためにも、ここで必ず完成させる。気合いを入れ直して、僕は誰にも公表していない、作りかけの作品を取り出した。

~~side 春風~~

「うう……やっぱり緊張します……」

「大丈夫ですよ。誰も私達のことは見ていませんよ」

「そ、そうは言ってもですね……」

所変わって、ボクたちは今大浴場の中。大通りに面した宿を選ばなかったおかげか、利用客はまばらな様子だった。しかし、それでもだ。この中の誰かがボクのことを見ているような気がして、どうも緊張してしまう。自意識過剰と言われればそれまでだが。

因みに、ここでの身体は現実よりも綺麗だ。アバターで美化されているんだから当たり前なんだけど、基本的に首から下に毛は生えていないし、手足も少し細くなって全体的にスラッとしたスタイルだ。一糸纏わぬ姿で最初目の前に歩いてきたカンナさんを見て、不覚にも少しだけドキッとした。

扉をガラリと開ける。真っ白な湯気と共に、ムワッとした銭湯特有の湿った空気がボクたちを包み込む。あぁ、良いなぁ。温泉に来たって感じ。

「行きましょうか、春風さん?」

「はいっ」

カンナさんが先行し、ボクの方を振り返ってニコリと笑顔。やっぱり、カンナさんって面倒見の良いお姉さんみたいな人だ。お母さんとは少し違う、でも母性のような何か、不思議な雰囲気を持った人。

ボクはずっと昔、お母さんに連れられて初めて銭湯に行った時のことを思い出しながら、ハンドタオルで身体の前面を隠し、濡れた石畳の上を滑らないように歩いて行く。自然と、さっきまでの緊張は和らいでいた。

………

「ふぅ、あったまりますねぇ……」

ハンドタオルを頭の上に乗せたカンナさんが、浴槽の縁に背中をもたれながら言葉を溢す。ボクはその横で壁に背中を付けて、そうですねぇ……なんて気の抜けた返事をする。流石に、あんな胸を突き出すような姿勢は出来ない。……というか、今更だけどこう隣で改めて見ると。

(で、デカい……)

服の上からでも何となく予想は付いていたが。こう目の前で見せつけられるとそう感じざるをえない。Fはありそう。アバターで胸を盛っているのかも、と考えたが、多分違う。

ゲーム内のアバターの体型は基本的にリアル準拠だ。勿論、ある程度変えられたり、中には完全に現実と独立して操作できるものもあるが、確かこのゲームは前者だったはず。その場合、特に身長や体重、そして女の子の場合胸の大きさは、過度に変えすぎると操作に支障をきたす。バランス感覚に脳が慣れず、何もない所で転けたり。

つ、つまりこのサイズは殆どリアルのまま……ってことか。

「はぁ……」

「どうしたんですか?春風さん」

のどかな雰囲気でゆるりと振り向くカンナさん。全く、そんなほんわかした雰囲気で胸の話なんか出来るわけないじゃないか。

「い、いえ、何でもないです……」

そう言いながら少しだけ背を向け、自分の胸を見る。うーん、別に無いわけじゃないんだけど。剣道って胴を着ける時に邪魔でサラシを巻くから凄く窮屈で、こうやって大きい人を見ると少し羨ましいというか、自由って良いなぁなんて思ったりする。

………

「ふぅ、気持ち良かった~」

「ええ、研究疲れが癒されました」

あれから30分。サウナや水風呂、また大浴槽を点々として、漸く浴場を出た。宿ならではの分厚いバスタオルで身体を拭き、服を装備した。そういえばこのメイド服もずっと使ってるなあ。プレア殿もボクもデザインが気に入っているから使っているけど。

「改めて見ると恥ずかしい格好ですよね、これ……」

「まあ確かに、スカートはそこまで短すぎるわけじゃないですけど、胸の辺りとか……」

うんうん、やっぱカンナさんもそう思うよね?だってこの服、ベルトみたいなものでピタッと締まっていて、そのせいでフィット感は抜群なんだけど胸元が強調される。ボクですらこれなんだから、カンナさんがこれを着たら大変なことに……って、なんかさっきから胸の話ばっかりだな、ボク。

それから10分、髪を乾かしたり、牛乳のような飲み物を腰に手を当てて飲んだりしているうちに、セイスさんも降りてきたので、お互いの部屋番号を教え合ってお開きになった。結構近い部屋だったので、簡単に遊びに行けるな。行くかどうかは別として。

「ただいまー」

「お帰り、ハル。お風呂はどうだった?」

「すごい気持ち良かったよ~。プレア殿も行けばよかったのに」

「うーん、そうね……」

ん、なんか歯切れが悪いな。どうしたんだろ?

