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親友の恋 編
特別扱い
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「もう……、無理……。……何なの……、この人……」
心臓はドキドキバクバクしていて、爆発寸前だ。
三日月さんは、とうとうしゃがみ込んでしまった私を見て、楽しそうに微笑んでいる。
私は嵌められてしまった指輪を見て、彼を見上げ、「くぅ……」と歯噛みする。
「……女ったらしって言われるでしょう」
悔し紛れに言うと、彼は眉を上げて笑った。
「おや、心外だな。こんなに気を遣うのは恵ちゃんが初めてだけど」
「嘘だぁ……」
胡散臭そうな顔をすると、三日月さんも私の傍らにしゃがむ。
「さっきも言ったけど、子供の頃から悪い言い方をすれば〝よりどりみどり〟だった。苦労せず学校で一番美人と言われる女子生徒と付き合えたし、社会人になったあともステータスの高い女性から真剣に交際を申し込まれた。……だから、『嫌な奴』『女たらし』って思われるだろうけど、自分から女性にアプローチした事ってほぼないんだ」
私は「まぁ、そうだろうな」と思いながら、可愛らしい指輪に視線を落とす。
キャラ物なんて恥ずかしくて身につけられず、服だっていつも飾り気のないベーシックな物ばかり選んでいた。
最近になってアクセサリーを着けるようになったけど、女性らしいデザインの物は照れくさくて避けている。
朱里は美人で可愛くて、彼女がお洒落な格好をするのを見るのは大好きで、「もっと可愛くて美しい姿を見せてほしい」と強く願っていた。
でも私は〝普通〟だ。
子供の頃はスカートを穿いたら兄貴に笑われて嫌な想いをしたし、制服以外スカートを穿いていない。フリルやレースなんて論外だ。
下着はボーイレッグのショーツや、余計な装飾のないシームレスなデザインの物を愛用している。
周りの友達も私について「そういう人だ」と思っているから、余計な世話を焼こうとしないし、茶々も入れない。
今回のランドでラビティーのカチューシャは被ったけれど、朱里と一緒にランドに来られるのが嬉しく、ここにいる間だけ羽目を外すなら……と思っているだけだ。
実に快適に、シンプルライフを過ごしてきた私に、キャラ物の指輪を贈ってきた男性は三日月さんが初めてだ。
(……でも、嫌じゃない自分がいる)
昼食はセントラルバザールにある店で食べ、そのあと少しショッピングをした。
私は朱里と一緒だったけれど、思えばあのとき三日月さんはフラッと一人行動していたかもしれない。
(あの時に買ったのかな)
ランドでの指輪なら、もっとキャラがでかでかと付いた物があってもおかしくない。
私のファッションの傾向を見て、目立たない物を買ってくれた気遣いには感謝したい。
「……指輪を贈ったのも初めて?」
ジトリとした目で見て尋ねると、三日月さんは「勿論!」と頷く。
「言い方は悪いけど、指輪ってアクセサリーの中でも一番勘違いしやすいアイテムじゃないか。今までねだられてアクセサリーを贈った事はあったけど、指輪だけは避けてた。……でも、恵ちゃんなら、逆に指輪ぐらいの物を贈らないと真剣さが伝わらないと思ったんだ」
「そ……っ」
――それって特別扱いじゃないの!?
さっきから何度も言われているのに、三日月さんが何か言うたびに頭の中がフワフワする。
「とりあえず、今はそろそろレストランに行こうか。尊がもたせてくれてると思うけど、遅れすぎてもスタッフさんに悪いし」
「そっ、そうだ!」
スクッと立ちあがると、三日月さんが「元気いいね」と笑う。
彼は立ちあがると、私に向けて手を差し伸べる。
「え?」
もしかして……。
目を見開いて棒立ちになってると、三日月さんは「行くよ」と言って手を握ってきた。
――うわああああああ……!
