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第九部・贖罪 編
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「カスミ、あーんしてあげる」
料理がテーブルに並び、アロイスが縦に丸めたピザを香澄の口元に運んだ。
恋人らしい事をしないと、と思い、香澄は懸命に口を開ける。
「あ、あー……ん」
横顔に佑の突き刺さるような視線を感じつつ、香澄は口の中に入れられたピザを噛みちぎった。
モクモクと口を動かしアロイスに向かって親指を立ててみせると、彼が嬉しそうに笑う。
「カスミ、じゃあ俺にもあーんして?」
「む?」
「アロ、ずるい!」
左側にいるクラウスが香澄の肩に手をやるが、まずはアロイスの相手だ。
一度お手拭きで手を拭い、アロイスが好きだと言っていたマルゲリータを同じように縦に丸め、彼の口元に運ぶ。
「あ、あーん」
アロイスに向かって「あーん」を言うと、彼が香澄の両手を握ってピザにかぶりついた。
「わっ、と」
驚いて体を引こうとすると、アロイスの唇が香澄の指にまで這う。
「アロ!」
あわや指を舐められそうになったところで佑の鋭い声が飛び、アロイスがぶーたれた顔をして香澄の手を離した。
隣のテーブルの女性四人が、こちらをチラチラ見ているのが恥ずかしくて堪らない。
「いいなー」という声が聞こえるが、こちらとしてはただただ恥ずかしくて拷問のようなのだ。
「ねぇ、カスミ。アロにばっかりずるい」
トントンと肩を叩かれ、香澄は「はぁい」と振り向く。
「僕は和風チキンのやつがいい」
「はい、分かりました」
なんだかヒナに餌をやる親鳥のような気持ちになり、香澄は苦笑しつつクラウスの口元にピザを運んだ。
「はい、あーん」
「あーん」
クラウスは腕を伸ばし、香澄を抱き寄せようとする。
香澄も片手でピザを持ち、片手をその下に添えているので塞ぎようがない。
「こら! クラ」
だがやはり佑に叱られ、その手がしぶしぶと下がってゆく。
そんな様子を見て、隣のテーブルからかしましい声が聞こえてきた。
「そこのイケメン双子さん。私たちで良かったら、あーんしますよ?」
「こっちのテーブル来ませんかぁ?」
女性たちは綺麗系と可愛い系が交じり、四人そろって歩いたらそこらの男性は見とれてしまうだろうレベルだ。
「御劔社長ですよね? いつもテレビや雑誌見てます。もし良かったらテーブルくっつけて合コンしません?」
重たそうなテーブルをくっつけるという力技を口にしてでも、彼女たちは何が何でも混じりたがっている。
(あー……)
「なるほど、こうなるな」と思いつつ、香澄はここが双子の反応の見所だと思った。
合コンと言われてホイホイ釣られるようなら、まだまだ教育が必要だ。
拗ねてみせる事もなく様子を見守っていると、アロイスがニコッと笑ってひらりと手を振った。
「機会があったらまたねー」
「僕ら、今この子とデートしてるから」
(合格っ)
香澄は心の中で親指をビシッと立て、深く頷いた。
女性たちからの視線が少し痛いが、世の女の子は彼氏によそ見などしてほしくないのである。
「なんだー」という声を申し訳なく聞きつつ、香澄は心を鬼にして可愛くない女を演じる。
「嬉しかったんじゃないんですか?」
ツンとして言う香澄を、隣のテーブルから女性たちが目を剥いて見ていた。
内心「あああ……」と悶えつつ、香澄はさらにツンツンする。
「なんだったら隣に行ってもいいんですよ?」
「カスミとデートしてるって言っただろ? よそ見はしないよ?」
「妬いてんの? かわいーい」
左右からよしよしと撫でられ、香澄は穴があったら入りたいほど赤面していた。
料理がテーブルに並び、アロイスが縦に丸めたピザを香澄の口元に運んだ。
恋人らしい事をしないと、と思い、香澄は懸命に口を開ける。
「あ、あー……ん」
横顔に佑の突き刺さるような視線を感じつつ、香澄は口の中に入れられたピザを噛みちぎった。
モクモクと口を動かしアロイスに向かって親指を立ててみせると、彼が嬉しそうに笑う。
「カスミ、じゃあ俺にもあーんして?」
「む?」
「アロ、ずるい!」
左側にいるクラウスが香澄の肩に手をやるが、まずはアロイスの相手だ。
一度お手拭きで手を拭い、アロイスが好きだと言っていたマルゲリータを同じように縦に丸め、彼の口元に運ぶ。
「あ、あーん」
アロイスに向かって「あーん」を言うと、彼が香澄の両手を握ってピザにかぶりついた。
「わっ、と」
驚いて体を引こうとすると、アロイスの唇が香澄の指にまで這う。
「アロ!」
あわや指を舐められそうになったところで佑の鋭い声が飛び、アロイスがぶーたれた顔をして香澄の手を離した。
隣のテーブルの女性四人が、こちらをチラチラ見ているのが恥ずかしくて堪らない。
「いいなー」という声が聞こえるが、こちらとしてはただただ恥ずかしくて拷問のようなのだ。
「ねぇ、カスミ。アロにばっかりずるい」
トントンと肩を叩かれ、香澄は「はぁい」と振り向く。
「僕は和風チキンのやつがいい」
「はい、分かりました」
なんだかヒナに餌をやる親鳥のような気持ちになり、香澄は苦笑しつつクラウスの口元にピザを運んだ。
「はい、あーん」
「あーん」
クラウスは腕を伸ばし、香澄を抱き寄せようとする。
香澄も片手でピザを持ち、片手をその下に添えているので塞ぎようがない。
「こら! クラ」
だがやはり佑に叱られ、その手がしぶしぶと下がってゆく。
そんな様子を見て、隣のテーブルからかしましい声が聞こえてきた。
「そこのイケメン双子さん。私たちで良かったら、あーんしますよ?」
「こっちのテーブル来ませんかぁ?」
女性たちは綺麗系と可愛い系が交じり、四人そろって歩いたらそこらの男性は見とれてしまうだろうレベルだ。
「御劔社長ですよね? いつもテレビや雑誌見てます。もし良かったらテーブルくっつけて合コンしません?」
重たそうなテーブルをくっつけるという力技を口にしてでも、彼女たちは何が何でも混じりたがっている。
(あー……)
「なるほど、こうなるな」と思いつつ、香澄はここが双子の反応の見所だと思った。
合コンと言われてホイホイ釣られるようなら、まだまだ教育が必要だ。
拗ねてみせる事もなく様子を見守っていると、アロイスがニコッと笑ってひらりと手を振った。
「機会があったらまたねー」
「僕ら、今この子とデートしてるから」
(合格っ)
香澄は心の中で親指をビシッと立て、深く頷いた。
女性たちからの視線が少し痛いが、世の女の子は彼氏によそ見などしてほしくないのである。
「なんだー」という声を申し訳なく聞きつつ、香澄は心を鬼にして可愛くない女を演じる。
「嬉しかったんじゃないんですか?」
ツンとして言う香澄を、隣のテーブルから女性たちが目を剥いて見ていた。
内心「あああ……」と悶えつつ、香澄はさらにツンツンする。
「なんだったら隣に行ってもいいんですよ?」
「カスミとデートしてるって言っただろ? よそ見はしないよ?」
「妬いてんの? かわいーい」
左右からよしよしと撫でられ、香澄は穴があったら入りたいほど赤面していた。
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