~~side プレアデス~~

ま、マズイ……これどうやって切り出そう?普通に渡しちゃって良いのかな?でもなぁ、うーんちょっと恥ずかしい。

「プレア殿?大丈夫?」

ああ、ハルが心配そうにこっちを見つめてくるよ。僕は彼女の目をチラリと見る。少し怪訝そう。うん、これ以上余計な心配させるわけにもいかないよね。勇気を出してカミングアウトしよう。

「ハル、その……渡したいものがあるの」

「渡したいもの?ボクに?」

「うん……えっと、向こうなんだけど」

しどろもどろになりながらも、僕はハルを居間から寝室に誘導した。2つあるベッドの片方……ハルの寝る方の上に、それは置いてある。梱包する時間はなかった。

「え、これってもしかして……」

ハルの顔色が怪訝から驚愕に、喜びに変わっていくのが見てとれた。うん、サプライズにした甲斐があった。僕は何より彼女の、その顔が見たかったんだ。

「今まで待たせててごめん。ハルには黙ってたけど、ほんとは前から……服を買った時から作り続けてたんだ。結構拘ったから、完成に時間かかっちゃったけど」

「……ううん。嬉しいよ、とっても嬉しい!」

ハルの目に光が揺れた。そして一滴、伝って落ちて行く。満面の笑顔で隆起した丘の上を。早速着替えるね、と手に取り、装備を交換していく。次の瞬間、目の前にいたのは、こちらを嬉しそうに見つめる侍だった。喜んでもらえて良かった。湯けむり大作戦、無事に成功だ。

「どうかな?」

「うん、とっても似合ってるよ!カッコよくて可愛い!」

「かわ……っ!?」

「あ……」

しまった。率直な感想を言ったつもりが、僕はなんて恥ずかしいことを。ハルも、そう言われて驚いたのか上ずった声を上げると、頬を真っ赤に染め、振袖で口を隠して静止している。

「「…………」」

さっきのハイテンションとは反面、互いの心音が聞こえそうなほど静かな、気まずい沈黙が僕達の間を流れる。こりゃあ、ネタバラシとかどっきり大成功とか言える空気じゃないな。一旦この場を離れよう。うん、それが良い。

「じゃ、じゃあ僕もお風呂入って来るから!今度一緒に温泉巡り行こっ。じゃあ!」

ハルを誘導した時以上に言葉を詰まらせながら何とか言い終わるや否や、そそくさと寝室から脱出した。恥ずかしい。今はちょっとハルの顔まともに見れないや。

~~side 春風~~

「……行っちゃった」

プレア殿は顔を真っ赤にしながら、さっさと部屋のお風呂に入りに行ってしまった。未だ心臓の刻む一定のリズムが治らない中、ボクは1人、新しい装備を眺めるために鏡の前に立つ。さっきはよく見てなかったけど、これ、至る所に刺繍や装飾が施されているんだ。ただの和服なんかじゃない。生地は軽いけれど、もはや着物だ。

さっき「拘って作った」と言っていたけれど、むしろこんな凄い作品をこれだけの、ボクがいない時間だけで……。一体彼は、どれほどの労力を費やしたんだろう。考えるだけで、また視界が霞んで来る。でも、それよりも。

「えへへ、プレア殿……」

ポフッとベッドに身を落とし、袖で顔を覆いながら呟く。2、3回寝返りをうち、うつ伏せになって足をパタパタさせる。嬉しい。彼がここまでして用意してくれたことが。そしてそれ以上に、ボクのことを……可愛いって言ってくれたことが。



春風 Lv.28
種族:獣人(狐)/職業:侍Lv.10
HP:200
MP:0(+660)
STR:120(+10)
VIT:20
AGI:100(+80)
INT:0(+220)
RES:5
DEX:10
LUK:10

SP:0

頭…妖狐の髪飾り
胸…桜吹雪の振袖
右手…大地の精霊刀アルバノ=ガイア
左手…妖機刀:小春
脚…朧月夜の袴
足…燐火のブーツ
特殊…蒼穹のタリスマン
特殊…刀剣ホルスター

所持金:7900G

満腹度:50%

装備効果:《幻惑》付与(低) 抜刀強化(100%) 限定確定会心 付加エンチャント(大地) 夜間行動補正(中) 跳躍距離上昇 HP回復(5/秒) MP回復(1/秒) 刀装備枠拡張

称号:《勝負師》《卓越した剣技》《バークウルフの天敵》《居合術の使い手》《狂戦士の目覚め》《読書好き》《届かぬ攻撃》《筋トレ好き》《サディスト》《電光石火の使い手》《飽くなき挑戦》

スキルセット(12/12)(装備中)
【レイジ】【燕返し】【付加エンチャント:地縛アースバインド】【カウンター】【狂乱化バーサーク】【電光石火Ⅱ】【付加エンチャント:岩雪崩】【螺旋衝】【瞑想】【脳天斬り】【血の渇き】【桜花爛漫】

チェインスキル:【閃刀:刹那】
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