私は真っ赤になってぎこちなく歩き、エレベーターホールに向かう。
エレベーターに乗っても、一階についても離してくれず、このままじゃ朱里に見られてしまう。
歩いていると人々の視線を感じ、自分と彼が釣り合っていない事を自覚する。
レストランの特徴的な赤い店構えが見えた頃、私はおずおずと言った。
「み、三日月さん……」
「涼」
「はい?」
「涼って呼んで」
心臓はドキドキバクバクしていて、爆発寸前だ。
三日月さんは、とうとうしゃがみ込んでしまった私を見て、楽しそうに微笑んでいる。
私は嵌められてしまった指輪を見て、彼を見上げ、「くぅ……」と歯噛みする。
「……女ったらしって言われるでしょう」
悔し紛れに言うと、彼は眉を上げて笑った。
「おや、心外だな。こんなに気を遣うのは恵ちゃんが初めてだけど」
「嘘だぁ……」
胡散臭そうな顔をすると、三日月さんも私の傍らにしゃがむ。
「さっきも言ったけど、子供の頃から悪い言い方をすれば〝よりどりみどり〟だった。苦労せず学校で一番美人と言われる女子生徒と付き合えたし、社会人になったあともステータスの高い女性から真剣に交際を申し込まれた。……だから、『嫌な奴』『女たらし』って思われるだろうけど、自分から女性にアプローチした事ってほぼないんだ」
私は「まぁ、そうだろうな」と思いながら、可愛らしい指輪に視線を落とす。
キャラ物なんて恥ずかしくて身につけられず、服だっていつも飾り気のないベーシックな物ばかり選んでいた。
最近になってアクセサリーを着けるようになったけど、女性らしいデザインの物は照れくさくて避けている。
朱里は美人で可愛くて、彼女がお洒落な格好をするのを見るのは大好きで、「もっと可愛くて美しい姿を見せてほしい」と強く願っていた。
でも私は〝普通〟だ。
子供の頃はスカートを穿いたら兄貴に笑われて嫌な想いをしたし、制服以外スカートを穿いていない。フリルやレースなんて論外だ。
下着はボーイレッグのショーツや、余計な装飾のないシームレスなデザインの物を愛用している。
周りの友達も私について「そういう人だ」と思っているから、余計な世話を焼こうとしないし、茶々も入れない。
今回のランドでラビティーのカチューシャは被ったけれど、朱里と一緒にランドに来られるのが嬉しく、ここにいる間だけ羽目を外すなら……と思っているだけだ。
実に快適に、シンプルライフを過ごしてきた私に、キャラ物の指輪を贈ってきた男性は三日月さんが初めてだ。
(……でも、嫌じゃない自分がいる)
昼食はセントラルバザールにある店で食べ、そのあと少しショッピングをした。
私は朱里と一緒だったけれど、思えばあのとき三日月さんはフラッと一人行動していたかもしれない。
(あの時に買ったのかな)
ランドでの指輪なら、もっとキャラがでかでかと付いた物があってもおかしくない。
私のファッションの傾向を見て、目立たない物を買ってくれた気遣いには感謝したい。
「……指輪を贈ったのも初めて?」
ジトリとした目で見て尋ねると、三日月さんは「勿論!」と頷く。
「言い方は悪いけど、指輪ってアクセサリーの中でも一番勘違いしやすいアイテムじゃないか。今までねだられてアクセサリーを贈った事はあったけど、指輪だけは避けてた。……でも、恵ちゃんなら、逆に指輪ぐらいの物を贈らないと真剣さが伝わらないと思ったんだ」
「そ……っ」
――それって特別扱いじゃないの!?
さっきから何度も言われているのに、三日月さんが何か言うたびに頭の中がフワフワする。
「とりあえず、今はそろそろレストランに行こうか。尊がもたせてくれてると思うけど、遅れすぎてもスタッフさんに悪いし」
「そっ、そうだ!」
スクッと立ちあがると、三日月さんが「元気いいね」と笑う。
彼は立ちあがると、私に向けて手を差し伸べる。
「え?」
もしかして……。
目を見開いて棒立ちになってると、三日月さんは「行くよ」と言って手を握ってきた。
――うわああああああ……!
私は真っ赤になってぎこちなく歩き、エレベーターホールに向かう。
エレベーターに乗っても、一階についても離してくれず、このままじゃ朱里に見られてしまう。
歩いていると人々の視線を感じ、自分と彼が釣り合っていない事を自覚する。
レストランの特徴的な赤い店構えが見えた頃、私はおずおずと言った。
「み、三日月さん……」
「涼」
「はい?」
「涼って呼んで」
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